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純白さんの名前が出たところだし、彼女がどんな人だったかを聞きたくなった。黒崎家の中心にいる自分が黒崎のことを可愛がることでもめ事に発展しそうだという恐れから、黒崎とは会っていなかった。同じ敷地内にいても、お義父さんの家とうちの家の間をそびえ立つ夏椿の木が、お互いの存在を消していた。小さな頃の黒崎にとってはそれが壁のようだと思っていたことを教えてくれた。
「ユーリーは純白さんに会ったことがあるんだろ?」
「あるよ。母さんが親しかった。黒崎製菓グループの役員同士だ。同じ敷地内に暮らしていて、知らんぷりするのはおかしな話だと言って、よく一緒にお茶を飲んでいた。ただし、兄さんは誘拐されるとか、撃たれる可能性もあった。純白さんは自分に関わらない方が良いって言っていたけど、居候の身でそういうわけにはいかない。母さんがよく舞台公演を観に行こうって誘っていた。友人のように接してくれたよ。それと、外見は隆さんに似ていたけど、また違う感じだ。親戚同士で結婚している家だけど、色んな家の血が入っているんだなと分かったよ。僕達も親戚同士で結婚している家だから、色んな人と仲が良くて羨ましいと思っていた」
「そっか。仲の良い人がいないって言っていたね」
「ああ。バーテルス家は嫌われているかも知れない。親戚が結婚したくて結婚紹介所に申し込んだら、バーテルスっていう名前だけで断られたんだ。その一年前に、従兄弟がその紹介所でパートナーを探しに行って、粗相があったらしい。僕が聞いたのは、同性のパートナー探しだ。うちは男女専門ですって断られて、なんだと?男を紹介してくれないのか!抗議する!って言ったんだよ。だから出入り禁止になった。こういう家だからね。そういうのは初めてじゃないんだ。まさか、ここで暮らせるなんて思わないよ。あのバーテルス家の息子が2人もここにいるのかって反応だ。城のある近所の人が言うにはね」
「純白さん、その話を聞いて、笑っていたんだって?そういう家の子なら喜んでって言ったって聞いたよ」
「ああ。ボランティア精神のある人だった。隆さんの家には女主人がいるのに、母さんっていう人が暮らすようになって、愛人関係だなんて悪口を言う人がいた。そういう人を純白さんが払い除けてくれた。私もいますって……。僕達は日傘を差して笑い合っているご婦人のそばで遊んでいた。純白さんは日傘ってガラじゃなかったんだ。でも、母さんがいるときは、気を遣って、母さんに合わせてくれた。オホホホなんて笑っていたよ」
「そっか。いいなあ。黒崎さんには純白さんとの思い出がないからさ。悲しんでいるんだ。写真だって、お義父さんが隠しているんだもん。拓海さんの写真もそうだったけど……」
「拓海君はよくこの家に来ていた。とても仲が良かった。黒崎製菓の副社長と秘書という関係もあった。拓海君が副社長になるってことで、バーテルス家からも遣いを出して日本にお祝いに来た後の事故だ。圭一はどうしているかと思ったよ。でも、純白さんがいるから大丈夫だろうと思った。でも、彼女は引退して、この家に引きこもっていた。法事にも出なくなって、僕達も会えなくなった。隆さんだけがその後の彼女のことを知っている」
「そうだね……。黒崎さんが会いたがっていたんだ。会おうと思えば会えるのに、なぜかそうできなかったんだって。大学を卒業した後、お義父さんに会いたくなくて、この家から離れていたんだ。会って何を話そうかと思ったら、頭が痛くなったそうだよ」
「バーテルス家と少し似ている。黒崎製菓からも黒崎家とも距離を置いて関わらないと決めて、この家で家庭菜園をして暮らしていたんだ。もう疲れたんだって言っていたそうだ。煌びやかな世界からは身を引きたいって」
「そんなに煌びやかかな?普通って感じがする家だよ」
「君が来たからだ。それはもう昔はすごかった。社交界の誰があの人が、あっちの人がって噂をする親戚達に囲まれていた。僕と兄さんはその中にいて、大人達の話を聞いていた。一見仲が良さそうに見えて、腹の中はそうじゃないと教わった。拓海君からだった。晴海君は疲弊して、うんざりだって言っていた。君がここに住むようになって、随分と風通しが良くなって、親戚の忠明叔父さんなんか、すっかり気の良い人になっている。隆さんの弟たちは相変わらずの感じの悪さだけど……。純白さんだけが隆さんの味方だった」
「そう聞いているよ。あ、山鳥がご飯を食べているよ。猫はいないようだね」
「そうだな。食べ終わるまで見ていよう」
