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19時。
聡太郎のギターフレーズが鳴り響いて、今日の収録が終わった。ツインギターのアレンジが無事済んで、悠人がふうっと息を吐いた。彼の分はもう撮り終わっている。今日のところはこれでいいと思う。引っかかっている部分は聡太郎のアイデアにより解消されて、悠人の昼ご飯の後の収録はスムーズに進んだ。
「ね、悠人。俺が言ったとおりだっただろ?ちゃんと休憩した方が良いアイデアが浮かぶってさ。それはメンバー全員に言えることなんだよ」
「俺、リーダー失格だなあ」
「そんなことはないよ。悠人が一生懸命なんだって、みんな分かっているよ。琉芯だって、おやつを食べずにやっていたんだ。でも、食べた方が良いドラムになったって言っているよ。ね、食べて良かっただろ?」
「はい。俺、おやつがあると集中力が途切れると思っていたんですけど、反対でした。今日は長丁場だったから、食べて良かったです」
そう言って、琉芯がドラムスティックを指先で回した。俺はこれができない。どうやっているのか見せてもらったが、なかなか上達できずにいる。琉芯は19歳だ。俺達よりも若いが、音楽歴は長いから色んなことを知っている。ステージで演奏はしてもアルバム収録に参加するのは初めてだということで緊張していた。しかし、メンバー全員がそうなるといけないと思ったそうで、一番の若手としてギャグを飛ばしてくれていた。そのおかげもあってみんなが緊張の糸がほどけた。
「琉芯。帰りは乗って行けよ。その方が早く家に帰れるからさ」
「でも、俺、遠いですよ?」
「いいよ。黒崎さんがそうしろって言うんだ。こっちで家を借りるまで間もなくだね。一人暮らしをするのは楽しみ?」
「はい。楽しみです。IKUの寮を貸してもらって、なんか悪いです。本当は自分で見つけないといけないのに」
「そうした方が良いそうだよ。琉芯はまだ19歳だもん。何かあるといけないからさ」
琉芯の家は両親と同居であり、都内近郊にある。仕事で遅くなること、移動時間のこと、生活時間のずれのことがあるため、一人暮らしを希望していた。その願いが叶ってアパートを見つけようとしていた。そこで、長谷部さんがIKUの寮を探してくれて、一部屋見つかった。一人暮らし専用の部屋だ。都内で完全な一人暮らしには琉芯の両親が反対したため、そうなった。長谷部さんもマネージャーの飯野さんも賛成している。誰かがいた方が良いからだ。
琉芯とを心配していた両親からも良い返事が聞けた。そうでなかったら、一人暮らしをさせるつもりはなかったという。実は、琉芯の両親は、彼の言い方をすれば過保護、過干渉気味なのだという。子供の頃からステージに立ってきた琉芯は大人の中に混ざっていて、年齢よりも大人びているところがあるのだが、なかなか彼一人に選択を任せてくれないのだという。
それは、IKUとの所属契約の場でも影響があった。琉芯としては音楽を続けるつもりは無くて、高校を卒業したら建設会社で働くように準備をして来ていた。しかし、親としては音楽を続けさせるつもりでいて、大学にも入れるように話をしていた。そこに、お義父さんがいるアーティスト支援団体との関わりと、久弥が彼のことを見つけ出したことで進路が変わった。バンドに所属しないかと話が出て、琉芯よりも先に両親がイエスと返事を出した。そして、彼のことを説得して現在に至る。
琉芯がやる気が無いかと言えば、決してそんなことはない。しっかりとしたドラムテクニックを持っている。そして、年齢よりもずっと上に見えるたたずまいから、苦労してきたのだろうと思っている。特に両親との関係だ。息苦しいと言っていた。
久弥が聞いた話では、こういうものがあった。琉芯が16歳の時に、もうドラムを叩きたくないと両親に宣言したとき、家庭内が冷え凍るという体験をしたことがあるそうだ。そこで琉芯は、ドラムを叩かない自分は価値がなくて、上手にステージを務められることで愛されるのだと感じたのだという。それは条件付きの愛情だ。そして、IKUとの関わりには必ず両親が割り込んでくる状態で、何でも聞かないといけなくなっている。琉芯は嫌がっている。
過保護と言えば俺もそうだが、黒崎の発言と比べると若干違いがある。久弥はそれを理解している。まるで商品のように息子に接していると感じているそうだ。実際にそういう親は存在していて、音楽が嫌になってやめてしまう子を何人も見てきたそうだ。それか、続けたとしても、親とは完全な別離の人生を歩むそうだ。
