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お義父さんの部屋は2階にある。寝室と書斎の二部屋だ。書斎の方に祭壇がある。先月までは寝室の方にあったが移動させた。俺達が来やすいようにしたと言っていた。寝室でもいいのにと、俺は思っている。移動させる前には引っ越しが大変だったと思う。色々と整理する物があっただろう。黒崎もそのままで良いと言っていた。
コンコン。書斎をノックすると、寝室の方から返事が返ってきた。お義父さんがそっちにいるようだ。もう起きているのに珍しいことだ。
「お義父さん。そっちにいるんだね。仏壇に手を合わせたいんだ」
「ああ。そうか。おまたせ」
「お義父さん、寝ていたの?」
「いや……」
お義父さんが寝室から出てきた。いつもよりもリラックスした格好をしている。朝の5時に起きて23時に寝る生活リズムは崩れていない。まるで時計の針のように正確だ。だから、寝ているなんて事は無い。しかし、なぜかそう見えた。そこで、お義父さんがすごく年を取ったのだという気になり、悲しくなった。
「お義父さん!」
「夏樹。どうしたんだ?そんな顔をして……」
「うっうっ。すごく年を取ったんだね。そんなことを思ったんだ~」
「ははは。たしかに私は年を取っている。今年で85歳だ。眠くもなる。この格好のことを言っているんだろう。遠藤さんから勧められて買ったパジャマだ。買ったことを忘れていた。疲労回復するパジャマだということだ。本当にそうなるか、これを着てみて、さっき寝転がっていた。ほんの30分だ」
「一晩寝ないと効果が分からないんじゃない?」
「そうだね。でも、もしかしたら分かるかも知れないと思った。ははは。まだ分からなかった。着替えるよ」
「お義父さん。ゆっくりしていたらいいよ。今日は何も用事がないんだろ?」
「ないことはないよ。遠藤さんの家に行く用事がある。お前の歌も聴かないといけない。マザーのレコーディング音源だ。ははは」
「それ、聴かないって約束だったじゃん~」
その音源は遠藤さんからお義父さんに手渡された物だ。俺は下手くそに歌っているのが面白いからと回された。それを黒崎も知っているから、興味を持っている。俺としてはお蔵入りにして貰いたい。
「お義父さん!内緒にしていてよ~」
「ははは。私は聴いてみたい。そんなに下手くそじゃないだろう。お前はプロの歌手だ」
「そこを強調して言わないでよ~。あ、ユーリーまでなんだよ~。聴きたがるなよ~」
「いや、僕も聴いてみたい」
ユーリーまで言いだしたから、収拾が付かなくなった。俺としてはもう過去のことであり、忘れた気になりたかった。それなのに、そうさせてくれない人達がいる。しかし、黒崎だけは俺に同情して、興味はあるが聴きたいなんて言わない。ピアノの練習を積んでいったときに俺と同じ事があり、すごく恥ずかしかった思い出があるそうだ。なんて優しいのだろう。
「うっうっ。黒崎さんだけだよ~。そっと触れないようにしてくれる人なんて……」
「気持ちが分かる。でも、二人には悪気は無いんだぞ?」
「ううん。すごく悪気があるよ。意地悪そうに見ているもん!」
そう言い切って、俺はお義父さんとユーリーのことを見た。今も笑っている。なんて人達だ。そう思って黙っていると、アンが書斎の方に行こうとした。そうだった。祭壇に手を合わせるつもりでここに来たのだと思い出した。
「そうだ。そうだよ。拓海さんの十字架を見たいんだった。仏壇にも手を合わせたいんだ」
「ははは。逃げられてしまった。分かったよ。音源は聴かないことにする。上手に歌えたものだけを聴かせてくれ」
「うん!」
お義父さんがからかうのをやめてくれたから、ホッとした。あれは本当に恥ずかしくて、誰にも聴かれたくない。なんだか拓海さんも笑っているような気がした。その証拠に、黒崎がとてもリラックスした表情をしている。先月、拓海さんの祭壇の前に立った後の夜、黒崎は悪夢にうなされていた。朝だって調子が悪そうだった。しかし、祭壇には手を合わせ続けたいと言っていた。
「黒崎さん。ユーリー。入ろうよ。お義父さん。入るからね」
