818 / 938
23-25
しおりを挟む
そこで、ヨークのことを紹介しようかと思った。しかし、それはできないと思った。水端さんが彼の姿を見られたなら信じてもらえるだろうが、何も言っていないから言わない方が良いと思った。
(でも、言った方が良いかも。結構周りの人は知っているんだ……)
水端さんは優しいから、否定すること無く話を聞いてくれるだろう。そんな気がしている。今もポーッとした顔で一貴さんのことを見ている。さっきまでと顔が違う。それは一貴さんも同じで、ヨークそのものになっている。やっぱり水端さんが好きになったのはヨークだと思った。
「ヨーク。話しても良いんじゃない?なんちゃって……」
一貴さんになっているヨークに話しかけた。しかし、何も返事を返してこない。美しい作法でブイヤベースを飲んでいる。そして、とても美味しいと言って微笑んだ。その微笑みはかっこよくて、水端さんが蕩けるような顔になった。
「一貴社長ーー。やっぱり僕のことを驚かせようとしていたんでしょう。人が悪いなあ。あ、もしかして、わざとやっていたんですか?僕に嫌われようとしていたんでしょう」
「そんなことはない。家の中モードだったんだよ」
「そんなことありますって。キャーーー!かっこいい!」
「あちゃーーー……」
一貴さんがナプキンで口元を拭いた。それだけで水端さんが悲鳴を上げた。これはもうヨークを見てかっこいいと言っているのが確定だ。そして、ヨークにはその気はないということも確定したのだと思った。
水端さんがヨークの姿を見られたら良いのだが、人によって違いがあり、見られる人とそうでない人がいる。俺だって見られるようになったのは最近だ。それも、ウーリが掛けた魔法によって見られるようになった。ウーリは水端さんに魔法を掛けてくれないだろうか。
「ウーリ。見せてあげてよ。なんちゃって……」
一貴さんの中にいるウーリに話しかけた。しかし、また返事が無い。すると、ピザが運ばれてくるだろうと言い出した。みんながブイヤベースを食べた後だからだ。そして、俺の方を見た。俺は食べるのが遅れていて、半分ぐらい残っている。
「いけない。俺、全然食べていなかったよ~」
「慌てることは無い。ゆっくり食べろ」
「そうだね。こんなに美味しいのに、アツアツで食べれば良かったよ」
「すまない。僕の面倒を見ていたからだ」
「あ……」
一貴さんから見つめられた。その顔は優しくてかっこよくて、いつもの一貴さんでは無かった。ヨークが遊んでいるのだと思った。その証拠に、水端さんが顔を赤くしている。俺だって顔が赤くなりそうになった。そこで、この人は一貴さんであり、ヨークなのだと思い直して心を整理した。
「カズ兄さん。どうしたんだよ。急にさ~。会社モードではそんな感じなの?」
「これが僕だ。会社での僕を見たいと言っていたじゃないか。どうだ?」
「かっこいいと思うよ。テーブルマナーも良くてさ……」
「キャーー!かっこいい!」
水端さんがもう一度悲鳴を上げた。ヨークがナプキンで俺の口元を拭いてくれたからだ。汁が垂れてきていたのだという。これではさっきと反対だ。俺が世話を焼かれている。一貴さんの姿でそうされると落ち着かない。
「カズ兄さん。俺、落ち着かないよ~。ヨーク、言っても良いんじゃない?なんちゃって……」
「こういう僕は面白いだろう。面白いままがいい。もう少し続ける。ピザも食べたい。ビールも飲みたい。ああ、しまった。トイレに行きたくなった」
「場所は分かる?」
「分かるよ。水端君。失礼するよ」
「はい!いってらっしゃい!」
水端さんが顔を赤くしたままで微笑んだ。それに対して一貴さんは微笑み返しをして、席を立った。いつもの一貴さんならこういう時にお皿をひっくり返すか椅子を倒すのに、そんなことはなくて、かっこよく立ち上がった。そして、トイレに行った。
(でも、言った方が良いかも。結構周りの人は知っているんだ……)
水端さんは優しいから、否定すること無く話を聞いてくれるだろう。そんな気がしている。今もポーッとした顔で一貴さんのことを見ている。さっきまでと顔が違う。それは一貴さんも同じで、ヨークそのものになっている。やっぱり水端さんが好きになったのはヨークだと思った。
「ヨーク。話しても良いんじゃない?なんちゃって……」
一貴さんになっているヨークに話しかけた。しかし、何も返事を返してこない。美しい作法でブイヤベースを飲んでいる。そして、とても美味しいと言って微笑んだ。その微笑みはかっこよくて、水端さんが蕩けるような顔になった。
