青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

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 そこで俺は聞いてみたくなった。今まで大学内で口説かれたことがあるのかと。教授は生徒に人気がある。生徒から告白されたこともありそうだ。そして、晴海さんのことはどうかと聞いてみたい。そう考えて、随分と俺は性格が変わったことに気づいた。昔の俺は人のことに興味がなかったのに、今なんてお節介を焼きまくっている。今ここで話をしているユーリーにも関心がある。

「南波君!電話を切らないでくれ。今度の約束は必ず守る」
「約束?本当にどうしたのかな?」

 南波さんとは友達の距離を保っているはずだ。これではまるで、デートをすっぽかしてしまったユーリーが謝っているように聞こえる。そもそも、そんなことをしそうにないのに。人との約束はきちんと守る人だ。時間だって守る。そういう点ではとても真面目で、信頼ができる。そもそも、謝らないといけないことをしない人でもある。

 ユーリーがニコニコしたままだ。ということは、喧嘩ではないのだろう。いや、南波さんだけが怒っているのか。俺達は席を外した方が良さそうだと思った。愛しているなんて言葉が出てくるとは驚いたが、ユーリーならあり得る。本当に真面目な人だから、本気でそう思っているのが分かる。

「教授。彼のことは放っておきましょう」
「そうだね。僕はさっき口説かれていたんだよ」
「そうですよねえ。オカルト研究部には入るんですよね?」
「そうするよ。もう返事をしてしまった。ははは。UFOロードか。一貴さん。ご存じでしたか?」
「いやーー、僕は知らない場所です。ウーリに聞くんですか?聞いてみます。……知っているそうです。出るそうですよ。そこ……」
「それは楽しみだ。旅行はいつだろう」
「あ……」

 俺達は立ち止まった。晴海さんがじっとこっちを見ていたからだ。自分の居ないところで教授が楽しそうにしていたからだろう。晴海さんはそういう一面がある。そう思って、何でもないことだと晴海さんに言おうとすると、はあっと彼が深呼吸をして、こっちに来た。

「別に、友達を盗られた気分じゃないぞ」
「晴海お兄ちゃん。そうだよ。さっきね、ユーリーが教授のことをオカルト研究部に誘っていたんだ。そこでオッケーが貰えたところ。ユーリーは今、別の人と電話で話しているよ。そうですよね?教授……」
「そうだよ。晴海君。君のことは分かっている。僕は君とは体験親しい友人同士だ。ここの内見に同行した。ここは強調しておく。僕が泊まったときに使う部屋は奥にしたのかな?」
「ああ。そっちの部屋にした。手前が俺の寝室だ」

 晴海さんが奥の部屋を指して、俺達のことを連れていった。3LDKという間取りは一人暮らしには広いだろうと思っていたが、誰かが泊まるなら部屋数はあった方が良いと思った。

 そこで、俺と黒崎が付き合うことになった当時のことを振り返った。同じように、広い部屋に住んでいた黒崎だった。俺が泊まりに行くようになり、ガランとした部屋に俺の荷物が積まれるようになり、手狭になるほどだった。晴海さんもそうなると良いのにと思った。元から荷物の多いタイプのところに人が増える状況だ。

 晴海さんがまず先に教授のことを奥の部屋に通した。そこはスタイリッシュな内装の部屋だった。ここにベッドを置くと指し示した場所を見て、教授が首を横に振った。自分はリビングでいいからだという。

「教授。遠慮するな。冬は風邪を引く。ふ、ふ、冬になっても俺と一緒に……」
「僕はリビングでいいよ。ああ、そうだ。他にもお客さんが来るだろう。客間にするといい。それに、君は恋人が欲しいと言っていただろう。この部屋は風水で決めた物件だ。恋愛、家庭運に良い方角だった。そういうわけで、その人のために開けておきたまえ」
「……」

 晴海さんが押し黙った。さっき言いかけたことは告白だったと思う。きっと、冬になっても俺と一緒にいてくれという事が言いたかったのだろう。しかし、教授はそれに気づいていない。

 俺としてはもどかしい。しかし、晴海さんに友達が出来て良かったと思った。風水で決めたなんて、今回の恋に一生を掛けているのだと思った。そこで、本で読んだのかと聞いてみると、そうだった。書店に行った時は教授も同行したのだと知り、さらに驚いたのだった。晴海さんが占いを信じるとは思わなかったからだった。

 さて、家の中にはどんどん家具が運び入れられている。黒崎が指揮し、ここに向こうにと指示を出し、お兄さん達に運んで貰っている。その様子は頼もしくて、胸がときめいたのだった。
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