青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

文字の大きさ
793 / 938

22-60

しおりを挟む
 一貴さんとしては、独占欲だけで、藤沢のデザイナー転向を希望しているのでは無い。いろんな誘惑やトラブルを心配してのことだ。藤沢は強くて逞しいが、繊細なところがある。俺はその一面を知っている。開明高校で知り合ったとき、本当に繊細で、気難しい俺とよく気が合ったと思えるぐらいだ。

 その藤沢は時々一貴さんと連絡を取り合っている感じだ。一貴さんが無視されるときもあるそうだ。しつこくするからだ。藤沢の仕事現場に遊びに行ったり、彼の付き合いのあるモデルのことを調べたりするからそうなる。独占欲と束縛と、変な発言。しかし、藤沢は一貴さんのことを受け入れてくれている。

「藤沢から連絡は来た?」
「いや、僕がしつこくしたから無視されている。冬に出すデザインのジュエリーの撮影現場に同行したからだ。カメラマンが怪しくてね。腕は良いんだが、修輔君に特別な感情を抱いているようだ。何かあるといけないから、僕がついていた。早く僕のものになってくれたらいいのに……」
「藤沢にも都合があると思わないの?」

 一貴さんにツッコミを入れておいた。すると、ヨークが笑った。そういえば、俺と一貴さんはツインの妖精だと月島さんが話していたことがある。過去世において俺達は兄弟だったのだろうか。アルデバランから来たということだから、俺とは星が違う。しかし、過去世はたくさんあるのだろう。その中の一つがそうだったのだろうか。

「ヨーク。俺とカズ兄さんって、過去世において縁があったんだろ?兄弟だったの?それとも、同じ軍隊にいたのかな?アルデバランとアルタイルだから、離れた星だけど……」
「仕事で一緒になることがあった」
「それだけ?縁が深そうなんだけど……」

 俺がツッコんでみると、ヨークが微笑んだ。これだけしか言えないということだと受け取った。そのうち何か思い出すのだろうか。その日が遠いのか近いのか分からない。ところで、アンリさんはどこにいるのだろうか。ここで生涯を閉じた後、どこに行ったのだろうか。秀悟さんもどこにいるのだろう。

「ねえ、ヨーク。アンリさんって、どこにいるのかな?」
「君のそばにいる」
「え?」
「君のサポート役をしている。でも、姿は見られないかも知れない。死んだときのお楽しみだ」
「なんだよ~。嘘っぽいじゃん。秀悟さんは?」
「アルタイルにいる。やっぱり死んだときのお楽しみだな」
「消えて無くなるのかと思ったよ。死んだら終わりっていうじゃん」
「天国に行く場合もあるし、星に帰る場合もある。君と圭一君の場合はまずは星に帰る。死が怖くなくなったか?」
「嘘じゃ無いなら怖くないよ。でも、俺、ここを離れたくないんだ。あ!ブロナイザーだ!」

 すると、流れ星が落ちるのが見えた。そして、その後で、光の玉が動いているのが見えた。しかし、すぐに消えて無くなった。あれも流れ星だったのだろうか。

 俺の声にエミリアさんが驚き、彼女も空を見上げた。すると、不思議なことが起きた。真っ暗な空に、山の上で見えるような夜空が広がった。天の川銀河が見えた。

「エミリアさん!見える?天の川銀河だよ!」
「ええ。見えるわ。奇跡を体験しているのね、私達。本当に不思議なこと……。ヨークさん、ありがとう」
「どういたしまして。贈り物になったでしょうか。アレクシス君を乗せた飛行機は無事にドイツに到着するでしょう。寂しいですか?」
「ええ。ここを離れた日を思い出しました。懐かしい我が家に帰ってきた気分です」

 エミリアさんが涙を流した。それを見ていて、俺まで泣けてきた。それだけ夜空が綺麗で奇跡で包まれているからだ。すると、お義父さんと黒崎が外に出てきた。泣いている俺達に戸惑った顔をした後、空に広がっている天の川銀河を見て驚いていた。

「黒崎さん!お義父さん!見えるんだね!」
「ああ……」
「これはすごい……」

 黒崎達がため息をついた。ヨークの魔法だ。それなのに、一貴さんは藤沢のことで頭がいっぱいのようで、さっきからスマホをいじって彼の写真ばかり見ている。その姿にツッコミを入れて、もう一度夜空を見上げた。すると、夜空がさらに変化して、俺達は満天の星空の下に立っている状態になった。それにも驚き、やっぱりここを離れたくないと思って、また涙がこぼれ落ちてしまったのだった。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

