青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

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 今から行く場所は学食からそんなに遠くない場所にある教室だ。講堂や経済学部棟のある建物の横を通っていくと、3階建ての建物にたどり着いた。そこは湿気があり、少し暗い印象があった。地面には苔が生えている。たしかに夜になるとオバケを見そうな感じがある。

「ははは。ここは明治時代に建てられた建物をそのまま残したんだけど、今から30年前にこの建物が建った。コンクリート打ちっぱなしでね。デザイナーズマンション風と言えばお洒落なんだけど、湿気が籠もるから、研究棟に使えなくなって、今は誰も使用していない。案はあるんだよ。ここを演劇部の部室にして、衣装制作部との合同で使っても良いなっていう案だよ」
「ええ。当大学では演劇部が華やかでして、その道に進む生徒が出たところです。今年プロデビューを飾った大内マリアさんです」
「あれ?大内さん?」

 その名字に聞き覚えがあった。黒崎家の法事の時に二葉に助け船を出してくれた由香里さんの実家の名字だ。黒崎達は何も言っていなかったから偶然なのだろうか。そこで、俺はつぶやいたことに上楽先生から聞き返されて、事情を話した。

「そうなのか。姻族関係があるなら僕達は知っているはずだ。お父さんこの間、言うはずだから」
「うっうっ。うちのお義父さんがすみません~」

 なんだか頭の痛いことになって来た。お義父さんは強引で、黒崎家の名前を売り込むのが上手なのだと分かった。そして、社交というのは難しいと思った。感じよく繋がりを持つということが大事だ。そして、これからの付き合い方を決めて、ドンドン広げていく。そのうち社交界の中にはお義父さんの名前を知らないはいないような状況になっていく。実際に、今の現状がそうだと思う。今日のことだって俺が遣いとなって関係作りをする必要がある。それなのに、面倒を見られている感じがあり、子供扱いだ。

「いいんだよ。大内マリアさんがデビューしたことで、演劇部が元気になった。それまで一時期は部員が減って、部員同士の関係がギクシャクしていた。今はまた以前の華やかさを取り戻して、衣装制作部の入部希望者が増えたんだ。なんと、30人もいる。みんな、いつかはデザイナーになってみたいという志願者だ。うちの大学なら、演劇部でそれが叶えられる」
「はい。当大学では年に一度の文化祭で、大型ホールを使って演劇の発表会を行います。それにはモデル事務所ですとか、演劇関係の方がお越しになられて、大内マリアさんは見いだされたんです」
「そうでしたか。大きな発表会なんですね。ハロウィンの時にはイベントがありますか?」
「はい。演劇部が仮装をしてお菓子を配ります。希望者には顔にペイントを施します。それは美術部との合同イベントになりまして、ハロウィンの参加者よりも部員スタッフの方が多いという状況です。当大学の学生達はやや恥ずがりやな面があります。さあ、こちらへお越しになって下さい」
「はい」

 今村先生の先導により、俺達は教室が並んでいる建物のそばに来た。ここは石畳になっている地面であり、生えている木がおしゃれ感を醸し出している。しかし、人の気配がないから廃れている感があり、もったいないなと思った。しかし、湿気があるのなら仕方のないことなのだろう。

「ここがそのオバケスポットの教室なのか?」
「はい。そうです。窓の鍵は開いていますから、どうぞ中をご覧になって下さい」

 ユーリーが教室の窓のそばに立った。見た感じ、普通の感じがする。そこで、ユーリーが窓に手を掛けて開けようとすると、がたついているのか、なかなか開けられない。
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