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17時。
門の前に一台の車が停まった。迎えの車だ。さっそく俺は玄関を出た。後ろからはアンがついてきた。アンドリューを抱いた黒崎もいる。これが朝なら黒崎の迎えのタクシーだが、今日は俺の番だ。こうして迎えが来て出かけることが増えたから、アンも慣れてきて、俺が出かけるのだと理解している。
「アン、アンドリューのことを頼むよ。夜は早く寝るんだよ。黒崎さん。フードとふりかけはダイニングテーブルの上に置いてあるからね」
「ああ。分かった。行ってこい」
「行ってくるよ。じゃあね」
迎えの車から見えるから、黒崎からの頰へのキスは無かった。俺はそれで良かった。まだモヤモヤした気持ちだから、そういう気になれなかった。何時頃に帰るのかは話してあるから、今更伝えることが無くて、他に会話が思いつかなくて、そのまま車に乗り込んだ。そして、車の窓越しに手を振った。
「行ってきます」
「ああ、気を付けて」
「うん」
車がゆっくり発進した。黒崎がアン達を連れて俺のことを見送ってくれている。それなのに、なんだか気持ちが弾まない。そして、車が本格的にスピードを上げて、走り出した。後ろを振り返ると、どんどん家が遠くなっていった。黒崎達も小さく見えた。まだ外に出てくれている。そこで、胸が痛くなった。
(あーーーあ……)
さっそくスマホを手に取った。今から電話すれば良い。ごめんねと言って謝れば良い。しかし、それが出来ない。俺の負けだと思うからだ。別に黒崎は悪いことをしていない。風林さんが悩みを抱えていて、その話を聞いているのだから、人助けになっている。俺だって、何があったのだろうと気になるぐらいだ。
そこで、モヤモヤした気持ちになるのは、黒崎が話の内容を話してくれないからだと分かった。悩みだから、誰にも言わないでくれと頼まれたのだろうと思った。それなら言えなくても仕方がない。だから、これは浮気では無い。それが分かっているのに、ごめんねが言えない。
すると、俺の隣に座っている長谷部さんが微笑みかけてくれた。さっきまで運転手の山田さんと話していたから、まだ打ち明けなくても良いと思って、心の整理をしていた。しかし、とうとう俺の了見の狭さを披露するときがきたのか。
「夏樹君。なにかあったの?」
「それがねーーーー……。黒崎さんとは喧嘩はしてないんだけど、俺だけがこだわっているんだ。風林さんから電話が入って、黒崎さん、書斎に上がって電話を始めたんだ」
「いつもそうじゃない」
「俺が出かける支度をしている間、アン達の面倒を見て欲しかったんだ。いつもならそうするのに、今日は書斎行きだったんだ。なんだかウキウキした足取りに感じてさ……。浮気じゃないって思わないようにしたいけど、本当にそうかなって思うんだ」
「あなたのことを大事にしているじゃない。大丈夫よ」
「そうなんだけどね。そう思っているんだけどね。さっき出るとき、俺、機嫌が悪い顔をしていたと思うんだ。そうだったよね?」
「ええ。何かあったと思ったわ」
「あーーーあ。黒崎さん、気がついているよね。電話しようかな……」
「した方が良いと思うわよ。帰った後で気まずいでしょう」
「でもさ~、俺の負けみたいになるから嫌なんだ~」
これが今の俺の悩みだ。勝ち負けにこだわってしまう。黒崎の勝ち、俺の負けなんて嫌だ。黒崎の方から謝って欲しいとまでは思わないし、言ってはいけないと思っている。しかし、俺に気を遣ってもらいたい。しかし、それを言うなら、俺の方こそ気を遣わないといけないと思っている。
スマホのラインを開いた。昨日のラインが見えた。黒崎から、今から帰るというメッセージだ。俺は気を付けて帰ってきてねと返事をして、既読になっている。そして、黒崎は予定の時間通りに帰ってきた。その後は喧嘩なんかせずに、普段通りに一緒に晩ご飯を食べた。
「あーーーあ。電話した方が良いんだよね。でもさ~」
「はいはい。気持ちは分かるわ。今なら忙しくないんじゃないの?」
「そうだよねえ。分かったよ。ありがとう。今から電話するよ」
これで勇気が出た。さっそく黒崎の連絡先を表示させた。そして、もしかして、また風林さんと電話をしていたらどうしようという気持ちが芽生えて、背中に汗を掻いた。これでは浮気を疑っているのと同じだ。胸まで痛くなってきた。そこで、そんなことを思うのは良くないと思い直して、連絡先をタップした。すると、3コール目で出てくれた。
