青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

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 そして、時が過ぎ、みんなが黒崎家に集まり、賑やかになっている。これでママまで黒崎家に訪ねてきたら、お義父さんはどんなになるだろうか。血圧が高くなりすぎて倒れてしまいそうだ。それだけ二人が顔を合わせるのは禁忌といってもいいほどだ。しかし、殺害予告がされた者同士、協力し合った方が良くて、二人の子供の親として、もう何も関係ありませんということができなくなっている。

 最近、お義父さんとママが連絡を取り合ったのは、リリナさんの件だった。強引なことを黒崎に頼むママにお義父さんが怒って電話を掛けたのが最後だった。着信拒否にするわけも無く、ママはきちんと電話を取ってお義父さんと話をしている。そこは大人だと思った。しかし、二人は大喧嘩になった。出来ればこのまま会いたくないし話したくも無かったと、はっきりとママがお義父さんに言ったからだ。お義父さんとしては必要だから電話を掛けているわけで、しかもママの方が悪いわけで、散々だと言っていた。そして、ママの方も散々だと言っていた。

「久弥。お義父さんってね、面倒見が良いんだ。それなのに、その手を払い除けるようにされて、ママに対して怒っているし、泣きたい気持ちなんだ」
「それは分かるぞ。このまま黙って見ていられないという気持ちで動いた結果だ。烏丸さんには真摯に受け止めてもらいたかったんだろう。しかしだな、なんだっか。くそじじい、黙っていなさいよだったか?」
「そうなんだよ。ママがそんな言い方をしたんだよ」
「それは怒るぞ。火に油を注ぐような発言だ。俺のところは菅野さんは親父に会おうとしない。もう関係は切れていると言っていた。本当は俺にも会いたくないだろう。聡太郎には会いたそうにしていたけどな」
「それはそれなんじゃないのかな。離婚したらもう会わないよ。子供だって面会しなくなるんじゃないの?」
「その家によって違う。俺には今のお母さんが居るから、生みの母親はいらないんだ。でも、黒崎さんはそこまで思っていないだろう。さすがだ。度量がある」
「ママのことが好きなんだよ。朝陽だって好きなんだよ。なんかね、男みたいな感じが良いんだってさ。俺もそう感じることがあるよ。パッと見たときに、男の人みたいだって思うときがあったんだ」
「ああーーー。それは二葉君に関わっているぞ。子供を産んでいても、自分が男かも知れないし、性別も無いかも知れないと思う女性がいるそうだ。黒崎家のお父さんのとの喧嘩のことを聞くと、男同士に思えなくも無い」
「そう思う?俺もそう思うんだ。黒崎さんまで同じ事を言っていてさ。もしかして男なんじゃないかって、聞きたそうにしていたんだ。でも、そこまで深入りして聞きたくないって言って、黒崎さん、聞けずじまいなんだ」

 もしかしたら、ママが男性かも知れない。それは去年の秋から思っていたことだ。どうしても俺の母と印象を比べてしまう。母は女の人といった感じだ。しかし、ママは違う。同性の匂いがすると思っている。それに、二葉が自分が男だと言っているから、もしかしたら、ママもそうなのかも知れないという思いが浮き上がっていた。そして、それを黒崎には言えずにいたが、ママの浮気癖を知るところになり、そのエピソードが、まるで女にだらしない男そのもののような印象で、朝陽が、ママはそうなのかも知れないと言い出した。

 そこで、俺もそう思っていることを口にした。その時の黒崎は苦虫をかみつぶしたような顔であり、なんて面倒な人だろうと言い、ため息をついていた。そして、黒崎も自分もそう思っていると打ち明けてくれた。高校の先生から養育費を受け取っていた件について、そう思ったそうだ。DNA鑑定すらしていないし関係が切れている相手から受け取ることは、普通の女性が出来ることでは無いという意見だった。女性は拒むものだというのが黒崎の言い分だった。しかし、男であれば割り切って貢がせるということはあるだろうと言っていた。そのバランスに疑問があり、ママの性別を疑っていたというわけだ。

「ふう。いずれにせよ、俺は菅野さんとは二度と連絡を取りたくない。だから、黒崎さんは偉いなと思うぞ」
「運命だなって思うよ。人それぞれだね」

 そう言って、俺は久弥の隣に座った。メンバーは今、楽器の置き場所のところに集まっている。これからドラムとギター、ベースの収録があるからだ。その間、俺は休憩させてもらう。昼ご飯は長谷部さんが買ってきてくれたお弁当だ。もちろん、みんなもそれぞれ休憩する。

 よっこらせ。俺はまた後ろの席に移動した。そして、傍らに置かれたお弁当を手にして、蓋を開けた。そこには幕の内弁当があり、人生色々と思いながら匂いを嗅いで、箸を割り、食べ始めたのだった。
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