青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

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22-27

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 12時半。

 今からお昼ご飯だ。とはいっても、サンドイッチなどの軽食にしてある。夜は大広間でご馳走を食べるから、なるべく昼を軽くしておくという作戦だ。庭の水まきは順調に進み、もうそろそろ終わる頃だ。その頃には庭に出ていないといけない。しかし、その任をアレクシスさんと一貴さんがしてくれているから、任せることにした。

「急いで食べないとな~」
「ワン」
「アン。君のお迎えがもうすぐだよ。良かったね。すぐにやってくれるから」

 もうすぐでアンの美容院の迎えが来る。黒崎が送っていって店で待つというのが定番だったが、最近ではそうではなくて、アンが慣れてきて、迎えの車に乗るようになった。美容院に着いたらすぐにトリミングだ。数匹のワンちゃんが待っていることがあり、順番待ちをしないといけない美容院があるらしいが、アンが行っている店はそうではなくて、着いたらすぐにしてくれる。そして、仕上がったらすぐに送ってきてくれる。この迎えもワンちゃんの家に順番に行くらしいが、今の店の場合は直行するようにして送ってきてくれる。そういうわけで人気が高く、行ったら次の予約を入れないと、なかなか予約が取れない。

「今度の髪型は短いんだよ。暑いからね。短くしようね」
「ワン」

 今回のアンのトリミングの内容は決めてある。全体的に短くする方法だ。似合うだろうかと思って今までやってこなかったスタイルだ。しかし、この暑さにアンがバテてしまい、思い切って短くすることに決めた。

「あ、美容院だ!」

 サンドイッチをアイスコーヒーで流し込んだ。今、門の前に美容院の迎えの車が停まった。そこで俺はセキュリティーシステムから声を掛けて、中に入ってもらうように伝えた。そして、車がこの家の元へ向かい始めるのを見た。

「アン、迎えだよ!」
「ワン」
「さあ、行こうね~」

 わざとテンションを高くしてアンに話しかけた。楽しいんだぞという空気感を作るためだ。そうしないと迎えの車に乗らない。とにかく不安の要素を植え付けてはいけない。迎えの車が来たら何か良いことがあるとか、楽しいことが待っているに違いないと思わせるのがコツだ。

 アンを連れて玄関まで行った。アンドリューにはリビングで待ってもらっている。もしかしたらアンが嫌がって逃げるかも知れないから、咄嗟に抱かないといけないかも知れない。過去に逃亡したことは4回ある。どれも俺が心配そうにしていたからだ。しかし、今回は違う。

「アン、楽しくてたまらないはずだよ~。ワクワクするねえ!」
「ワン」
「え?アンドリューはどこだって?リビングだよ。君が逃亡するかも知れないから、それに備えているんだ。あ、きたきた」

 ピンポーン。

 インターフォンが鳴った。美容院の迎えだ。早速ドアを開けると、キャリーケースを持った男の人がにこやかな笑顔で入ってきた。北山美容室の北山さんだ。アンを担当してくれて3年になる。もうすっかりお馴染みで、アンだって懐いている。

「北山さん。こんにちは!」
「こんにちはーーー。どうもお世話になっておりますーーーー。アントワネットちゃん、こんにちは」

 アンが北山さんを見て尻尾を振った。いつものお兄さんだと分かったからだろう。しかし、北山さんは心が女性だと言っている人だ。たしかに話し方が女性的であり、きめ細かいところまで気がつくのがローザーさんを想像させる。

「今日の送迎は15時半頃になりますーーーー」
「はい。急がないで下さい。この通り、庭はこの騒ぎですけど」
「お庭の水まきですか?大学生風の子達がTシャツを濡らして輝いていましたーーー。オホホホホ」
「北山さんまで変態な発言をやめようよ~。バイトの大学生なんだ」
「オホホホホ。誰か食べようかと思ったんです。お兄さん達も庭に出ていましたね。あの、ユーリーさんみたいな人が居たんだけど、お兄さんですか?」
「はい。アレクシスさんといいます。ユーリーの兄貴です。お母さんのエミリアさんも来ているんですよ」
「賑やかで良いですね。それにしても、もーーーー、可愛い大学生!キャーーー」

 北山さんのテンションが高い。アンも嬉しそうだ。どんなに楽しいことが待っているかという顔をしている。この調子で車に乗せれば良い。そして、北山さんが、黒崎はいないのかと聞いてきた。いつも聞いてくることだ。今日は平日だからいない可能性が高くても聞いてくる。要は、黒崎の情報を仕入れたいということだ。北山さんは黒崎のファンだと公言している。お店の中でも黒崎は人気があるそうで、彼がアンのことを送ってきたときは、誰が対応するかをじゃんけんで決めるという。
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