門の前に一台の車が停まった。迎えの車だ。さっそく俺は玄関を出た。後ろからはアンがついてきた。アンドリューを抱いた黒崎もいる。これが朝なら黒崎の迎えのタクシーだが、今日は俺の番だ。こうして迎えが来て出かけることが増えたから、アンも慣れてきて、俺が出かけるのだと理解している。
「アン、アンドリューのことを頼むよ。夜は早く寝るんだよ。黒崎さん。フードとふりかけはダイニングテーブルの上に置いてあるからね」
「ああ。分かった。行ってこい」
「行ってくるよ。じゃあね」
迎えの車から見えるから、黒崎からの頰へのキスは無かった。俺はそれで良かった。まだモヤモヤした気持ちだから、そういう気になれなかった。何時頃に帰るのかは話してあるから、今更伝えることが無くて、他に会話が思いつかなくて、そのまま車に乗り込んだ。そして、車の窓越しに手を振った。
「行ってきます」
「ああ、気を付けて」
「うん」
車がゆっくり発進した。黒崎がアン達を連れて俺のことを見送ってくれている。それなのに、なんだか気持ちが弾まない。そして、車が本格的にスピードを上げて、走り出した。後ろを振り返ると、どんどん家が遠くなっていった。黒崎達も小さく見えた。まだ外に出てくれている。そこで、胸が痛くなった。
(あーーーあ……)
さっそくスマホを手に取った。今から電話すれば良い。ごめんねと言って謝れば良い。しかし、それが出来ない。俺の負けだと思うからだ。別に黒崎は悪いことをしていない。風林さんが悩みを抱えていて、その話を聞いているのだから、人助けになっている。俺だって、何があったのだろうと気になるぐらいだ。
そこで、モヤモヤした気持ちになるのは、黒崎が話の内容を話してくれないからだと分かった。悩みだから、誰にも言わないでくれと頼まれたのだろうと思った。それなら言えなくても仕方がない。だから、これは浮気では無い。それが分かっているのに、ごめんねが言えない。
すると、俺の隣に座っている長谷部さんが微笑みかけてくれた。さっきまで運転手の山田さんと話していたから、まだ打ち明けなくても良いと思って、心の整理をしていた。しかし、とうとう俺の了見の狭さを披露するときがきたのか。
「夏樹君。なにかあったの?」
「それがねーーーー……。黒崎さんとは喧嘩はしてないんだけど、俺だけがこだわっているんだ。風林さんから電話が入って、黒崎さん、書斎に上がって電話を始めたんだ」
「いつもそうじゃない」
「俺が出かける支度をしている間、アン達の面倒を見て欲しかったんだ。いつもならそうするのに、今日は書斎行きだったんだ。なんだかウキウキした足取りに感じてさ……。浮気じゃないって思わないようにしたいけど、本当にそうかなって思うんだ」
「あなたのことを大事にしているじゃない。大丈夫よ」
「そうなんだけどね。そう思っているんだけどね。さっき出るとき、俺、機嫌が悪い顔をしていたと思うんだ。そうだったよね?」
「ええ。何かあったと思ったわ」
「あーーーあ。黒崎さん、気がついているよね。電話しようかな……」
「した方が良いと思うわよ。帰った後で気まずいでしょう」
「でもさ~、俺の負けみたいになるから嫌なんだ~」
これが今の俺の悩みだ。勝ち負けにこだわってしまう。黒崎の勝ち、俺の負けなんて嫌だ。黒崎の方から謝って欲しいとまでは思わないし、言ってはいけないと思っている。しかし、俺に気を遣ってもらいたい。しかし、それを言うなら、俺の方こそ気を遣わないといけないと思っている。
スマホのラインを開いた。昨日のラインが見えた。黒崎から、今から帰るというメッセージだ。俺は気を付けて帰ってきてねと返事をして、既読になっている。そして、黒崎は予定の時間通りに帰ってきた。その後は喧嘩なんかせずに、普段通りに一緒に晩ご飯を食べた。
「あーーーあ。電話した方が良いんだよね。でもさ~」
「はいはい。気持ちは分かるわ。今なら忙しくないんじゃないの?」
「そうだよねえ。分かったよ。ありがとう。今から電話するよ」
これで勇気が出た。さっそく黒崎の連絡先を表示させた。そして、もしかして、また風林さんと電話をしていたらどうしようという気持ちが芽生えて、背中に汗を掻いた。これでは浮気を疑っているのと同じだ。胸まで痛くなってきた。そこで、そんなことを思うのは良くないと思い直して、連絡先をタップした。すると、3コール目で出てくれた。
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