青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

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18-1 晴海の引っ越し

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 5月22日、土曜日。午前6時半。

 朝ご飯を食べているところだ。今日は晴海さんの引っ越しの手伝いに行くから、いつもより多めにご飯を食べている。黒崎は朝からステーキだ。昨夜は会食だった。しっかり食べてきたかと思えばそうではなく、軽めの食事だったそうだ。お酒も控えめに飲んだ。そこで、今朝はがっつり食べたいということで、冷凍のお肉を取り出して焼いた。今までなら冷凍なんてといって食べなかった黒崎だが、去年からそうでもなくなっている。冷凍技術の進化もあると思う。

 このお肉は貰った物だ。IKUに送られてきたディスレクトサイドゼロのメンバーへのプレゼントだった。送り主は衣装提供のプラセルからだった。デビューおめでとうという意味と、これからもよろしくという意味だった。会食の席も用意されていた。その席で美味しいお肉の話題が出て、各メンバーに送ってくれたというわけだ。

「黒崎さん。そのお肉、美味しい?」
「ああ、美味い。解凍の仕方も良かったんだろう」
「放っておくだけでいいんだよ。後はジューって焼いたら良いんだ。すごい技術だよね。あんたが美味しいって言うなんて。前だったら、絶対に食べなかっただろ」
「それはそうだ。美味いと思わなかった。今は違う。良い肉が冷凍で出回り始めた」
「すぐに食べられない人が居るから、冷凍は便利だよ。でも、今度は生のお肉を送ってくれるんだって。それもステーキ用だよ。がっつりどうぞって」
「良かったな。六槍君が選んだ肉か。美味いものを知っているな」
「それはそうだよ。秘書だもん。早瀬さんが言っていたんだ。お土産や贈答品には目を光らせて、常にアンテナを張り巡らせていたんだって。あんたの秘書をするのは大変だったと思うよ。カズ兄さんの秘書も大変だと思うけど……」

 その一貴さんはお義父さんの家で朝ご飯中だ。さっき電話が掛かってきていた。今日は張り切っているのだと。それと、お肉の感想を聞いてきていたから、これから食べるところだと答えておいた。向こうでもステーキを食べているそうだ。膵臓が弱くなったユーリーは柔らかいお肉を食べているそうだ。お義父さんもステーキで、二葉はユーリーと同じメニューだ。誰か一人は一緒にしないと可哀想だという意見だった。

 引っ越しに関しては、晴海さんはおまかせパックというサービスを使っているそうだ。荷造りと荷ほどきのサービスだ。しかし、物が多すぎるから、半分だけ頼んだそうだ。荷ほどきするのがワクワクして楽しいからだという理由もある。そこで、俺達がかり出された。一緒にやろうというものだ。

 何でも一人でやりたい晴海さんにしては珍しいことだと思った。そして、その理由を知って、驚いた。俺の大学の卒業式で知り合って連絡先を交換した神仙教授も手伝いに来てくれるという。あれから連絡するようになってすっかり親しくなり、友達づきあいをしているそうだ。それにはユーリーも一役買った。ナンパをしていたくせに、晴海さんとの仲を取り持ったからだ。晴海さんとは好きな映画が同じで、読んでいる本も同じで、性格も合うのだという。年も二つ違いだから近い。

「神仙教授には久しぶりに会うなあ」
「元気にしているそうだ。昨夜、晴海兄さんから聞いた。土産を用意してある。昨日の店で買っておいた饅頭だ」
「美味しいやつだよね。甘い物が好きだから良かったよ」

 黒崎が会食の店で買ってきてくれたお饅頭は、俺も好きなやつだ。神仙教授も気に入ると思う。ここにいるアンも好きな匂いだ。いつも食べたがる。甘党らしい。その一方でアンドリューは甘い匂いに興味が無くて、魚党だ。

 アンドリューは生後8週間目を迎えて、すっかり大きくなった。離乳食フードを食べている。そこにミルクを混ぜておき、栄養補給をさせている。その彼が俺の膝の上に座っている。すっかり定位置になっている。ずっと俺が家の中にいたから、べったりしている。今日は久しぶりの留守番だ。お義父さんが預かってくれる。
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