801 / 938
23-8
しおりを挟む
すると、黒崎が書斎で電話をすると言い出した。俺が支度をする間、2匹の面倒を見て欲しかったのに。それに、俺達には秘密は無い。最近では、風林さんから電話が入ったときには俺の前で電話をしてくれていた。それなのに、まるで隠れるようにして書斎に行こうとするから、なんだか不審に思った。
「なんだよ。俺に隠し事?」
「そうじゃない。ここだと落ち着かないからだ。すぐに終わる」
「分かったよ。ごめんね。行ってきて」
「ああ。すまない」
そう言って、黒崎が俺達を置いて、2階に上がってしまった。後に残された俺は寂しい気分だ。風林さんが悩みを抱えているのなら、黒崎に話すことで解決に向かうのなら、どんどん聞いてあげてもらいたい。しかし、なんだか黒崎がコソコソしているような気がして気になってしまう。これをヤキモチというのだろうか。
「なんだよ~。女の人からのメッセージカードの時と気分が違うじゃん。マジなヤキモチじゃん」
黒崎が会食の席で女性からプライベートな連絡先を書いたメッセージカードを受け取る度に家に持って帰ってきている。俺に隠し事をしないためだ。そして、俺はそれを見てヤキモチを焼いて、しばらく口を聞かないでいる。持って帰ってこないで断るケースや、俺に分からないように処分するケースもあるとは思っている。その度に黒崎が俺の機嫌を取ってくる。洋菓子店のスイーツを買ってくるなどだ。
そこで、俺の今のモヤモヤが何なのか分かった。風林さんと話す度に、黒崎が俺の機嫌を取ってこないからこうなっているのだと気がついた。しかし、やましい気持ちは全くないからその必要がないのだと思っているし、俺もそう思っている。しかし、ここにきて、気持ちのキャパオーバーが起きつつあるのだろう。
「ふん。後で機嫌を取ってもらおうっと……」
そう決めた後、冷蔵庫から水を取りだして飲んだ。冷えた水が身体に染み渡り、少しだが、胃がキリキリした。これは症状が重いと思った。治すためには何をしてもらおうかと考えた。
「アン、アンドリュー。パパは2階に居るんだよ。浮気をしているんだ」
言ってはいけないと思いながらも愚痴をこぼしてしまった。すると、アンが俺の足下で遊び始めて、ハンバーガーのオモチャを投げてくれと頼んできた。そこで、俺が軽く放り投げると、一目散に走り出した。そして、それをキャットタワーの上からのんびりとアンドリューが眺めており、俺の心とは正反対な平和な空気が流れている。
さて、汗も引いてきたことだし、服を着ることにした。スーツでは無いが、きれいめの格好だ。白のシャツに黒のズボンを合わせることになっている。この格好を決定したのはIKUの方だ。衣装提供はプラセルだ。
服は寝室から取ってきてある。ソファーの背に並べて掛けてある。その一つ一つを大事に着て、スタンドミラーの前に立った。俺の全体像が映る鏡だ。すると、髪の毛のセットはまだとは言え、なんだか俺の顔が沈んだ顔のように見えた。今の気持ちが表れているのだろう。
「これ、まずいな。気持ちの切り替えをしないとなあ……。ん?もう一回?」
すると、アンが俺の足下にやって来た。さっき放った分で一人で遊んでいたのに、気持ちが伝わったのか、遊ぼうと言って、オモチャを差し出してきた。俺はその姿に胸がキュンとした。
「アン、ありがとう。俺なら大丈夫だよ。えい!放ってあげる」
コロコロ。俺がもう一度軽く放ったオモチャが床に転がった。しかし、アンは追いかけていかずに、俺のそばに居て、見上げている。すると、アンドリューまでそばに来た。
「なんだよ。二人とも。俺が元気が無いからだろ~。そんなことはないよ~。もうすぐでパパが下りてくるからさ~。あ、下りてきた」
噂をすれば影がさすということなのか、黒崎が2階から下りてきた。そして、アン達が俺のそばに集まっていることに心配そうな顔になった。そして、何かあったのかと聞いてきた。
