青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

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22-23

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 午前9時半。

 俺達は今、リビングに居る。応接室でも良かったが、くつろげる場所が良いだろうということで、こっちの部屋にお茶を運んでもらった。この部屋にはアンドリューのキャットタワーがあり、アンがそばで寝そべっている。肩が凝らなくて良いと思った。しかし、2匹を俺の部屋に移動させようかと思ったが、早瀬桟さん達がそのままで良いというからそうさせてもらった。

 エミリアさんが涙を流している。それを早瀬さんが達が慰めて、一体何かあったんですかと聞いた。そこで、菜々子さんが早瀬さんのことを妊娠したときに、バーテルス家で何があったのかが語られた。それはフェリックスさんとエミリアさんの離婚話のことだった。長らく別居しており、しかも、日本とドイツという距離で、もう別れたも同然だろうと当主である叔父さんから言われたそうだ。

 そこで、叔父さんからは離婚しろと勧められたそうだ。エミリアさんはバーテルス家のメンバーであり、バーテルスビスケット会社の役員でもあったが、その状況は変わらないと約束された。生活面ではやっていける。日本にもいられる。お義父さんはずっとここにいていいと言っている。フェリックスさんは暴力的な面がある人で、とても一緒に居られないだろうから、別れてすっきりしろと言われたそうだ。

 しかし、エミリアさんは別れたくなかった。フェリックスさんに愛情はあったからだ。それから、他の誰かに盗られたくないという気持ちが沸き起こり、菜々子さんと戦う姿勢になったそうだ。フェリックスさんの気持ちとしては離婚の意志があった。しかし、積極的なものではなかったという。菜々子さんを愛人にすれば良いからだ。これまでの人と同じようにだ。

 フェリックスさんに恋人との間に子供が出来たのは、早瀬さんが初めてだったそうだ。エミリアさんは動揺したそうだ。菜々子さんに盗られると思った。しかし、フェリックスさんが騙したという罪があり、責任を取って結婚させないといけないというバーテルス家の意志を聞かないといけないと思った。しかし、どうしてもそれができなくて、早瀨家との争いに発展した。

 菜々子さんは妊娠したことは、直接彼女から孝則さんと玲子さんに伝わったわけではない。菜々子さんが勤めていたクラブのお客さんが孝則さんの友達の一人であり、その人から聞いた話だったそうだ。もちろん、相手の男のことを聞いて、早瀨家は憤った。独身だと言って騙されたと分かり、早瀬さんのことをどうするかという話まであった。

 菜々子さんとしては一人で産むと決めて、実際にそうした。早瀨家は戻ってこいと言った。しかし、一旦家を出たのだからということで、一人を貫いた。もちろん、フェリックスさんとも別れた。認知も拒んだ。早瀬さんの実父の欄は空欄だ。自分だけの子供だといって、菜々子さんは早瀬さんのことを大事に育てた。そして、病に倒れた。

 菜々子さんが余命宣告されたことはクラブのお客さんを通じてフェリックスさんに伝わった。当然、お見舞いに来ようとしたが、菜々子さんが拒んだ。そして、早瀬さんのことを孝則さん達に託したわけだ。拓海さんだって養子にしようとしたし、お義父さんだってそうだった。しかし、菜々子さんはお姉さん夫婦を選んだ。

 そこまでの話を聞いて、離婚話を拒んだのがエミリアさんだと改めて知り、愛情という物は不思議だと思った。ユーリーの話を聞いても、お義父さんの話を聞いても、エミリアさん達はいがみ合っている。それなのに、フェリックスさんの方だって積極的に離婚するという意志を見せなかったというのは、責任感が無いと思った。いや、今の家庭を守らないといけないと思ったのか。しかし、それなら浮気をしないはずだ。俺としてはフェリックスさんのことでは腹立たしくなった。

 エミリアさんが泣いているのは、早瀬さんがひとりぼっちになったことを知ったときを思い出したからだ。それから、自分の過去の選択への後悔だ。自分が身を引いておけば良かったのだと言っている。そして、そんなことはありませんよと、早瀬さんが励ましている。
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