聡太郎のギターフレーズが鳴り響いて、今日の収録が終わった。ツインギターのアレンジが無事済んで、悠人がふうっと息を吐いた。彼の分はもう撮り終わっている。今日のところはこれでいいと思う。引っかかっている部分は聡太郎のアイデアにより解消されて、悠人の昼ご飯の後の収録はスムーズに進んだ。
「ね、悠人。俺が言ったとおりだっただろ?ちゃんと休憩した方が良いアイデアが浮かぶってさ。それはメンバー全員に言えることなんだよ」
「俺、リーダー失格だなあ」
「そんなことはないよ。悠人が一生懸命なんだって、みんな分かっているよ。琉芯だって、おやつを食べずにやっていたんだ。でも、食べた方が良いドラムになったって言っているよ。ね、食べて良かっただろ?」
「はい。俺、おやつがあると集中力が途切れると思っていたんですけど、反対でした。今日は長丁場だったから、食べて良かったです」
そう言って、琉芯がドラムスティックを指先で回した。俺はこれができない。どうやっているのか見せてもらったが、なかなか上達できずにいる。琉芯は19歳だ。俺達よりも若いが、音楽歴は長いから色んなことを知っている。ステージで演奏はしてもアルバム収録に参加するのは初めてだということで緊張していた。しかし、メンバー全員がそうなるといけないと思ったそうで、一番の若手としてギャグを飛ばしてくれていた。そのおかげもあってみんなが緊張の糸がほどけた。
「琉芯。帰りは乗って行けよ。その方が早く家に帰れるからさ」
「でも、俺、遠いですよ?」
「いいよ。黒崎さんがそうしろって言うんだ。こっちで家を借りるまで間もなくだね。一人暮らしをするのは楽しみ?」
「はい。楽しみです。IKUの寮を貸してもらって、なんか悪いです。本当は自分で見つけないといけないのに」
「そうした方が良いそうだよ。琉芯はまだ19歳だもん。何かあるといけないからさ」
琉芯の家は両親と同居であり、都内近郊にある。仕事で遅くなること、移動時間のこと、生活時間のずれのことがあるため、一人暮らしを希望していた。その願いが叶ってアパートを見つけようとしていた。そこで、長谷部さんがIKUの寮を探してくれて、一部屋見つかった。一人暮らし専用の部屋だ。都内で完全な一人暮らしには琉芯の両親が反対したため、そうなった。長谷部さんもマネージャーの飯野さんも賛成している。誰かがいた方が良いからだ。
琉芯とを心配していた両親からも良い返事が聞けた。そうでなかったら、一人暮らしをさせるつもりはなかったという。実は、琉芯の両親は、彼の言い方をすれば過保護、過干渉気味なのだという。子供の頃からステージに立ってきた琉芯は大人の中に混ざっていて、年齢よりも大人びているところがあるのだが、なかなか彼一人に選択を任せてくれないのだという。
それは、IKUとの所属契約の場でも影響があった。琉芯としては音楽を続けるつもりは無くて、高校を卒業したら建設会社で働くように準備をして来ていた。しかし、親としては音楽を続けさせるつもりでいて、大学にも入れるように話をしていた。そこに、お義父さんがいるアーティスト支援団体との関わりと、久弥が彼のことを見つけ出したことで進路が変わった。バンドに所属しないかと話が出て、琉芯よりも先に両親がイエスと返事を出した。そして、彼のことを説得して現在に至る。
琉芯がやる気が無いかと言えば、決してそんなことはない。しっかりとしたドラムテクニックを持っている。そして、年齢よりもずっと上に見えるたたずまいから、苦労してきたのだろうと思っている。特に両親との関係だ。息苦しいと言っていた。
久弥が聞いた話では、こういうものがあった。琉芯が16歳の時に、もうドラムを叩きたくないと両親に宣言したとき、家庭内が冷え凍るという体験をしたことがあるそうだ。そこで琉芯は、ドラムを叩かない自分は価値がなくて、上手にステージを務められることで愛されるのだと感じたのだという。それは条件付きの愛情だ。そして、IKUとの関わりには必ず両親が割り込んでくる状態で、何でも聞かないといけなくなっている。琉芯は嫌がっている。
過保護と言えば俺もそうだが、黒崎の発言と比べると若干違いがある。久弥はそれを理解している。まるで商品のように息子に接していると感じているそうだ。実際にそういう親は存在していて、音楽が嫌になってやめてしまう子を何人も見てきたそうだ。それか、続けたとしても、親とは完全な別離の人生を歩むそうだ。
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