「一貴社長ーー。やっぱり僕のことを驚かせようとしていたんでしょう。人が悪いなあ。あ、もしかして、わざとやっていたんですか?僕に嫌われようとしていたんでしょう」
「そんなことはない。家の中モードだったんだよ」
「そんなことありますって。キャーーー!かっこいい!」
「あちゃーーー……」
一貴さんがナプキンで口元を拭いた。それだけで水端さんが悲鳴を上げた。これはもうヨークを見てかっこいいと言っているのが確定だ。そして、ヨークにはその気はないということも確定したのだと思った。
水端さんがヨークの姿を見られたら良いのだが、人によって違いがあり、見られる人とそうでない人がいる。俺だって見られるようになったのは最近だ。それも、ウーリが掛けた魔法によって見られるようになった。ウーリは水端さんに魔法を掛けてくれないだろうか。
「ウーリ。見せてあげてよ。なんちゃって……」
一貴さんの中にいるウーリに話しかけた。しかし、また返事が無い。すると、ピザが運ばれてくるだろうと言い出した。みんながブイヤベースを食べた後だからだ。そして、俺の方を見た。俺は食べるのが遅れていて、半分ぐらい残っている。
「いけない。俺、全然食べていなかったよ~」
「慌てることは無い。ゆっくり食べろ」
「そうだね。こんなに美味しいのに、アツアツで食べれば良かったよ」
「すまない。僕の面倒を見ていたからだ」
「あ……」
一貴さんから見つめられた。その顔は優しくてかっこよくて、いつもの一貴さんでは無かった。ヨークが遊んでいるのだと思った。その証拠に、水端さんが顔を赤くしている。俺だって顔が赤くなりそうになった。そこで、この人は一貴さんであり、ヨークなのだと思い直して心を整理した。
「カズ兄さん。どうしたんだよ。急にさ~。会社モードではそんな感じなの?」
「これが僕だ。会社での僕を見たいと言っていたじゃないか。どうだ?」
「かっこいいと思うよ。テーブルマナーも良くてさ……」
「キャーー!かっこいい!」
水端さんがもう一度悲鳴を上げた。ヨークがナプキンで俺の口元を拭いてくれたからだ。汁が垂れてきていたのだという。これではさっきと反対だ。俺が世話を焼かれている。一貴さんの姿でそうされると落ち着かない。
「カズ兄さん。俺、落ち着かないよ~。ヨーク、言っても良いんじゃない?なんちゃって……」
「こういう僕は面白いだろう。面白いままがいい。もう少し続ける。ピザも食べたい。ビールも飲みたい。ああ、しまった。トイレに行きたくなった」
「場所は分かる?」
「分かるよ。水端君。失礼するよ」
「はい!いってらっしゃい!」
水端さんが顔を赤くしたままで微笑んだ。それに対して一貴さんは微笑み返しをして、席を立った。いつもの一貴さんならこういう時にお皿をひっくり返すか椅子を倒すのに、そんなことはなくて、かっこよく立ち上がった。そして、トイレに行った。
0
あなたにおすすめの小説
従僕に溺愛されて逃げられない
大の字だい
BL
〈従僕攻め×強気受け〉のラブコメ主従BL!
俺様気質で傲慢、まるで王様のような大学生・煌。
その傍らには、当然のようにリンがいる。
荷物を持ち、帰り道を誘導し、誰より自然に世話を焼く姿は、周囲から「犬みたい」と呼ばれるほど。
高校卒業間近に受けた突然の告白を、煌は「犬として立派になれば考える」とはぐらかした。
けれど大学に進学しても、リンは変わらず隣にいる。
当たり前の存在だったはずなのに、最近どうも心臓がおかしい。
居なくなると落ち着かない自分が、どうしても許せない。
さらに現れた上級生の熱烈なアプローチに、リンの嫉妬は抑えきれず――。
主従なのか、恋人なのか。
境界を越えたその先で、煌は思い知らされる。
従僕の溺愛からは、絶対に逃げられない。
【BL】捨てられたSubが甘やかされる話
橘スミレ
BL
渚は最低最悪なパートナーに追い出され行く宛もなく彷徨っていた。
もうダメだと倒れ込んだ時、オーナーと呼ばれる男に拾われた。
オーナーさんは理玖さんという名前で、優しくて暖かいDomだ。
ただ執着心がすごく強い。渚の全てを知って管理したがる。
特に食へのこだわりが強く、渚が食べるもの全てを知ろうとする。
でもその執着が捨てられた渚にとっては心地よく、気味が悪いほどの執着が欲しくなってしまう。
理玖さんの執着は日に日に重みを増していくが、渚はどこまでも幸福として受け入れてゆく。
そんな風な激重DomによってドロドロにされちゃうSubのお話です!
アルファポリス限定で連載中
黒獅子の愛でる花
なこ
BL
レノアール伯爵家次男のサフィアは、伯爵家の中でもとりわけ浮いた存在だ。
中性的で神秘的なその美しさには、誰しもが息を呑んだ。
深い碧眼はどこか憂いを帯びており、見る者を惑わすと言う。
サフィアは密かに、幼馴染の侯爵家三男リヒトと将来を誓い合っていた。
しかし、その誓いを信じて疑うこともなかったサフィアとは裏腹に、リヒトは公爵家へ婿入りしてしまう。
毎日のように愛を囁き続けてきたリヒトの裏切り行為に、サフィアは困惑する。
そんなある日、複雑な想いを抱えて過ごすサフィアの元に、幼い王太子の世話係を打診する知らせが届く。
王太子は、黒獅子と呼ばれ、前国王を王座から引きずり降ろした現王と、その幼馴染である王妃との一人息子だ。
王妃は現在、病で療養中だという。
幼い王太子と、黒獅子の王、王妃の住まう王城で、サフィアはこれまで知ることのなかった様々な感情と直面する。
サフィアと黒獅子の王ライは、二人を取り巻く愛憎の渦に巻き込まれながらも、密かにゆっくりと心を通わせていくが…
妖精です、囲われてます
うあゆ
BL
僕は妖精
森で気ままに暮らしていました。
ふと気づいたら人間に囲まれてました。
でもこの人間のそばはとても心地いいし、森に帰るタイミング見つからないなぁ、なんて思いながらダラダラ暮らしてます。
__________
妖精の前だけはドロ甘の冷徹公爵×引きこもり妖精
なんやかんやお互い幸せに暮らします。
守り守られ
ほたる
BL
主治医 望月診療所の双子医師
患者 瀬咲朔
腸疾患・排泄障害・下肢不自由
看護師
ベテラン山添さん
準主人公 成海真幌 腸疾患・排泄障害・てんかん
木島 尚久 真幌の恋人同棲中
[BL]憧れだった初恋相手と偶然再会したら、速攻で抱かれてしまった
ざびえる
BL
エリートリーマン×平凡リーマン
モデル事務所で
メンズモデルのマネージャーをしている牧野 亮(まきの りょう) 25才
中学時代の初恋相手
高瀬 優璃 (たかせ ゆうり)が
突然現れ、再会した初日に強引に抱かれてしまう。
昔、優璃に嫌われていたとばかり思っていた亮は優璃の本当の気持ちに気付いていき…
夏にピッタリな青春ラブストーリー💕
きっと必ず恋をする~初恋は叶わないっていうけど、この展開を誰が予想した?~
野々乃ぞみ
BL
渡辺 真詞(わたなべ まこと)は小さい頃から人ではないモノが見えた。
残念ながら話もできたし、触ることもできた。
様々なモノに話しかけられ、危ない目にもあってきた。
そんなとき、桜の下で巡(めぐる)に出会った。
厳しいけど優しい巡は特別な存在になった。
きっと初恋だったのに、ある日忽然と巡は消えた。
それから五年。
地元から離れた高校に入った十六歳の誕生日。
真詞の運命が大きく動き出す。
人とは違う力を持つ真詞が能力に翻弄されつつも、やっと再会した巡と恋をするけど別れることになる話。(前半)
別れを受け入れる暇もなくトレーニングが始まり、事件に巻き込まれて岬に好かれる話。(後半)
・前半 巡(人外)×真詞
・後半 岬(人間)×真詞
※ 全くの別人ではありませんが、前半と後半で攻めが変わったと感じるかもしれません。
※ キスを二回程度しかしないです。
※ ホラーではないつもりですが、途中に少し驚かすようなシーンがあります。ホラーのホの字もダメだという方は自己判断でお願いします。
※ 完結しました。遅くなって申し訳ありません。ありがとうございました。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる