青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

文字の大きさ
740 / 938

22-7

しおりを挟む
 エミリアさん達が部屋に向かった。荷物をほどくためだ。その後でみんなで昼ご飯を食べることになる。俺は何か手伝えることは無いかと思って声を掛けたが、ゆっくりしてくれと言われてしまった。二葉はエミリアさんの部屋について行っている。
 
「黒崎さん。エミリアさんもアレクシスさんも眠たいんじゃかな?ドイツは夜中だよ」
「飛行機の中で少し寝てきたそうだ。今ここで寝たら昼夜逆転になる」
「そっか。無理に起きているんだね。遠い国から来ると大変だね」

 俺達は今、リビングにいる。黒崎がテレビを付けたら、情報番組をやっていた。そして、今夜の番組の宣伝が流れた。俺と聡太郎がナレーションを担当した心霊番組のことだ。この時間に宣伝をするとは聞いていたが、見られると思っていなかった。ちょうどタイミングが良かったと思った。

「黒崎さん。ユーリー、見てよ。今夜の番組の宣伝だよ」
「ああ。君が映っているじゃないか。へえーー。収録風景か」

 ユーリーが興味深そうに画面を見た。テレビ画面には、俺と聡太郎が並びあっている風景が映し出されている。収録風景だ。テレビの司会者が今夜の見所のポイントを絞って紹介してくれて、コメンテーターからいくつか質問があった。

「夏樹。今夜はみんなでみよう」
「そうだね。19時からだから、晩ご飯の時間だよ。夏休みスペシャル番組。面白いって言ってもらえるといいなあ」

 すると、番組が切り替わり、リリナさんの映像に変わった。最近雑誌の表紙に登場する回数が多く、ブームが起きているということで、この番組で取り上げたいということだった。雑誌は女性雑誌が多い。メイクやファッションに注目が集まり、テレビにも登場する回数が増えるだろうと紹介され始めた。

「黒崎さん。リリナさんのことをやっているよ」
「そうだな」
「俺は妬いていないよ。コモモ・プロモーションから移籍したなんて、業界に喧嘩売っているみたいなものだって言われているんだ。ママが何とかしたいって思ったのも無理はないよ」
「昔のことだ。今の俺には関係ない」
「それでもさ。食事をしたことだけあるって記者に答えるより、対談の方がいいって。ねえ、ユーリー。あんたもそう思うだろ?」
「ああ。仲がいいという印象を持ってもらえると思う。彼女、本も出すと思う。いくつかの出版社と交渉に入っているよ」
「そうなんだね。ママが手がけるリリナブーム。成功すると良いね。ん?なんだよ、黒崎さん、そんな顔をして……」

 黒崎の機嫌が良くない。俺がリリナさんの名前を出したからだ。彼女が真琴企画に移籍する前に所属していた事務所はコモモプロモーションという。業界大手のところだ。しかし、仕事の方向性で意見の食い違いがあり、別離の道を選んだわけだが、リリナさんが黒崎との関係を利用したのでは無いかと言われている。わざわざ真琴企画に移籍申し込みをしたからだ。そこで、事務所のマネージャーがリリナさんと面談したときに、黒崎のデート相手だったと打ち明けてきたという。その話がママから伝わったのが昨日の話であり、黒崎が怒っている。

 しかし、俺としてはリリナさんが新天地を求めたのだと思って、何か協力したいと思った。前の事務所との意見の食い違いは本当にあったことで、久弥から聞いた話では、眉をひそめる内容もあった。そんな中、リリナさんは再起をかけたわけだ。それは黒崎との関係を利用するものであっても、その時の彼女には選ぶ物が無かったのだと思った。そう考えられたのは、長谷部さんのおかげだ。

 長谷部さんからすると、黒崎の話題を表に出されるのは避けたかった。だから、リリナさんのことは警戒していたのだが、コモモプロモーションで何があったのかと噂を聞き、同情していた。俺もそうなった。以前の俺ならやきもちを焼いて機嫌が悪くなりそうだが、何か胸がざわざわして、そうならなかった。

