624 / 938
18-14
しおりを挟む
一貴さんが大人しくTシャツを着ている姿を見つめた。片袖が通っていない。いつものことだ。そこで優しく教えてあげると、困ったと言いながら、一度脱いだ。腕を出す方向の方針転換が出来なかったそうだ。
「ああーーー、しまった。教授の前で恥ずかしい。普段の僕が出てしまった……」
「教授。カズ兄さんはこういうタイプなんです。そそっかしくて、おっちょこちょいでして」
「そうなのか。何でも出来そうな人なのに……。失礼しました」
教授がハッとした顔になった。幻滅しただろうかと一貴さんが聞くと、いいえと言って、もう一度、顔を赤くした。可愛いということか。いずれにしても、教授は一貴さんに好印象だと分かった。これはもう晴海さんの危機だ。
「うひゃひゃひゃひゃ」
「夏樹君。何を笑っているんだ?僕の腕を引っ張ってくれ……」
「はいはい。右腕を引っ張るよ。はいはい。次は左腕だよ」
「よし。着られた。このように僕は不器用でして……」
もう教授のことは諦めたと言い、一貴さんがTシャツの裾を直した。かっこいい人でいたかったのにとという意味だと言った。それに対して教授は微笑んで、一貴さんの襟元を直してくれた。
「襟が折れています」
「ありがとうございます。僕のような男はどうですか?」
「好ましいと思います。僕も慌てるタイプだから、気持ちが分かります。見られている中で服を着るのは大変だ」
「そうでしたか!僕はデート相手の前では服を着れなくて、寝ている間に着ているタイプです。向こうが起きたら着替えが済んでいるということで、冷たい男だと誤解を受けてきました。このように、かっこ悪いところを見せたくないだけなのに……」
「なるほど……」
教授が頷いた。その様子は真剣だった。俺は吹き出して笑いたい気分だ。その数々のデート相手が一貴さんのことを知れば、なんと思うかと想像したからだ。本当の姿を見せれば、今も続いている恋人がいたかも知れない。そういう一面を可愛いと言ってくれる人や、世話の焼ける人だと思ってくれる人が居たと思うからだ。しかし、一貴さんはひた隠しにしてきて、一人だ。藤沢にはおっちょこちょいな一面を見せまくっているから、問題ない。彼はそういう人を放っておけないタイプだ。
教授がまた微笑んだ。楽しい人だと言いながら。一貴さんがTシャツを前後ろを反対に着たことが分かったからだ。俺も気がつかなかった。なんだか着心地が悪いと言い出したから気づいたことだ。どっちを前に来ても可愛いデザインだ。まさかレディース物だろうか。
「カズ兄さん。これって、レディースじゃないの?だって、可愛い系のデザインだもん」
「メンズ物だ。ちゃんと確認してある。でも、店頭にはレディースの方が好みのデザインが多かった。メンズでも置けば良いのにと思った。これが一番可愛かった」
「そうだったんだね。可愛いのが好きだもんね」
「そうなんですね。可愛い系がお好きでしたか」
教授が微笑んだ。気難しい人だと思っていたのに、今日は笑顔が多い。一貴さんの前で笑いっぱなしということか。普段のインチキマジシャンのような格好を見て欲しかった。今日の服装は大人し過ぎる。マンションの住人に怪しまれないように考えてきたのだろう。
「南波君!待ってくれ!まだ話していたい」
「どうしたのかな?」
俺達の近くでは、ユーリーが南波さんと話をしている。そして、待ってくれという言葉に俺達が反応した。喧嘩だろうか。しかし、ユーリーはニコニコしている。
「南波君。愛しているんだ」
「ヒョーーーーー……」
「ははは」
教授が笑った。さっきまで自分のことを口説いていた男が舌の根も乾かぬうちに別の相手にかけている言葉に呆れたのだろう。そう思って教授の方を向くと、いいやと言って、首を横に振った。こういうタイプだと分かっていたそうだ。やたら愛想が良くて感じの良いタイプには要注意だと、昔から思っていたのだという。
「ああーーー、しまった。教授の前で恥ずかしい。普段の僕が出てしまった……」
「教授。カズ兄さんはこういうタイプなんです。そそっかしくて、おっちょこちょいでして」
「そうなのか。何でも出来そうな人なのに……。失礼しました」
教授がハッとした顔になった。幻滅しただろうかと一貴さんが聞くと、いいえと言って、もう一度、顔を赤くした。可愛いということか。いずれにしても、教授は一貴さんに好印象だと分かった。これはもう晴海さんの危機だ。
「うひゃひゃひゃひゃ」
「夏樹君。何を笑っているんだ?僕の腕を引っ張ってくれ……」
「はいはい。右腕を引っ張るよ。はいはい。次は左腕だよ」
「よし。着られた。このように僕は不器用でして……」
もう教授のことは諦めたと言い、一貴さんがTシャツの裾を直した。かっこいい人でいたかったのにとという意味だと言った。それに対して教授は微笑んで、一貴さんの襟元を直してくれた。
「襟が折れています」
「ありがとうございます。僕のような男はどうですか?」
「好ましいと思います。僕も慌てるタイプだから、気持ちが分かります。見られている中で服を着るのは大変だ」
「そうでしたか!僕はデート相手の前では服を着れなくて、寝ている間に着ているタイプです。向こうが起きたら着替えが済んでいるということで、冷たい男だと誤解を受けてきました。このように、かっこ悪いところを見せたくないだけなのに……」
「なるほど……」
教授が頷いた。その様子は真剣だった。俺は吹き出して笑いたい気分だ。その数々のデート相手が一貴さんのことを知れば、なんと思うかと想像したからだ。本当の姿を見せれば、今も続いている恋人がいたかも知れない。そういう一面を可愛いと言ってくれる人や、世話の焼ける人だと思ってくれる人が居たと思うからだ。しかし、一貴さんはひた隠しにしてきて、一人だ。藤沢にはおっちょこちょいな一面を見せまくっているから、問題ない。彼はそういう人を放っておけないタイプだ。
教授がまた微笑んだ。楽しい人だと言いながら。一貴さんがTシャツを前後ろを反対に着たことが分かったからだ。俺も気がつかなかった。なんだか着心地が悪いと言い出したから気づいたことだ。どっちを前に来ても可愛いデザインだ。まさかレディース物だろうか。
「カズ兄さん。これって、レディースじゃないの?だって、可愛い系のデザインだもん」
「メンズ物だ。ちゃんと確認してある。でも、店頭にはレディースの方が好みのデザインが多かった。メンズでも置けば良いのにと思った。これが一番可愛かった」
「そうだったんだね。可愛いのが好きだもんね」
「そうなんですね。可愛い系がお好きでしたか」
教授が微笑んだ。気難しい人だと思っていたのに、今日は笑顔が多い。一貴さんの前で笑いっぱなしということか。普段のインチキマジシャンのような格好を見て欲しかった。今日の服装は大人し過ぎる。マンションの住人に怪しまれないように考えてきたのだろう。
「南波君!待ってくれ!まだ話していたい」
「どうしたのかな?」
俺達の近くでは、ユーリーが南波さんと話をしている。そして、待ってくれという言葉に俺達が反応した。喧嘩だろうか。しかし、ユーリーはニコニコしている。
「南波君。愛しているんだ」
「ヒョーーーーー……」
「ははは」
教授が笑った。さっきまで自分のことを口説いていた男が舌の根も乾かぬうちに別の相手にかけている言葉に呆れたのだろう。そう思って教授の方を向くと、いいやと言って、首を横に振った。こういうタイプだと分かっていたそうだ。やたら愛想が良くて感じの良いタイプには要注意だと、昔から思っていたのだという。
0
あなたにおすすめの小説
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
黒獅子の愛でる花
なこ
BL
レノアール伯爵家次男のサフィアは、伯爵家の中でもとりわけ浮いた存在だ。
中性的で神秘的なその美しさには、誰しもが息を呑んだ。
深い碧眼はどこか憂いを帯びており、見る者を惑わすと言う。
サフィアは密かに、幼馴染の侯爵家三男リヒトと将来を誓い合っていた。
しかし、その誓いを信じて疑うこともなかったサフィアとは裏腹に、リヒトは公爵家へ婿入りしてしまう。
毎日のように愛を囁き続けてきたリヒトの裏切り行為に、サフィアは困惑する。
そんなある日、複雑な想いを抱えて過ごすサフィアの元に、幼い王太子の世話係を打診する知らせが届く。
王太子は、黒獅子と呼ばれ、前国王を王座から引きずり降ろした現王と、その幼馴染である王妃との一人息子だ。
王妃は現在、病で療養中だという。
幼い王太子と、黒獅子の王、王妃の住まう王城で、サフィアはこれまで知ることのなかった様々な感情と直面する。
サフィアと黒獅子の王ライは、二人を取り巻く愛憎の渦に巻き込まれながらも、密かにゆっくりと心を通わせていくが…
妖精です、囲われてます
うあゆ
BL
僕は妖精
森で気ままに暮らしていました。
ふと気づいたら人間に囲まれてました。
でもこの人間のそばはとても心地いいし、森に帰るタイミング見つからないなぁ、なんて思いながらダラダラ暮らしてます。
__________
妖精の前だけはドロ甘の冷徹公爵×引きこもり妖精
なんやかんやお互い幸せに暮らします。
守り守られ
ほたる
BL
主治医 望月診療所の双子医師
患者 瀬咲朔
腸疾患・排泄障害・下肢不自由
看護師
ベテラン山添さん
準主人公 成海真幌 腸疾患・排泄障害・てんかん
木島 尚久 真幌の恋人同棲中
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
きっと必ず恋をする~初恋は叶わないっていうけど、この展開を誰が予想した?~
野々乃ぞみ
BL
渡辺 真詞(わたなべ まこと)は小さい頃から人ではないモノが見えた。
残念ながら話もできたし、触ることもできた。
様々なモノに話しかけられ、危ない目にもあってきた。
そんなとき、桜の下で巡(めぐる)に出会った。
厳しいけど優しい巡は特別な存在になった。
きっと初恋だったのに、ある日忽然と巡は消えた。
それから五年。
地元から離れた高校に入った十六歳の誕生日。
真詞の運命が大きく動き出す。
人とは違う力を持つ真詞が能力に翻弄されつつも、やっと再会した巡と恋をするけど別れることになる話。(前半)
別れを受け入れる暇もなくトレーニングが始まり、事件に巻き込まれて岬に好かれる話。(後半)
・前半 巡(人外)×真詞
・後半 岬(人間)×真詞
※ 全くの別人ではありませんが、前半と後半で攻めが変わったと感じるかもしれません。
※ キスを二回程度しかしないです。
※ ホラーではないつもりですが、途中に少し驚かすようなシーンがあります。ホラーのホの字もダメだという方は自己判断でお願いします。
※ 完結しました。遅くなって申し訳ありません。ありがとうございました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる