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別に俺は教授のことをじろじろ見たいわけでは無い。大学時代の名残があり、目が合うと授業で当たられていたから、咄嗟に顔を伏せるようになっていた。だから、教授の身長がどれぐらいなのか、おぼろげながらの記憶だ。目の前にいるというのに、失礼だっただろうか。
「夏樹君。君は僕から目線を逸らす。もう卒業した後だ。僕のことを見てくれたまえ」
「うっうっ。失礼しました。つい、昔の名残が消えなくて……」
俺はタオルを置いた後、教授の前に戻ってきた。そして、じっと顔を見てみた。気難しそうで優しそうな顔だ。とっつきにくい印象がある。しかし、きれい系の男性だから、パッと華やぎもある。ユーリーが手にキスをしたぐらいだ。そんなことを思い出していると、黒崎の声が荒げられて驚いた。電話はまだ続いている。
「黒崎さん。どうしたのかな……」
「すぐに終わるだろう」
晴海さんがため息をついた。しんと静まり帰ってしまったから、片付けている間、黒崎の声が聞こえ続けた。彼の方は俺達に聞かれても構わないということで、遠慮なく話している。
「あんたなあ。出来ない物は出来ない。菓子のコマーシャルのタレントはもう決まってある。大木さんが言うとおり、雑誌の表紙を飾って、リリナブームを作ったどうだ。俺と彼女はデートをしたことがある。力になったらなったで、週刊誌のネタになりそうだ。うちのコマーシャルをやることでタレコミがある。……夏樹に悪い。なんだって?食事だけだろうというのか。それでも、デートだった。だから、力にはなれない。いい人なのは分かる。前の事務所とは円満退所だと報道されていたじゃないか。そうか。いい関係ではないんだな。事務所を移って成功したパターンにしたいのか」
黒崎の話が続いている。どうやら、黒崎製菓グループのコマーシャルに起用して貰えないかという依頼だったようだ。そして、それには週刊誌のネタというものがくっついてくるということも知った。そして、さらに、ママはリリナさんを助けたいと思ってことも知った。
黒崎が俺のことを思ってくれているのはありがたい。もう過去のこととはいえ、二人の付き合い週刊誌のネタになると俺だって悲しい。それに、ディスレクトサイドゼロに波及して、イメージが悪くなる。過去に何かあった二人で、今も続いている二人なんて悪意があるように書かれたらだ。それを黒崎が心配している。
「分かった。できる限りの協力をする。週刊誌の取材が来ても、断らないことにした。ただし、会食には出ない。いいな?……じゃあ、また」
黒崎が電話を終えた。週刊誌のネタになるということだと分かった。二人の過去のことで知っている人がすでにいるということだ。なんだか心配になって黒崎のことを見ていると、彼が心配ないと言った。
「すまない。さっき聞かせたとおり、彼女と俺のデートの回数のことで週刊誌のネタになりそうだ。今も良い友人というイメージを持たせたいと言うのが、母の意見だ。大木さんは反対だ。IKUに喧嘩を売ることになると危惧している。長谷部さんには俺から話す。リリナという女優の再起に関わると。ただし、それは小さな協力だと伝える。兄さん、寝室を借りる」
「いいぞ。話していってくれ」
「助かる」
そう言って、黒崎が寝室に行ってしまった。今の話からすると、黒崎とは友人同士だと週刊誌に書かれることがリリナさんにとっては良いことなのだと知った。しかし、それにはIKUの意見がある。少しでもイメージが悪くなるようなことがあれば許さないというものだ。それはそうだ。俺達を守るためだ。黒崎だってさっき電話でそう言っていた。しかし、できる限りの協力をするということならば、ママの話に納得いくものがあったということだ。それだけリリナさんを助けたいと思っているということだ。
そう思って口にすると、晴海さんと一貴さんが首を横に振った。助けたいだけじゃないと言った。売り出したいからだということだった。まずは晴海さんが言った。
「いいか。彼女のことを売り出したいから、使えるものは何でも使おうとしている。いい加減、お父さんに言いたい。俺から告げ口をしてやる。一貴君もそう思うだろう」
「僕もさっきの話を聞いてそう思った。大木副社長の意見は正しい。過去のデート相手という繋がりを持って、まだ2人が親密関係にあるとでも言いたいような噂を流すのはどうかと思う。IKUがどう言うか。烏丸さんは危うい人だ」
「そうだな。俺からお父さんに言う。やめさせろと……」
そう言って、晴海さんがスマホを取ってきた。今からお父さんに告げ口するのだという。そして、ママの事務所に苦情を入れて、今回の件をやめさせるだということだ。これから先のこともあるに違いない。
俺が今できるのは、晴海さんの電話をやめさせることだ。お義父さんが怒りに震えてまた大声でわめき散らしたら、ママが可哀想だと思った。黒崎は譲歩案を出して、だめなところは断った。それでいいと思った。そして、今、長谷部さんに話を通そうとしている。
「晴海お兄ちゃん。様子を見ようよ」
「だめだ。俺が烏丸さんに言ってもいいんだぞ?でもなあ、お父さんが言うのが一番効くはずだ。あの魔女め!」
「ああーーー……」
晴海さんが怒っている。俺には黙っておけと言った。こうなると俺は止められない。晴海さんは当主だ。黒崎の兄貴だ。ママのことを知っている人でもある。俺のことも守りたいと言ってくれている。俺はハラハラしながら晴海さんがお義父さんに電話を掛ける姿を見守った。