「あんたが2階に行ったから、俺、ヤキモチを焼いたんだ。そしたら、アンとアンドリューがそばに来てくれたんだよ」
「ヤキモチなんか必要ない。すまなかった。込み入った話をしていた」
黒崎が俺のことを抱き寄せて、頰にキスをした。いつもの黒崎だ。機嫌を取ってこようとしている。しかし、俺はモヤモヤしっぱなしで素直になれなくて、機嫌が悪いまま、出発の時間が来てしまった。
「なんだよ。俺に隠し事?」
「そうじゃない。ここだと落ち着かないからだ。すぐに終わる」
「分かったよ。ごめんね。行ってきて」
「ああ。すまない」
そう言って、黒崎が俺達を置いて、2階に上がってしまった。後に残された俺は寂しい気分だ。風林さんが悩みを抱えているのなら、黒崎に話すことで解決に向かうのなら、どんどん聞いてあげてもらいたい。しかし、なんだか黒崎がコソコソしているような気がして気になってしまう。これをヤキモチというのだろうか。
「なんだよ~。女の人からのメッセージカードの時と気分が違うじゃん。マジなヤキモチじゃん」
黒崎が会食の席で女性からプライベートな連絡先を書いたメッセージカードを受け取る度に家に持って帰ってきている。俺に隠し事をしないためだ。そして、俺はそれを見てヤキモチを焼いて、しばらく口を聞かないでいる。持って帰ってこないで断るケースや、俺に分からないように処分するケースもあるとは思っている。その度に黒崎が俺の機嫌を取ってくる。洋菓子店のスイーツを買ってくるなどだ。
そこで、俺の今のモヤモヤが何なのか分かった。風林さんと話す度に、黒崎が俺の機嫌を取ってこないからこうなっているのだと気がついた。しかし、やましい気持ちは全くないからその必要がないのだと思っているし、俺もそう思っている。しかし、ここにきて、気持ちのキャパオーバーが起きつつあるのだろう。
「ふん。後で機嫌を取ってもらおうっと……」
そう決めた後、冷蔵庫から水を取りだして飲んだ。冷えた水が身体に染み渡り、少しだが、胃がキリキリした。これは症状が重いと思った。治すためには何をしてもらおうかと考えた。
「アン、アンドリュー。パパは2階に居るんだよ。浮気をしているんだ」
言ってはいけないと思いながらも愚痴をこぼしてしまった。すると、アンが俺の足下で遊び始めて、ハンバーガーのオモチャを投げてくれと頼んできた。そこで、俺が軽く放り投げると、一目散に走り出した。そして、それをキャットタワーの上からのんびりとアンドリューが眺めており、俺の心とは正反対な平和な空気が流れている。
さて、汗も引いてきたことだし、服を着ることにした。スーツでは無いが、きれいめの格好だ。白のシャツに黒のズボンを合わせることになっている。この格好を決定したのはIKUの方だ。衣装提供はプラセルだ。
服は寝室から取ってきてある。ソファーの背に並べて掛けてある。その一つ一つを大事に着て、スタンドミラーの前に立った。俺の全体像が映る鏡だ。すると、髪の毛のセットはまだとは言え、なんだか俺の顔が沈んだ顔のように見えた。今の気持ちが表れているのだろう。
「これ、まずいな。気持ちの切り替えをしないとなあ……。ん?もう一回?」
すると、アンが俺の足下にやって来た。さっき放った分で一人で遊んでいたのに、気持ちが伝わったのか、遊ぼうと言って、オモチャを差し出してきた。俺はその姿に胸がキュンとした。
「アン、ありがとう。俺なら大丈夫だよ。えい!放ってあげる」
コロコロ。俺がもう一度軽く放ったオモチャが床に転がった。しかし、アンは追いかけていかずに、俺のそばに居て、見上げている。すると、アンドリューまでそばに来た。
「なんだよ。二人とも。俺が元気が無いからだろ~。そんなことはないよ~。もうすぐでパパが下りてくるからさ~。あ、下りてきた」
噂をすれば影がさすということなのか、黒崎が2階から下りてきた。そして、アン達が俺のそばに集まっていることに心配そうな顔になった。そして、何かあったのかと聞いてきた。