「ああ、私は寝室に居る」
「うん」
そう返事をして、俺達は書斎の中に入った。本の匂いがしている。この間と同じ匂いだと思って安心した。何も変わらない日常だからだ。
コンコン。書斎をノックすると、寝室の方から返事が返ってきた。お義父さんがそっちにいるようだ。もう起きているのに珍しいことだ。
「お義父さん。そっちにいるんだね。仏壇に手を合わせたいんだ」
「ああ。そうか。おまたせ」
「お義父さん、寝ていたの?」
「いや……」
お義父さんが寝室から出てきた。いつもよりもリラックスした格好をしている。朝の5時に起きて23時に寝る生活リズムは崩れていない。まるで時計の針のように正確だ。だから、寝ているなんて事は無い。しかし、なぜかそう見えた。そこで、お義父さんがすごく年を取ったのだという気になり、悲しくなった。
「お義父さん!」
「夏樹。どうしたんだ?そんな顔をして……」
「うっうっ。すごく年を取ったんだね。そんなことを思ったんだ~」
「ははは。たしかに私は年を取っている。今年で85歳だ。眠くもなる。この格好のことを言っているんだろう。遠藤さんから勧められて買ったパジャマだ。買ったことを忘れていた。疲労回復するパジャマだということだ。本当にそうなるか、これを着てみて、さっき寝転がっていた。ほんの30分だ」
「一晩寝ないと効果が分からないんじゃない?」
「そうだね。でも、もしかしたら分かるかも知れないと思った。ははは。まだ分からなかった。着替えるよ」
「お義父さん。ゆっくりしていたらいいよ。今日は何も用事がないんだろ?」
「ないことはないよ。遠藤さんの家に行く用事がある。お前の歌も聴かないといけない。マザーのレコーディング音源だ。ははは」
「それ、聴かないって約束だったじゃん~」
その音源は遠藤さんからお義父さんに手渡された物だ。俺は下手くそに歌っているのが面白いからと回された。それを黒崎も知っているから、興味を持っている。俺としてはお蔵入りにして貰いたい。
「お義父さん!内緒にしていてよ~」
「ははは。私は聴いてみたい。そんなに下手くそじゃないだろう。お前はプロの歌手だ」
「そこを強調して言わないでよ~。あ、ユーリーまでなんだよ~。聴きたがるなよ~」
「いや、僕も聴いてみたい」
ユーリーまで言いだしたから、収拾が付かなくなった。俺としてはもう過去のことであり、忘れた気になりたかった。それなのに、そうさせてくれない人達がいる。しかし、黒崎だけは俺に同情して、興味はあるが聴きたいなんて言わない。ピアノの練習を積んでいったときに俺と同じ事があり、すごく恥ずかしかった思い出があるそうだ。なんて優しいのだろう。
「うっうっ。黒崎さんだけだよ~。そっと触れないようにしてくれる人なんて……」
「気持ちが分かる。でも、二人には悪気は無いんだぞ?」
「ううん。すごく悪気があるよ。意地悪そうに見ているもん!」
そう言い切って、俺はお義父さんとユーリーのことを見た。今も笑っている。なんて人達だ。そう思って黙っていると、アンが書斎の方に行こうとした。そうだった。祭壇に手を合わせるつもりでここに来たのだと思い出した。
「そうだ。そうだよ。拓海さんの十字架を見たいんだった。仏壇にも手を合わせたいんだ」
「ははは。逃げられてしまった。分かったよ。音源は聴かないことにする。上手に歌えたものだけを聴かせてくれ」
「うん!」
お義父さんがからかうのをやめてくれたから、ホッとした。あれは本当に恥ずかしくて、誰にも聴かれたくない。なんだか拓海さんも笑っているような気がした。その証拠に、黒崎がとてもリラックスした表情をしている。先月、拓海さんの祭壇の前に立った後の夜、黒崎は悪夢にうなされていた。朝だって調子が悪そうだった。しかし、祭壇には手を合わせ続けたいと言っていた。
「黒崎さん。ユーリー。入ろうよ。お義父さん。入るからね」
「ああ、私は寝室に居る」
「うん」
そう返事をして、俺達は書斎の中に入った。本の匂いがしている。この間と同じ匂いだと思って安心した。何も変わらない日常だからだ。
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