 リリナさんは悪い人なのかも知れない。昨日ママから話があったときにそう思って背中が冷たくなったが、今の現状を乗り越えようとするために伝える物を使ったと思って、一体何があったのだろうかと思った。リリナさんに聞くしか分からない。だから、批難はしたくないと思った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

【BL】捨てられたSubが甘やかされる話

橘スミレ
BL
 渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。  もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。  オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。  ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。  特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。  でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。  理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。  そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!  アルファポリス限定で連載中

黒獅子の愛でる花

なこ
BL
レノアール伯爵家次男のサフィアは、伯爵家の中でもとりわけ浮いた存在だ。 中性的で神秘的なその美しさには、誰しもが息を呑んだ。 深い碧眼はどこか憂いを帯びており、見る者を惑わすと言う。 サフィアは密かに、幼馴染の侯爵家三男リヒトと将来を誓い合っていた。 しかし、その誓いを信じて疑うこともなかったサフィアとは裏腹に、リヒトは公爵家へ婿入りしてしまう。 毎日のように愛を囁き続けてきたリヒトの裏切り行為に、サフィアは困惑する。  そんなある日、複雑な想いを抱えて過ごすサフィアの元に、幼い王太子の世話係を打診する知らせが届く。 王太子は、黒獅子と呼ばれ、前国王を王座から引きずり降ろした現王と、その幼馴染である王妃との一人息子だ。 王妃は現在、病で療養中だという。 幼い王太子と、黒獅子の王、王妃の住まう王城で、サフィアはこれまで知ることのなかった様々な感情と直面する。 サフィアと黒獅子の王ライは、二人を取り巻く愛憎の渦に巻き込まれながらも、密かにゆっくりと心を通わせていくが…

妖精です、囲われてます

うあゆ
BL
僕は妖精 森で気ままに暮らしていました。 ふと気づいたら人間に囲まれてました。 でもこの人間のそばはとても心地いいし、森に帰るタイミング見つからないなぁ、なんて思いながらダラダラ暮らしてます。 __________ 妖精の前だけはドロ甘の冷徹公爵×引きこもり妖精 なんやかんやお互い幸せに暮らします。

守り守られ

ほたる
BL
主治医 望月診療所の双子医師 患者 瀬咲朔 腸疾患・排泄障害・下肢不自由 看護師 ベテラン山添さん 準主人公 成海真幌 腸疾患・排泄障害・てんかん 木島 尚久 真幌の恋人同棲中

[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった

ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン モデル事務所で メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才 中学時代の初恋相手 高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が 突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。 昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき… 夏にピッタリな青春ラブストーリー💕

きっと必ず恋をする~初恋は叶わないっていうけど、この展開を誰が予想した?~

野々乃ぞみ
BL
渡辺 真詞(わたなべ まこと)は小さい頃から人ではないモノが見えた。 残念ながら話もできたし、触ることもできた。 様々なモノに話しかけられ、危ない目にもあってきた。 そんなとき、桜の下で巡(めぐる)に出会った。 厳しいけど優しい巡は特別な存在になった。 きっと初恋だったのに、ある日忽然と巡は消えた。 それから五年。 地元から離れた高校に入った十六歳の誕生日。 真詞の運命が大きく動き出す。 人とは違う力を持つ真詞が能力に翻弄されつつも、やっと再会した巡と恋をするけど別れることになる話。(前半) 別れを受け入れる暇もなくトレーニングが始まり、事件に巻き込まれて岬に好かれる話。(後半) ・前半 巡(人外)×真詞 ・後半 岬(人間)×真詞 ※ 全くの別人ではありませんが、前半と後半で攻めが変わったと感じるかもしれません。 ※ キスを二回程度しかしないです。 ※ ホラーではないつもりですが、途中に少し驚かすようなシーンがあります。ホラーのホの字もダメだという方は自己判断でお願いします。 ※ 完結しました。遅くなって申し訳ありません。ありがとうございました。

甘々彼氏

すずかけあおい
BL
15歳の年の差のせいか、敦朗さんは俺をやたら甘やかす。 攻めに甘やかされる受けの話です。 〔攻め〕敦朗(あつろう)34歳・社会人 〔受け〕多希(たき)19歳・大学一年

処理中です...