「あんたが2階に行ったから、俺、ヤキモチを焼いたんだ。そしたら、アンとアンドリューがそばに来てくれたんだよ」
「ヤキモチなんか必要ない。すまなかった。込み入った話をしていた」
黒崎が俺のことを抱き寄せて、頰にキスをした。いつもの黒崎だ。機嫌を取ってこようとしている。しかし、俺はモヤモヤしっぱなしで素直になれなくて、機嫌が悪いまま、出発の時間が来てしまった。
0
あなたにおすすめの小説
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
黒獅子の愛でる花
なこ
BL
レノアール伯爵家次男のサフィアは、伯爵家の中でもとりわけ浮いた存在だ。
中性的で神秘的なその美しさには、誰しもが息を呑んだ。
深い碧眼はどこか憂いを帯びており、見る者を惑わすと言う。
サフィアは密かに、幼馴染の侯爵家三男リヒトと将来を誓い合っていた。
しかし、その誓いを信じて疑うこともなかったサフィアとは裏腹に、リヒトは公爵家へ婿入りしてしまう。
毎日のように愛を囁き続けてきたリヒトの裏切り行為に、サフィアは困惑する。
そんなある日、複雑な想いを抱えて過ごすサフィアの元に、幼い王太子の世話係を打診する知らせが届く。
王太子は、黒獅子と呼ばれ、前国王を王座から引きずり降ろした現王と、その幼馴染である王妃との一人息子だ。
王妃は現在、病で療養中だという。
幼い王太子と、黒獅子の王、王妃の住まう王城で、サフィアはこれまで知ることのなかった様々な感情と直面する。
サフィアと黒獅子の王ライは、二人を取り巻く愛憎の渦に巻き込まれながらも、密かにゆっくりと心を通わせていくが…
妖精です、囲われてます
うあゆ
BL
僕は妖精
森で気ままに暮らしていました。
ふと気づいたら人間に囲まれてました。
でもこの人間のそばはとても心地いいし、森に帰るタイミング見つからないなぁ、なんて思いながらダラダラ暮らしてます。
__________
妖精の前だけはドロ甘の冷徹公爵×引きこもり妖精
なんやかんやお互い幸せに暮らします。
守り守られ
ほたる
BL
主治医 望月診療所の双子医師
患者 瀬咲朔
腸疾患・排泄障害・下肢不自由
看護師
ベテラン山添さん
準主人公 成海真幌 腸疾患・排泄障害・てんかん
木島 尚久 真幌の恋人同棲中
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
きっと必ず恋をする~初恋は叶わないっていうけど、この展開を誰が予想した?~
野々乃ぞみ
BL
渡辺 真詞(わたなべ まこと)は小さい頃から人ではないモノが見えた。
残念ながら話もできたし、触ることもできた。
様々なモノに話しかけられ、危ない目にもあってきた。
そんなとき、桜の下で巡(めぐる)に出会った。
厳しいけど優しい巡は特別な存在になった。
きっと初恋だったのに、ある日忽然と巡は消えた。
それから五年。
地元から離れた高校に入った十六歳の誕生日。
真詞の運命が大きく動き出す。
人とは違う力を持つ真詞が能力に翻弄されつつも、やっと再会した巡と恋をするけど別れることになる話。(前半)
別れを受け入れる暇もなくトレーニングが始まり、事件に巻き込まれて岬に好かれる話。(後半)
・前半 巡(人外)×真詞
・後半 岬(人間)×真詞
※ 全くの別人ではありませんが、前半と後半で攻めが変わったと感じるかもしれません。
※ キスを二回程度しかしないです。
※ ホラーではないつもりですが、途中に少し驚かすようなシーンがあります。ホラーのホの字もダメだという方は自己判断でお願いします。
※ 完結しました。遅くなって申し訳ありません。ありがとうございました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる