青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

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23-12

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 17時半。

 いつの間に眠っていたのだろう。目を覚ますと、伊吹のマンションの前に着いたのが分かった。ここは夢の続きではなく、現実世界だ。あの後、あの2人はどうなっただろうか。秀悟さんは結婚していないという記録が黒崎家に残っている。ということは、縁談は断られたということになる。お兄さんの次に当主になり、アンリさんが補佐をしたというから、ずっと一緒に居られたのだろう。

(ううん。そんなことはない気がする。一旦、星に帰ったのかも……)

 ふと、そんなことが思い浮かんだ。しかし、星に帰ったといっても2、3日のことであり、すぐに秀悟さんの元に戻った気がしている。

「夏樹君。起きた?」
「起きたよ。夢まで見たんだ」
「今、聡太郎君が下りてくるわ」
「うん」

 すると、マンションの玄関から聡太郎が出てきた。きれいめの格好をしている。車の窓越しでも分かるぐらいのオーラを放っていて、相変わらずすごいなと思って、ため息が出た。そして、車のドアが開かれて、聡太郎が乗り込んできた。それを長谷部さんが迎え入れて、俺が眠っていたのだと知らせた。しかし、俺はもう完全に起きている。

「起きているよ。ごめんね。気を遣わせて……。聡太郎君、声を出して良いよ」
「そっか。起きていたのか。疲れているんだろう」
「そんなことはないよ。長谷部さん、笑わないでよ~」

 長谷部さんがクスクスと笑い始めた。こうなると理由を話さないといけなくなる。そこで、俺は、黒崎と喧嘩をしたのだと打ち明けた。しかも、怒っているのは俺だけであり、黒崎の方は普通にしているのだと付け加えた。それを聞いた聡太郎もクスクスと笑い出した。

「喧嘩の原因は?」
「浮気されたかもっていうこと。風林さんが電話を掛けてきて、黒崎さんが書斎に上がったんだ。その足取りがウキウキしている感じがしてさ~。浮気なの?って……」
「副社長は君のことが大好きなんだ。それはあり得ないよ。知っている?副社長のデスクのフォトフレームには君の写真ばかりだよ。それを、鼻の下を伸して見ていたんだ」
「でも、最近は違うのかも……」
「そんなことはないよ。仲直りまで遠そう?」
「ううん。さっき、電話で謝って、仲直りが完了したよ。でも、まだモヤモヤしていたから、少し寝たんだ」

 そこで、俺は、夢の話をすることにした。離ればなれだなんて嫌だという感想もだ。すると、聡太郎が俺の頰をつねった。まるで黒崎のように。

「俺が代わりにつねってあげる。そんな夢を見たのなら、別れようとか、そんなことまで頭によぎったんだろう。だめだよ。早まったらいけない」
「だって、イラついたし、ショックだったんだ」
「もう少し詳しく話してみて」
「うん」

 そこで、俺がどんな気持だったのかを詳しく話してみた。すると、だんだんとモヤモヤが落ち着いてきた。そして、また新しいイライラが出てきてしまった。黒崎は俺に秘密を作るなと言っているくせに、自分は作りまくりだということに対してだ。

「ああーーーー。イライラしてきたーーーーー」
「そういうこともあるんだね。君には聞かせたくない話なんだろう。いつか全部話してくれると思うよ。いつまでたっても今のままじゃ無いと思うからね。今だって、前よりも話してくれるようになっただろうう?」
「うん。そう言われるとそうだよ。家のことを教えてくれるようになって来た感じ。でも、和久さんのことは黙っていたんだ。世間は狭いねっていう話になったけど、教えてくれても良かったと思うんだ」
「副社長の判断だけじゃ無くて、相手があることだからね。風林さんだって、聞かれたくない話だったのかも知れないよ。相談に乗ったのは運命かもしれない。とても大事な決断をする時だったのかも知れない。人の縁だからね」
「そっか……」
「引っ越しの時に知り合ってずっと話しているなら、そういうことだと思う。だから君がモヤモヤするんだとは思う。それだけ仲良くなっているっていう証だってね。でも、副社長は君一筋だ」
「うん……。俺、離ればなれだなんて嫌だよ」
「そうだろう」

 聡太郎がニコッと微笑んだ。そして、俺の背中を優しくさすってくれた。その力が優しくて、なんだか泣けてきた。久しぶりに大きなヤキモチを焼いてしまい、自分でも恥ずかしい戸惑っている。そんな気持も話すと、今度はもっと優しい力でトントンと背中を叩いてくれた。
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