青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

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  俺の慌てぶりに教授が笑った。そして、仲が良くて良いなと言った。そういえば、俺は教授のプライベートをよく知らない。家族構成などだ。好きな食べ物が学食に置いてあるわらび餅アイスだということは知っている。趣味はスイーツを食べることだということも知っている。

「教授。俺、教授のプライベートを知りません。教えて頂けませんか?」
「いいよ。でも、僕のプライベートはつまらないと思うよ。へえーー、あ、そう。そんな反応になると思う」
「そんなことはないです。教えて下さい」
「分かった。僕の名前は神仙敬介だ。家族構成は両親と兄との4人家族だ。今は一人暮らしをしている。趣味はスイーツを食べることと、水族館に行くことだ。それだけだ」
「へえーー。あ、そう……。あ、いけない」

 教授の言ったとおりの反応をしてしまい、慌てて首を横に振った。俺は日頃からこういう反応をしているのだと気づかされてしまった。見事に言い当てられている。

「教授。すみません。あ、そうなんて言って……」
「いいんだよ。そんな反応になる経歴だ。家族仲は、いたって普通だ。喧嘩することなく今まで来られている。神に感謝だ。僕の家は仏教徒だけれど、十字架には興味を持っている。ユリウスさんが首からかけているものだ」
「はい。拓海さんが使っていた十字架です。強欲なユーリーにはピッタリだと思います。戒めになればと思います」
「ははは。人間という物は欲がある生き物だ。欲を否定してはいけないよ」
「でも、この人、この間知り合った上楽先生っていう人とラインしていて、南波さんに愛しているなんて言っているんです。教授にもナンパしたっていうのに……」

 上楽先生とユーリーは気が合い、よくラインをしていることを知っている。来週の金曜日に大学で記念講演があり、それを観に行くということで、その話でも気が合い、昨日だって連絡を取っていた。すると、教授が上楽先生のことを知っていると言った。まだ若いながら、粘り強い研究心で注目されているそうだ。

「上楽先生は有名だ。彼にはファンがいる。先生達の中で親衛隊が出来ているそうだ」
「へえーー。やっぱりそうですよね。きれい系の男性だから、人気があると思いました。この間、俺は歯を抜きに行った日に知り合ったんですけど、周りにいる先生が上楽先生のことを大事にしている感じがして、好きなんだろうなって思いました」
「そういう先生は襲われてしまう。だからこその親衛隊だ。ユリウス君はお近づきになれたのか。彼はすぐには心を開かないと聞いているのに」
「誰かと見間違えていました。あ、いけない……」

 こんなにペラペラ喋るのは悪いと思った。しかし、教授は口が堅いから、少しぐらいは良いだろうと思った。そこで、ユーリーのことをジュリアンと呼んでしまったことを話すと、教授が切なそうな顔になった。

「そうか。懐かしい人を思い出したんだろう。……去年別れた人なのか。そうか。まだ心の傷が癒えていない頃だな。そっと心の奥にしまって置いてあげたまえ」
「はい。そうします。晴海お兄ちゃん。教授と何か話したら?」

 さっきから晴海さんが無言で居る。テレビを付けているから、画面ばかり見ている。俺達ばかり話していて教授を話せなくて拗ねてもいけない。そう思って晴海さんの肩を叩くと、画面の中にいる人に驚いた顔をしていた。俺も驚いた。黒崎のかつてのデート相手が、ママのモデル事務所に移籍したというニュースが流れていたからだった。

 ママはモデル事務所の他に、芸能部門も立ち上げたところだ。まさか、息子の元カノが在籍するなんて思わなかっただろう。それは葉月優衣さんではなく、別の人だ。何か意地悪されたわけではない。俺と黒崎が一緒に歩いているときに驚かれただけだ。

「げげげ、黒崎さん!あんたの元カノだよ~」
「悪かった」
「俺さ~。このリリナさんと会った時、まだバンドボーカルをしていなくてさ~。高校3年生のときでさ~。また女優さんが元カノなんだって分かって、震えるぐらいに驚いたんだ」

 黒崎の女性からモテる感じが忘れられない。どこを歩いていても彼の元デート相手に遭遇するから、一緒に外を歩きたくないと思ったぐらいだ。
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