従僕に溺愛されて逃げられない

大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL! 俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。 その傍らには、当然のようにリンがいる。 荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。 高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。 けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。 当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。 居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。 さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。 主従なのか、恋人なのか。 境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。 従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。

【BL】捨てられたSubが甘やかされる話

橘スミレ
BL
 渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。  もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。  オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。  ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。  特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。  でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。  理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。  そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!  アルファポリス限定で連載中

黒獅子の愛でる花

なこ
BL
レノアール伯爵家次男のサフィアは、伯爵家の中でもとりわけ浮いた存在だ。 中性的で神秘的なその美しさには、誰しもが息を呑んだ。 深い碧眼はどこか憂いを帯びており、見る者を惑わすと言う。 サフィアは密かに、幼馴染の侯爵家三男リヒトと将来を誓い合っていた。 しかし、その誓いを信じて疑うこともなかったサフィアとは裏腹に、リヒトは公爵家へ婿入りしてしまう。 毎日のように愛を囁き続けてきたリヒトの裏切り行為に、サフィアは困惑する。  そんなある日、複雑な想いを抱えて過ごすサフィアの元に、幼い王太子の世話係を打診する知らせが届く。 王太子は、黒獅子と呼ばれ、前国王を王座から引きずり降ろした現王と、その幼馴染である王妃との一人息子だ。 王妃は現在、病で療養中だという。 幼い王太子と、黒獅子の王、王妃の住まう王城で、サフィアはこれまで知ることのなかった様々な感情と直面する。 サフィアと黒獅子の王ライは、二人を取り巻く愛憎の渦に巻き込まれながらも、密かにゆっくりと心を通わせていくが…

妖精です、囲われてます

うあゆ
BL
僕は妖精 森で気ままに暮らしていました。 ふと気づいたら人間に囲まれてました。 でもこの人間のそばはとても心地いいし、森に帰るタイミング見つからないなぁ、なんて思いながらダラダラ暮らしてます。 __________ 妖精の前だけはドロ甘の冷徹公爵×引きこもり妖精 なんやかんやお互い幸せに暮らします。

守り守られ

ほたる
BL
主治医 望月診療所の双子医師 患者 瀬咲朔 腸疾患・排泄障害・下肢不自由 看護師 ベテラン山添さん 準主人公 成海真幌 腸疾患・排泄障害・てんかん 木島 尚久 真幌の恋人同棲中

[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった

ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン モデル事務所で メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才 中学時代の初恋相手 高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が 突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。 昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき… 夏にピッタリな青春ラブストーリー💕

きっと必ず恋をする~初恋は叶わないっていうけど、この展開を誰が予想した?~

野々乃ぞみ
BL
渡辺 真詞(わたなべ まこと)は小さい頃から人ではないモノが見えた。 残念ながら話もできたし、触ることもできた。 様々なモノに話しかけられ、危ない目にもあってきた。 そんなとき、桜の下で巡(めぐる)に出会った。 厳しいけど優しい巡は特別な存在になった。 きっと初恋だったのに、ある日忽然と巡は消えた。 それから五年。 地元から離れた高校に入った十六歳の誕生日。 真詞の運命が大きく動き出す。 人とは違う力を持つ真詞が能力に翻弄されつつも、やっと再会した巡と恋をするけど別れることになる話。(前半) 別れを受け入れる暇もなくトレーニングが始まり、事件に巻き込まれて岬に好かれる話。(後半) ・前半 巡(人外)×真詞 ・後半 岬(人間)×真詞 ※ 全くの別人ではありませんが、前半と後半で攻めが変わったと感じるかもしれません。 ※ キスを二回程度しかしないです。 ※ ホラーではないつもりですが、途中に少し驚かすようなシーンがあります。ホラーのホの字もダメだという方は自己判断でお願いします。 ※ 完結しました。遅くなって申し訳ありません。ありがとうございました。

甘々彼氏

すずかけあおい
BL
15歳の年の差のせいか、敦朗さんは俺をやたら甘やかす。 攻めに甘やかされる受けの話です。 〔攻め〕敦朗(あつろう)34歳・社会人 〔受け〕多希(たき)19歳・大学一年

処理中です...