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北山さんが帰っていく姿を眺めているところだ。アンの頭を撫でた後、彼が車に乗り込んだ。これから一件、ワンちゃんの迎えに行くそうだ。アンの方はというと短い毛になり、気持ちが良いのか、のびのびと身体を伸している。
「アン、良かったね。人相が変わったみたいになったね。ねえ、そう思わない?」
「ああ。そう思う。それにしても、北山さんは抜け目ないなあ」
ユーリーが呆れた声を出した。今、北山さんからプライベートのラインIDが書かれた名刺を受け取ったからだ。もちろん、アレクシスさんにも渡してある。今日のことは運命の出会いであり、逃したくないそうだ。
「ありがとうございましたーーーー」
北山さんが運転席から手を振った。そして、彼の運転する車が発進された。庭はもう撤収作業が済んでいて、大学生達が業者さんの車に乗り込んでいく姿を眺めた。大きな車で来ているから、ここの車寄せではなく、庭の中に停めてもらった。今、一貴さんが大学生達に手を振った。そして、その車も発進された。
「みんな帰っていくねえ」
「今日は一日が終わった気分だ」
アレクシスさんが笑った。名刺を持って、どうしようかなと言っている。連絡を取るのだろうか。俺としては危険な人手は無いと思うから、連絡を取っても良いと思う。アレクシスさんはフリーだし、自由だと思う。さすがは北山さんで、黒崎には名刺を渡したことは無い。カップルには手を出さないと決めているのだろう。
俺がこんな発想を浮かべるのには理由がある。大学を卒業した後、俺の仕事関係に変化があったからだ。事務所内で誰と誰が付き合っているとか、盗られてしまったとか、あの人があの人を好きだとかいう会話が聞こえてくるようになった。今までは長谷部さんが聞こえないようにしていたのだと思う。今はもう大人になり、音楽の幅も広がるということで、誰かの恋愛話を聞かせてくれている。それに、大学の同級生達にも恋人ができていて、意外な組み合わせのカップルが誕生するなど、恋バナには欠かさない。
そういうわけで、俺は人の恋愛に興味が出ている。そんな俺を黒崎は止めはしない。アレクシスさんが誰かとデートするかも知れないという噂をしても嫌がらない。今までは情報統制と言えるほどに俺の耳に聞こえる話を細かく管理していたというのに、昔と今は大違いだ。こうして北山さんと接するときも黒崎が必ずいたのに、今もいない。ユーリーがいるからだとは思っている。
「夏樹。一貴君がまだしょげているぞ」
「どうしたのかな?」
たしかにアレクシスさんの言うとおりだ。一貴さんが肩を落としている。隣ではお義父さんが何かを話している。何か聞こえてこないだろうか。それを聞いてみると、アレクシスさんが笑った。叱られてはいないそうだ。
「アレクシスさん、すごい耳だね。結構離れているのに聞こえるなんて」
「庭で暮らしたおかげだ。家に近づいてくる足音を聞き漏らさないようにしていたから培った耳だ」
「アン、行くのか?」
「ワン!」
ユーリーがアンに声を掛けた。すると、お義父さん達がこっちに歩いてきた。もうみんなが帰ったからだ。アンがスッキリした身体で走り出して、お義父さん達の元に向かった。すると、お義父さんがアンのことを抱き上げた。アンは嬉しそうに尻尾を振って、腕の中に収まった。
「お義父さん。アン、重くない?」
「いいや、ちっとも重くないよ。6キロか。アヤノと同じ体重だ」
「そうなんだね。黒崎さんが、すごく重かったって言っていたから、もっと体重があったかと思ったよ」
「あの子は小学生の時は力が弱くてね。中学生になった後から急に力がついた。私は覚えているよ。アヤノの体重を。おっと。毛が短いから滑り落ちそうだ」
お義父さんがアンのことを抱き直した。たしかに毛が短いから引っかかるところが無くて、身体がツルツルだ。そして、一貴さんが手を添えて、アンが落ちないようにしてくれた。アンはというと、力をダラッと抜いて、リラックスしている。落とされるなんて思っていないだろう。大事に抱いてくれているお義父さんにありがたいなと思った。
