682 / 938
20-3
しおりを挟む
ユーリーが車屋さんに行くのは急に決まったことでは無く、1週間前に決まったことだ。その時、黒崎は自分も行きたそうにしていた。いくらお義父さんが付いていくとは言え、細かな部分で困ったことがありそうだと思ったからに違いない。ユーリーは8歳までこの国で育ったが、後はドイツにいた。“日本語ペラペラの外国人”だが、販売店によっては戸惑うかも知れないし、本人だって困ることがあるかも知れない。それに、お義父さんは昔の人だから、若い人と話が合わないかも知れない。
「黒崎さん。あんた、一緒に行きたいんじゃ無いの?こっちには聡太郎君がいるから、そっちに行って良いよ」
「いや、お前の方に行く」
「お義父さん、一緒に行ってもらったら?」
「私達は2人で構わない。これでも車のことは知っている」
「そう?ユーリー。全部の店に行くの?」
「いや、1カ所だけでいい。これにしたい」
「ふうん……」
ユーリーが椅子に座り、俺にパンフレットを広げて見せた。そこにはいかにも車ですという写真が載っていた。俺は見ても分からない。これでは男失格だと言われるだろうか。大学の授業で取り扱った地質の話なら興味がわく。人の興味の対象は様々だと思う。だから、胸を張っておくことにした。
「ユーリー。この車にしたいポイントはどこ?」
「かっこいいからだ」
「この間見せてもらったパンフレットにも良さそうな車が載っていたね」
「どれも大きな車だ。僕の場合はそう大きくなくて良い。隆さんの車も良いと思ったけど、どれも大きい」
「そうでもないよ。乗ってみなさい。私の車を乗ってくれ。心霊スポットに行ったときに乗った車がいいだろう。そんなに古くない。かっこいいだろう」
「そうだけど。僕は自分の車がほしい」
「お前が乗りなさい。いいから。販売店に行っても、私の車を選ぶと思うぞ。最近のデザインは……」
「ふうん……」
お義父さんの話が始まった。結構車好きだと知ったのは最近だ。今はもう自分で運転しなくなって、車庫に入れっぱなしだ。時々一貴さんが運転して動かしたり、大勢で出かけるときは黒崎が運転して使っている。だから、そんなに車に対して思い入れは無いのかと思っていた。磨くのも黒崎任せだからだ。
すると、ユーリーが二葉の方を見た。二葉の方はドキッとした顔をしている。車の運転免許を取れと言われるからだろう。彼女はおっちょこちょいだから、そういう面を気にして、自動車学校に行こうとしない。それでなくても忙しい。学校に通うことになったら秘書のバイトを減らさないといけないだろう。2週間ぐらいで卒業できると聞いたことがあるが、順調に進んでの話だ。二葉はそれに自信が無くて、かっこ悪いところを見られたくなくて、車の話題が出たときは気配を消している。しかし、今日はユーリーがツッコんだ。
「二葉。免許を取ったらどうだ?もしも撃たれそうになった時、車で逃げられる」
「どんな家だよ。俺は免許は要らないよ。電車でいいからさ」
「乗れると便利だぞ。ドイツに行ったら車がいい。早めに取っておけ。その分、上達が早い」
「うん……」
二葉は今、進路に悩んでいる。志乃さんのことを追いかけてスイスまでは行けなくても、近くのドイツに行こうかと思っている。そこで、お義父さんがバーテルスビスケット会社への転勤を考えさせている。大学ではドイツ語専攻をしていたから、そこそこ話せる。去年の夏にドイツに行ったときも、そんなに困っていなかったそうだ。それにはノアの家族のフォローや、エミリアさん達のサポートのおかげもあったに違いない。だから、ドイツに行っても心強い味方がいるから大丈夫だ。
しかし、二葉はこう考えている。高齢のお義父さんのことを置いていけないのだと。それに、倉口さんのことやママのこともある。朝陽のことだって心配している。そこを黒崎が取っ払ってやりたいと考えて、またドイツに遊びに行けと言って、夏休みの旅行を勧めているところだ。それが免許取得の学校通いになるかも知れないと思った。
