青い月の天使~あの日の約束の旋律

夏目奈緖

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 午前6時半。

 お義父さんがアンを連れて散歩に出ていく姿を見送りながら、俺は朝ご飯の支度を再開させた。飴が効いてきたのか、水端さんと枝川さんの二日酔いがマシになったようだ。枝川さんにはトーストを用意して、水端さんにはお茶漬けを用意した。俺と黒崎と一貴さんはトーストを食べることにして、ユーリーはお茶漬けを選んだ。

 リビングではみんながテレビを観ている。アンドリューはユーリーの膝の上に座って身体を撫でてもらいながらくつろいでいる。水端さんも枝川さんも動物が好きだから良かった。アンドリューが耳の下や額を撫でてもらい、嬉しそうに鳴いた。

「ニャア」
「そうかーーー。ここが気持ちいいのかーーーー」
「枝川さんって、猫派じゃない?」
「いや、俺はどちらかというと犬派だ。でも、猫も好きだ。いいなあ。飼いたいなあ。水端さんは猫派ですか?」
「僕も犬派です。でも、猫も好きなんです。近所の神社に行くと、猫がいるんです。神主さんの家で飼っている猫が遊びに来るんです。ネッコっていう名前で、この間、1週間以上も家に帰ってこなくなっていて、けっこう離れた場所にあるコンビニの駐車場で見つけて、連れて帰ってきたって聞きました。神主さんがたまたま寄った店だったんですよ」
「そうでしたか。遠くまで行って帰れなくなったのかな」
「そうかも知れません。神主さんを見ても逃げなかったし、抱いたら、ニャアニャア鳴いていたっていう話でした。もう外に出さないって言っていました。アンドリュー君は外に出ますか?」
「出ますが、家の周りにしか居ません。でも、門の外に出るかも知れないから、気を付けています」

 水端さんから聞かれた黒崎が答えた。その質問は俺達も気にしている内容だ。今はまだ子猫のようなもので、高い場所に上がろうとしないが、大人になったら分からない。近所の猫が庭に入ってこられているから、アンドリューだって、高い塀を上がれると思う。そうなると、神主さんの家の猫のように迷子になるかも知れない。

 ジャーーーー。今やっているのは厚焼き玉子づくりだ。良い色に焼けた。それをまな板の上に置き、包丁で切って、お皿に盛り付けた。サラダはもう出来てある。キッチンのカウンターに置いていくと、黒崎がリビングのテーブルに運んでくれた。今日はそこで食べることになる。

「黒崎さん。お漬物を出して」
「この容器か?」
「それはバターが入っている容器だよ。緑色のお漬物が見える容器を選んでね」
「これか……」

 黒崎が冷蔵庫から漬け物が入った容器を取り出した。そして、キッチンのカウンターに置いた。それをリビングのテーブルに持って行ってもらいたい。

「黒崎さん。向こうに持って行ってね。ユーリーと水端さんが食べるんだよ」
「そうか。向こうか」
「よしよし……」

 黒崎が無事にリビングのテーブルに容器を置いたのを確認した。何でも出来る人だと思うが、家事のことになると何も出来ない。それを確認する度に可愛いと思ってしまう俺は変わっているだろうか。そして、俺もリビングに移動しようと思って朝ご飯の支度を終えると、一貴さんの方からグラスをひっくり返す音がした。

「あちゃーーーー。やった?」
「やっていない。倒れなかった」
「そっかーーーー。残念。カズ兄さんの慌てぶりを見て欲しかったのに」
「ははは」

 すると、水端さんから笑い声が聞こえてきた。それは楽しそうな声であり、会食の時とは違っていた。お互いに遠慮があったと思う。すると、つられてみんなが笑い出した。そして、和気あいあいとした空気の中でテーブルに朝ご飯を並べた。
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