「アン、良かったね。人相が変わったみたいになったね。ねえ、そう思わない?」
「ああ。そう思う。それにしても、北山さんは抜け目ないなあ」
ユーリーが呆れた声を出した。今、北山さんからプライベートのラインIDが書かれた名刺を受け取ったからだ。もちろん、アレクシスさんにも渡してある。今日のことは運命の出会いであり、逃したくないそうだ。
「ありがとうございましたーーーー」
北山さんが運転席から手を振った。そして、彼の運転する車が発進された。庭はもう撤収作業が済んでいて、大学生達が業者さんの車に乗り込んでいく姿を眺めた。大きな車で来ているから、ここの車寄せではなく、庭の中に停めてもらった。今、一貴さんが大学生達に手を振った。そして、その車も発進された。
「みんな帰っていくねえ」
「今日は一日が終わった気分だ」
アレクシスさんが笑った。名刺を持って、どうしようかなと言っている。連絡を取るのだろうか。俺としては危険な人手は無いと思うから、連絡を取っても良いと思う。アレクシスさんはフリーだし、自由だと思う。さすがは北山さんで、黒崎には名刺を渡したことは無い。カップルには手を出さないと決めているのだろう。
俺がこんな発想を浮かべるのには理由がある。大学を卒業した後、俺の仕事関係に変化があったからだ。事務所内で誰と誰が付き合っているとか、盗られてしまったとか、あの人があの人を好きだとかいう会話が聞こえてくるようになった。今までは長谷部さんが聞こえないようにしていたのだと思う。今はもう大人になり、音楽の幅も広がるということで、誰かの恋愛話を聞かせてくれている。それに、大学の同級生達にも恋人ができていて、意外な組み合わせのカップルが誕生するなど、恋バナには欠かさない。
そういうわけで、俺は人の恋愛に興味が出ている。そんな俺を黒崎は止めはしない。アレクシスさんが誰かとデートするかも知れないという噂をしても嫌がらない。今までは情報統制と言えるほどに俺の耳に聞こえる話を細かく管理していたというのに、昔と今は大違いだ。こうして北山さんと接するときも黒崎が必ずいたのに、今もいない。ユーリーがいるからだとは思っている。
「夏樹。一貴君がまだしょげているぞ」
「どうしたのかな?」
たしかにアレクシスさんの言うとおりだ。一貴さんが肩を落としている。隣ではお義父さんが何かを話している。何か聞こえてこないだろうか。それを聞いてみると、アレクシスさんが笑った。叱られてはいないそうだ。
「アレクシスさん、すごい耳だね。結構離れているのに聞こえるなんて」
「庭で暮らしたおかげだ。家に近づいてくる足音を聞き漏らさないようにしていたから培った耳だ」
「アン、行くのか?」
「ワン!」
ユーリーがアンに声を掛けた。すると、お義父さん達がこっちに歩いてきた。もうみんなが帰ったからだ。アンがスッキリした身体で走り出して、お義父さん達の元に向かった。すると、お義父さんがアンのことを抱き上げた。アンは嬉しそうに尻尾を振って、腕の中に収まった。
「お義父さん。アン、重くない?」
「いいや、ちっとも重くないよ。6キロか。アヤノと同じ体重だ」
「そうなんだね。黒崎さんが、すごく重かったって言っていたから、もっと体重があったかと思ったよ」
「あの子は小学生の時は力が弱くてね。中学生になった後から急に力がついた。私は覚えているよ。アヤノの体重を。おっと。毛が短いから滑り落ちそうだ」
お義父さんがアンのことを抱き直した。たしかに毛が短いから引っかかるところが無くて、身体がツルツルだ。そして、一貴さんが手を添えて、アンが落ちないようにしてくれた。アンはというと、力をダラッと抜いて、リラックスしている。落とされるなんて思っていないだろう。大事に抱いてくれているお義父さんにありがたいなと思った。
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