「分かったよーーー。俺、免許を取りに行くよーー。取るだけで良い?」
「ああ、まずは取れ」
「はーーい」
「へえーー。決まったね!黒崎さんがいくら言っても聞かなかったのに」
これで二葉の自動車学校通いが決まった。ユーリーの言うことなら聞くこともよく分かった。2人は良いコンビだ。過去世において兄弟だったのかと、月島さんのようなことを考えながらパンフレットを見た。そして、朝ご飯が運ばれてきて、洋食のスクランブルエッグの良い匂いを嗅いで食欲が刺激されて、みんなと一緒に食べ始めた。
「黒崎さん。あんた、一緒に行きたいんじゃ無いの?こっちには聡太郎君がいるから、そっちに行って良いよ」
「いや、お前の方に行く」
「お義父さん、一緒に行ってもらったら?」
「私達は2人で構わない。これでも車のことは知っている」
「そう?ユーリー。全部の店に行くの?」
「いや、1カ所だけでいい。これにしたい」
「ふうん……」
ユーリーが椅子に座り、俺にパンフレットを広げて見せた。そこにはいかにも車ですという写真が載っていた。俺は見ても分からない。これでは男失格だと言われるだろうか。大学の授業で取り扱った地質の話なら興味がわく。人の興味の対象は様々だと思う。だから、胸を張っておくことにした。
「ユーリー。この車にしたいポイントはどこ?」
「かっこいいからだ」
「この間見せてもらったパンフレットにも良さそうな車が載っていたね」
「どれも大きな車だ。僕の場合はそう大きくなくて良い。隆さんの車も良いと思ったけど、どれも大きい」
「そうでもないよ。乗ってみなさい。私の車を乗ってくれ。心霊スポットに行ったときに乗った車がいいだろう。そんなに古くない。かっこいいだろう」
「そうだけど。僕は自分の車がほしい」
「お前が乗りなさい。いいから。販売店に行っても、私の車を選ぶと思うぞ。最近のデザインは……」
「ふうん……」
お義父さんの話が始まった。結構車好きだと知ったのは最近だ。今はもう自分で運転しなくなって、車庫に入れっぱなしだ。時々一貴さんが運転して動かしたり、大勢で出かけるときは黒崎が運転して使っている。だから、そんなに車に対して思い入れは無いのかと思っていた。磨くのも黒崎任せだからだ。
すると、ユーリーが二葉の方を見た。二葉の方はドキッとした顔をしている。車の運転免許を取れと言われるからだろう。彼女はおっちょこちょいだから、そういう面を気にして、自動車学校に行こうとしない。それでなくても忙しい。学校に通うことになったら秘書のバイトを減らさないといけないだろう。2週間ぐらいで卒業できると聞いたことがあるが、順調に進んでの話だ。二葉はそれに自信が無くて、かっこ悪いところを見られたくなくて、車の話題が出たときは気配を消している。しかし、今日はユーリーがツッコんだ。
「二葉。免許を取ったらどうだ?もしも撃たれそうになった時、車で逃げられる」
「どんな家だよ。俺は免許は要らないよ。電車でいいからさ」
「乗れると便利だぞ。ドイツに行ったら車がいい。早めに取っておけ。その分、上達が早い」
「うん……」
二葉は今、進路に悩んでいる。志乃さんのことを追いかけてスイスまでは行けなくても、近くのドイツに行こうかと思っている。そこで、お義父さんがバーテルスビスケット会社への転勤を考えさせている。大学ではドイツ語専攻をしていたから、そこそこ話せる。去年の夏にドイツに行ったときも、そんなに困っていなかったそうだ。それにはノアの家族のフォローや、エミリアさん達のサポートのおかげもあったに違いない。だから、ドイツに行っても心強い味方がいるから大丈夫だ。
しかし、二葉はこう考えている。高齢のお義父さんのことを置いていけないのだと。それに、倉口さんのことやママのこともある。朝陽のことだって心配している。そこを黒崎が取っ払ってやりたいと考えて、またドイツに遊びに行けと言って、夏休みの旅行を勧めているところだ。それが免許取得の学校通いになるかも知れないと思った。