「夏樹君。君は僕から目線を逸らす。もう卒業した後だ。僕のことを見てくれたまえ」
「うっうっ。失礼しました。つい、昔の名残が消えなくて……」
俺はタオルを置いた後、教授の前に戻ってきた。そして、じっと顔を見てみた。気難しそうで優しそうな顔だ。とっつきにくい印象がある。しかし、きれい系の男性だから、パッと華やぎもある。ユーリーが手にキスをしたぐらいだ。そんなことを思い出していると、黒崎の声が荒げられて驚いた。電話はまだ続いている。
「黒崎さん。どうしたのかな……」
「すぐに終わるだろう」
晴海さんがため息をついた。しんと静まり帰ってしまったから、片付けている間、黒崎の声が聞こえ続けた。彼の方は俺達に聞かれても構わないということで、遠慮なく話している。
「あんたなあ。出来ない物は出来ない。菓子のコマーシャルのタレントはもう決まってある。大木さんが言うとおり、雑誌の表紙を飾って、リリナブームを作ったどうだ。俺と彼女はデートをしたことがある。力になったらなったで、週刊誌のネタになりそうだ。うちのコマーシャルをやることでタレコミがある。……夏樹に悪い。なんだって?食事だけだろうというのか。それでも、デートだった。だから、力にはなれない。いい人なのは分かる。前の事務所とは円満退所だと報道されていたじゃないか。そうか。いい関係ではないんだな。事務所を移って成功したパターンにしたいのか」
黒崎の話が続いている。どうやら、黒崎製菓グループのコマーシャルに起用して貰えないかという依頼だったようだ。そして、それには週刊誌のネタというものがくっついてくるということも知った。そして、さらに、ママはリリナさんを助けたいと思ってことも知った。
黒崎が俺のことを思ってくれているのはありがたい。もう過去のこととはいえ、二人の付き合い週刊誌のネタになると俺だって悲しい。それに、ディスレクトサイドゼロに波及して、イメージが悪くなる。過去に何かあった二人で、今も続いている二人なんて悪意があるように書かれたらだ。それを黒崎が心配している。
「分かった。できる限りの協力をする。週刊誌の取材が来ても、断らないことにした。ただし、会食には出ない。いいな?……じゃあ、また」
黒崎が電話を終えた。週刊誌のネタになるということだと分かった。二人の過去のことで知っている人がすでにいるということだ。なんだか心配になって黒崎のことを見ていると、彼が心配ないと言った。
「すまない。さっき聞かせたとおり、彼女と俺のデートの回数のことで週刊誌のネタになりそうだ。今も良い友人というイメージを持たせたいと言うのが、母の意見だ。大木さんは反対だ。IKUに喧嘩を売ることになると危惧している。長谷部さんには俺から話す。リリナという女優の再起に関わると。ただし、それは小さな協力だと伝える。兄さん、寝室を借りる」
「いいぞ。話していってくれ」
「助かる」
そう言って、黒崎が寝室に行ってしまった。今の話からすると、黒崎とは友人同士だと週刊誌に書かれることがリリナさんにとっては良いことなのだと知った。しかし、それにはIKUの意見がある。少しでもイメージが悪くなるようなことがあれば許さないというものだ。それはそうだ。俺達を守るためだ。黒崎だってさっき電話でそう言っていた。しかし、できる限りの協力をするということならば、ママの話に納得いくものがあったということだ。それだけリリナさんを助けたいと思っているということだ。
そう思って口にすると、晴海さんと一貴さんが首を横に振った。助けたいだけじゃないと言った。売り出したいからだということだった。まずは晴海さんが言った。
「いいか。彼女のことを売り出したいから、使えるものは何でも使おうとしている。いい加減、お父さんに言いたい。俺から告げ口をしてやる。一貴君もそう思うだろう」
「僕もさっきの話を聞いてそう思った。大木副社長の意見は正しい。過去のデート相手という繋がりを持って、まだ2人が親密関係にあるとでも言いたいような噂を流すのはどうかと思う。IKUがどう言うか。烏丸さんは危うい人だ」
「そうだな。俺からお父さんに言う。やめさせろと……」
そう言って、晴海さんがスマホを取ってきた。今からお父さんに告げ口するのだという。そして、ママの事務所に苦情を入れて、今回の件をやめさせるだということだ。これから先のこともあるに違いない。
俺が今できるのは、晴海さんの電話をやめさせることだ。お義父さんが怒りに震えてまた大声でわめき散らしたら、ママが可哀想だと思った。黒崎は譲歩案を出して、だめなところは断った。それでいいと思った。そして、今、長谷部さんに話を通そうとしている。
「晴海お兄ちゃん。様子を見ようよ」
「だめだ。俺が烏丸さんに言ってもいいんだぞ?でもなあ、お父さんが言うのが一番効くはずだ。あの魔女め!」
「ああーーー……」
晴海さんが怒っている。俺には黙っておけと言った。こうなると俺は止められない。晴海さんは当主だ。黒崎の兄貴だ。ママのことを知っている人でもある。俺のことも守りたいと言ってくれている。俺はハラハラしながら晴海さんがお義父さんに電話を掛ける姿を見守った。
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