俺達はお義父さんの家のそばまでやって来た。山鳥はくちばしが細いから、小鳥用の餌を置いてある。毎日夕方になるとお義父さんが餌場を掃除して、翌朝の餌を置いてある。そのリズムがいいのか、体調が良いと言っていた。
「ユーリーは純白さんに会ったことがあるんだろ?」
「あるよ。母さんが親しかった。黒崎製菓グループの役員同士だ。同じ敷地内に暮らしていて、知らんぷりするのはおかしな話だと言って、よく一緒にお茶を飲んでいた。ただし、兄さんは誘拐されるとか、撃たれる可能性もあった。純白さんは自分に関わらない方が良いって言っていたけど、居候の身でそういうわけにはいかない。母さんがよく舞台公演を観に行こうって誘っていた。友人のように接してくれたよ。それと、外見は隆さんに似ていたけど、また違う感じだ。親戚同士で結婚している家だけど、色んな家の血が入っているんだなと分かったよ。僕達も親戚同士で結婚している家だから、色んな人と仲が良くて羨ましいと思っていた」
「そっか。仲の良い人がいないって言っていたね」
「ああ。バーテルス家は嫌われているかも知れない。親戚が結婚したくて結婚紹介所に申し込んだら、バーテルスっていう名前だけで断られたんだ。その一年前に、従兄弟がその紹介所でパートナーを探しに行って、粗相があったらしい。僕が聞いたのは、同性のパートナー探しだ。うちは男女専門ですって断られて、なんだと?男を紹介してくれないのか!抗議する!って言ったんだよ。だから出入り禁止になった。こういう家だからね。そういうのは初めてじゃないんだ。まさか、ここで暮らせるなんて思わないよ。あのバーテルス家の息子が2人もここにいるのかって反応だ。城のある近所の人が言うにはね」
「純白さん、その話を聞いて、笑っていたんだって?そういう家の子なら喜んでって言ったって聞いたよ」
「ああ。ボランティア精神のある人だった。隆さんの家には女主人がいるのに、母さんっていう人が暮らすようになって、愛人関係だなんて悪口を言う人がいた。そういう人を純白さんが払い除けてくれた。私もいますって……。僕達は日傘を差して笑い合っているご婦人のそばで遊んでいた。純白さんは日傘ってガラじゃなかったんだ。でも、母さんがいるときは、気を遣って、母さんに合わせてくれた。オホホホなんて笑っていたよ」
「そっか。いいなあ。黒崎さんには純白さんとの思い出がないからさ。悲しんでいるんだ。写真だって、お義父さんが隠しているんだもん。拓海さんの写真もそうだったけど……」
「拓海君はよくこの家に来ていた。とても仲が良かった。黒崎製菓の副社長と秘書という関係もあった。拓海君が副社長になるってことで、バーテルス家からも遣いを出して日本にお祝いに来た後の事故だ。圭一はどうしているかと思ったよ。でも、純白さんがいるから大丈夫だろうと思った。でも、彼女は引退して、この家に引きこもっていた。法事にも出なくなって、僕達も会えなくなった。隆さんだけがその後の彼女のことを知っている」
「そうだね……。黒崎さんが会いたがっていたんだ。会おうと思えば会えるのに、なぜかそうできなかったんだって。大学を卒業した後、お義父さんに会いたくなくて、この家から離れていたんだ。会って何を話そうかと思ったら、頭が痛くなったそうだよ」
「バーテルス家と少し似ている。黒崎製菓からも黒崎家とも距離を置いて関わらないと決めて、この家で家庭菜園をして暮らしていたんだ。もう疲れたんだって言っていたそうだ。煌びやかな世界からは身を引きたいって」
「そんなに煌びやかかな?普通って感じがする家だよ」
「君が来たからだ。それはもう昔はすごかった。社交界の誰があの人が、あっちの人がって噂をする親戚達に囲まれていた。僕と兄さんはその中にいて、大人達の話を聞いていた。一見仲が良さそうに見えて、腹の中はそうじゃないと教わった。拓海君からだった。晴海君は疲弊して、うんざりだって言っていた。君がここに住むようになって、随分と風通しが良くなって、親戚の忠明叔父さんなんか、すっかり気の良い人になっている。隆さんの弟たちは相変わらずの感じの悪さだけど……。純白さんだけが隆さんの味方だった」
「そう聞いているよ。あ、山鳥がご飯を食べているよ。猫はいないようだね」
「そうだな。食べ終わるまで見ていよう」
俺達はお義父さんの家のそばまでやって来た。山鳥はくちばしが細いから、小鳥用の餌を置いてある。毎日夕方になるとお義父さんが餌場を掃除して、翌朝の餌を置いてある。そのリズムがいいのか、体調が良いと言っていた。
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