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13時半。
風林と電話で話しているところだ。今日は休暇を取ったそそうで、会社の近くの公園からかけているそうだ。職場で何かあったのだろうか。それをストレートに聞くと、休みの消化のためだということだった。しかし、もし何かあっても言わないだろうとは思っている。
「風林君。色々と詮索してすまない。公園からかけているなら、時間をずらして良いぞ。家に帰った後でかけ直してくれ。俺に気を遣ったんだろう」
「いえ。ちょうど散歩に出たかったのでいいんです。ここは広い公園で、木陰もあってけっこう気持ちが良いんです」
「暑いだろう。店は開いていないのか?」
「ありますけど、中だと話しづらいんです。電話していると、じろじろ見られてしまって……」
「君は声が大きいからだろう。手短に話したいが、ゆっくり話を聞きたい。ここに来ないか?」
「今からですか?」
「ああ。そこからタクシーで15分あれば来られるだろう」
「それもいいですね。たまにはタクシーに乗りたいです。よく俺が車に乗ってきていないって分かりましたね」
「予想した。君の会社なら家から電車で来た方が早い。ずっと変わっていないんだろう?学生時代のアパートと同じ場所だと言っていたじゃ無いか」
「ほんの少し話しただけなのに、よく覚えてくれていましたね」
「ヘッドハンティングのために君の資料を読ませて貰ったし、何度も話しているじゃないか」
風林と話したのはこれで5回目だ。ほとんどが、業務のことについてだった。黒崎製菓の書類を運んでもらうための打ち合わせに俺も関わった。その中で、今住んでいる場所や家族構成などの世間話を聞いてある。風林は大学時代と同じアパートに住み続けており、そこから会社に出勤していること、一人暮らしだということ、車は運良くアパートの駐車場が空いており、停められていること。その3点を聞いてある。それなら車通勤かと思ったが、駅からも近く、会社までそう遠くないルートで通勤できることから、電車通勤を選んだと想像した。
「さすがは副社長ってい感じですね。仕事が出来る人というイメージです」
「それはありがとう。家に帰れば尻に敷かれている男だ。やっぱり何かあったんだろう」
「何もないです」
「いや、あったんだろう。そうやって公園から電話を掛けてきていることが引っかかる。ここに来い。16時までなら何時でも良いぞ」
「そうですか……。今からだと14時15分ぐらいになります。俺、スーツじゃないですよ」
「仕事着でも普段着でも構わない。着いたら受付に声を掛けてくれ。部屋は28階にある」
「はい……」
電話口で風林の力の無い返事が聞こえた。やっぱり何かがおかしい。こうして本音を出してもらえるのはありがたいが、彼にしては珍しいことだと思った。それは初対面の時から俺がしつこく付きまとったおかげだろう。この人には遠慮が要らないと思わせたら成功だ。そして、俺は成功していると感じている。
そこで、ふと、楠木朔ノ介という名前が思い浮かんだ。引っ越しのアザレアの営業担当者だ。先日の荷物の運搬の際には別の担当者と顔を合わせたから、会っていない。晴海兄さんの引っ越しのプランを立てた人物ということで覚えている。あの荷物の多さに悲鳴を上げること無くプランを立てて、スムーズに運び出しができた。彼こそデキる男というものだろう。
「楠木君だったか。彼には今回の件を話したのか?」
「いえ。まだです……。俺、今からそちらに向かいます」
「そうか。そうしてくれ。そう急がなくても構わない。時間はまだある。気を付けてきてくれ」
「はい。ありがとうございます。また後ほど」
「ああ。待っている」
風林との電話を言えた。先ほど母が話していたとおり、ビデオ面談でもいいのだが、俺としては直接会う方が良い。実際にここに通勤するとなったらイメージもできる。本人のためでもあり、こちらのためにもなる。そう思って、俺はそばにいる柳本に声を掛けた。
「柳本君。茶の用意をしておいてくれ。風林君には冷たい物と温かい物の両方が必要だ」
「かしこまりました。冷たく冷やしたタオルを用意してあります」
「そうだな。それがあった……」
思わず笑い声がもれた。これは夏樹から聞いたアイデアだ。タオルを濡らして冷蔵庫に保管し、外から帰ってきたら顔に当てるという物だ。俺は子供の頃に使った経験がある。夏樹も同じで、先日それを思い出し、ここの部屋でも取り入れることにした。
今日の都内の気温はいつも通り高い。この中を風林はやってくる。一体何があったのだろうか。それを聞くまでに30分ある。なるべく俺は温和でいようと息をつき、パソコン画面で風林の昔のエントリーシートを開いて、彼が来るまでに見ていようと思った。