「分かったよーーー。俺、免許を取りに行くよーー。取るだけで良い?」
「ああ、まずは取れ」
「はーーい」
「へえーー。決まったね!黒崎さんがいくら言っても聞かなかったのに」
これで二葉の自動車学校通いが決まった。ユーリーの言うことなら聞くこともよく分かった。2人は良いコンビだ。過去世において兄弟だったのかと、月島さんのようなことを考えながらパンフレットを見た。そして、朝ご飯が運ばれてきて、洋食のスクランブルエッグの良い匂いを嗅いで食欲が刺激されて、みんなと一緒に食べ始めた。
0
あなたにおすすめの小説
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
黒獅子の愛でる花
なこ
BL
レノアール伯爵家次男のサフィアは、伯爵家の中でもとりわけ浮いた存在だ。
中性的で神秘的なその美しさには、誰しもが息を呑んだ。
深い碧眼はどこか憂いを帯びており、見る者を惑わすと言う。
サフィアは密かに、幼馴染の侯爵家三男リヒトと将来を誓い合っていた。
しかし、その誓いを信じて疑うこともなかったサフィアとは裏腹に、リヒトは公爵家へ婿入りしてしまう。
毎日のように愛を囁き続けてきたリヒトの裏切り行為に、サフィアは困惑する。
そんなある日、複雑な想いを抱えて過ごすサフィアの元に、幼い王太子の世話係を打診する知らせが届く。
王太子は、黒獅子と呼ばれ、前国王を王座から引きずり降ろした現王と、その幼馴染である王妃との一人息子だ。
王妃は現在、病で療養中だという。
幼い王太子と、黒獅子の王、王妃の住まう王城で、サフィアはこれまで知ることのなかった様々な感情と直面する。
サフィアと黒獅子の王ライは、二人を取り巻く愛憎の渦に巻き込まれながらも、密かにゆっくりと心を通わせていくが…
妖精です、囲われてます
うあゆ
BL
僕は妖精
森で気ままに暮らしていました。
ふと気づいたら人間に囲まれてました。
でもこの人間のそばはとても心地いいし、森に帰るタイミング見つからないなぁ、なんて思いながらダラダラ暮らしてます。
__________
妖精の前だけはドロ甘の冷徹公爵×引きこもり妖精
なんやかんやお互い幸せに暮らします。
守り守られ
ほたる
BL
主治医 望月診療所の双子医師
患者 瀬咲朔
腸疾患・排泄障害・下肢不自由
看護師
ベテラン山添さん
準主人公 成海真幌 腸疾患・排泄障害・てんかん
木島 尚久 真幌の恋人同棲中
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
きっと必ず恋をする~初恋は叶わないっていうけど、この展開を誰が予想した?~
野々乃ぞみ
BL
渡辺 真詞(わたなべ まこと)は小さい頃から人ではないモノが見えた。
残念ながら話もできたし、触ることもできた。
様々なモノに話しかけられ、危ない目にもあってきた。
そんなとき、桜の下で巡(めぐる)に出会った。
厳しいけど優しい巡は特別な存在になった。
きっと初恋だったのに、ある日忽然と巡は消えた。
それから五年。
地元から離れた高校に入った十六歳の誕生日。
真詞の運命が大きく動き出す。
人とは違う力を持つ真詞が能力に翻弄されつつも、やっと再会した巡と恋をするけど別れることになる話。(前半)
別れを受け入れる暇もなくトレーニングが始まり、事件に巻き込まれて岬に好かれる話。(後半)
・前半 巡(人外)×真詞
・後半 岬(人間)×真詞
※ 全くの別人ではありませんが、前半と後半で攻めが変わったと感じるかもしれません。
※ キスを二回程度しかしないです。
※ ホラーではないつもりですが、途中に少し驚かすようなシーンがあります。ホラーのホの字もダメだという方は自己判断でお願いします。
※ 完結しました。遅くなって申し訳ありません。ありがとうございました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる