青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

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 水端さんがヨークを見て微笑んだ。そして、こう言った。僕が恋をしたのは誰だったのだろうかと。一貴さんのことが好きになったのだが、ヨークのことだけを見ていたのか、それとも、不器用なところのある一貴さんを含んで、まるごと全部好きになったのかということをだ。

「僕、誰を好きになったのかなあ」
「会食の席の時は僕とヨークがいた。2人合わせて僕だった」
「なるほど」
「でも、話をしていたのは、ほとんどヨークだった」
「それならヨークさんのことを好きになったってことか。僕、からかわれたなあ。デートってできるんですか?今の姿で出かけることは出来ますか?」
「良い機会があればできるよ」

 ヨークがそう答えた。しかし、俺の頭の中には出来ないかも知れないという声が聞こえてきた。ヨークは仕事で来ているのであり、任務というものがある。それを聞いて胸が痛くなった。水端さんはデートしたいと思っているのに。

 すると、ヨークの姿が見えなくなった。そして、水端さんの隣に立ち、すっと消えた。すると、水端さんが驚いた声を上げた。身体が勝手に動くのだという。

「え?なにこれ?キャーーーー!これ、ヨークさんなんですか?」
「緊急時にはこうして身体に入らせてもらうことがある。君は昔から入られていたようだよ」
「え?本当に?全然記憶に無いです。あれ?僕の口が勝手に動きます」
「君の口から喋っている。こういう仕組みだ」
「なるほど。これが取り憑くというものなんですね……」
「この形ならデートが可能だ。見た目は1人だが……」
「これが一貴社長なんですね。でも、デートは並んでしたいです。どうしてもダメですか?ダメって事ですよね?」
「そうではないよ。その機会が来れば知らせに行く」
「そうかーーー」

 水端さんがため息をついた。そして、ヨークのことが好きになっていたのにと言った。しかし、今日は第一歩を踏み出せたということで、前を向けたと言った。

「僕、一貴社長にフラれていますからね。ヨークさんにもフラれたんでしょう?」
「そうではないよ」
「そんなことを言って、からかわないで下さい。良い思い出が出来ました」
「あ……」

 すると、水端が涙ぐんだ。本気でヨークのことが好きになっていたようだ。決して遊びでは無く、真剣だったと分かった。そして、ヨークが身体の中に入っているから車酔いの状態になったようで、身体がフラつき始めた。そこで、聖河さんがそばにやって来た。

「大丈夫ですか?」
「あ、すみません。お酒に酔った感じは無いんですが、フラってするんです」
「シャツのボタンを緩めましょう。外に出ますか?車酔いの状態に近い物があります」
「はい。外の風に当たったらいいかも」
「ヨーク、一旦出てみたら?」

 俺はヨークに声を掛けると、彼が一貴さんの元に戻ってきた。ウォークインに慣れていない時は酔いがくる。そして、聖河さんが水端さんの身体を支えるようにして立たせた後、一旦席を外すと言った。すると、ヨークも一緒に行くと言い、一貴さんの中に入って立ち上がった。それには水端さんが喜んだ。

「キャーーー!山岸先生と一貴社長の両方に囲まれているんだーーーー。嬉しい!」
「はいはい。行こう。風に当たったら良くなる」

 一貴さんの声でヨークがそう言った。しかし、水端さんはヨークなのか一貴さんなのか分からず、どっちですか?と聞いた。しかし、それには答えずに、ヨークが2人を連れて行った。

 後に残された俺達は一瞬、静まりかえった。そして、枝川さんの声によって我に返り、また和気あいあいとした空気が流れ始めた。藤沢は会食の席に戻っている。何が起こったのか察して理解し、後で話を聞くよと言っていた。今日の席は仕事だから、席を外すのはマズいからだ。

 さて、俺にはすることがある。黒崎への連絡だ。会食中だが、一貴さんのことは話しておいた方が良いと思った。ヨーク達だって誰にでも打ち明けるわけじゃない。選んでしていることだ。その中に水端さんが入った。一貴さんとは良い友達になりそうだいうことだと思う。俺は何をしたら良いだろうか。

「”水端さんにウォークインのことを打ち明けたよ。ヨーク達が悪戯して、水端さんのことを驚かせたんだ。今、外の風を当たりに行っているよ”。送信」

 黒崎にラインを送った。今頃向こうも晩ご飯を食べている頃だと思う。すぐに既読になるだろう。俺としてはドキドキの連続だった。だから、黒崎と連絡を取りづらいという気持が薄れて、それは良かったと思った。
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