風林と電話で話しているところだ。今日は休暇を取ったそそうで、会社の近くの公園からかけているそうだ。職場で何かあったのだろうか。それをストレートに聞くと、休みの消化のためだということだった。しかし、もし何かあっても言わないだろうとは思っている。
「風林君。色々と詮索してすまない。公園からかけているなら、時間をずらして良いぞ。家に帰った後でかけ直してくれ。俺に気を遣ったんだろう」
「いえ。ちょうど散歩に出たかったのでいいんです。ここは広い公園で、木陰もあってけっこう気持ちが良いんです」
「暑いだろう。店は開いていないのか?」
「ありますけど、中だと話しづらいんです。電話していると、じろじろ見られてしまって……」
「君は声が大きいからだろう。手短に話したいが、ゆっくり話を聞きたい。ここに来ないか?」
「今からですか?」
「ああ。そこからタクシーで15分あれば来られるだろう」
「それもいいですね。たまにはタクシーに乗りたいです。よく俺が車に乗ってきていないって分かりましたね」
「予想した。君の会社なら家から電車で来た方が早い。ずっと変わっていないんだろう?学生時代のアパートと同じ場所だと言っていたじゃ無いか」
「ほんの少し話しただけなのに、よく覚えてくれていましたね」
「ヘッドハンティングのために君の資料を読ませて貰ったし、何度も話しているじゃないか」
風林と話したのはこれで5回目だ。ほとんどが、業務のことについてだった。黒崎製菓の書類を運んでもらうための打ち合わせに俺も関わった。その中で、今住んでいる場所や家族構成などの世間話を聞いてある。風林は大学時代と同じアパートに住み続けており、そこから会社に出勤していること、一人暮らしだということ、車は運良くアパートの駐車場が空いており、停められていること。その3点を聞いてある。それなら車通勤かと思ったが、駅からも近く、会社までそう遠くないルートで通勤できることから、電車通勤を選んだと想像した。
「さすがは副社長ってい感じですね。仕事が出来る人というイメージです」
「それはありがとう。家に帰れば尻に敷かれている男だ。やっぱり何かあったんだろう」
「何もないです」
「いや、あったんだろう。そうやって公園から電話を掛けてきていることが引っかかる。ここに来い。16時までなら何時でも良いぞ」
「そうですか……。今からだと14時15分ぐらいになります。俺、スーツじゃないですよ」
「仕事着でも普段着でも構わない。着いたら受付に声を掛けてくれ。部屋は28階にある」
「はい……」
電話口で風林の力の無い返事が聞こえた。やっぱり何かがおかしい。こうして本音を出してもらえるのはありがたいが、彼にしては珍しいことだと思った。それは初対面の時から俺がしつこく付きまとったおかげだろう。この人には遠慮が要らないと思わせたら成功だ。そして、俺は成功していると感じている。
そこで、ふと、楠木朔ノ介という名前が思い浮かんだ。引っ越しのアザレアの営業担当者だ。先日の荷物の運搬の際には別の担当者と顔を合わせたから、会っていない。晴海兄さんの引っ越しのプランを立てた人物ということで覚えている。あの荷物の多さに悲鳴を上げること無くプランを立てて、スムーズに運び出しができた。彼こそデキる男というものだろう。
「楠木君だったか。彼には今回の件を話したのか?」
「いえ。まだです……。俺、今からそちらに向かいます」
「そうか。そうしてくれ。そう急がなくても構わない。時間はまだある。気を付けてきてくれ」
「はい。ありがとうございます。また後ほど」
「ああ。待っている」
風林との電話を言えた。先ほど母が話していたとおり、ビデオ面談でもいいのだが、俺としては直接会う方が良い。実際にここに通勤するとなったらイメージもできる。本人のためでもあり、こちらのためにもなる。そう思って、俺はそばにいる柳本に声を掛けた。
「柳本君。茶の用意をしておいてくれ。風林君には冷たい物と温かい物の両方が必要だ」
「かしこまりました。冷たく冷やしたタオルを用意してあります」
「そうだな。それがあった……」
思わず笑い声がもれた。これは夏樹から聞いたアイデアだ。タオルを濡らして冷蔵庫に保管し、外から帰ってきたら顔に当てるという物だ。俺は子供の頃に使った経験がある。夏樹も同じで、先日それを思い出し、ここの部屋でも取り入れることにした。
今日の都内の気温はいつも通り高い。この中を風林はやってくる。一体何があったのだろうか。それを聞くまでに30分ある。なるべく俺は温和でいようと息をつき、パソコン画面で風林の昔のエントリーシートを開いて、彼が来るまでに見ていようと思った。
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