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午前9時。
畑で水やりをしているところだ。そばにある我が家は外から見ると普段通りであり、何も起こらなかったといえるが、家の中はそうではない。そこそこ荒らされている。警察の捜査があるからそのままにしてある。黒崎が帰ってくるまでは片付けられない。彼が見て、何かなくなっている物はないか確認するためだ。ついさっき電話で話した時は俺のことを心配していた。すぐに帰りたいのに帰れない場所に居るのはもどかしいだろう。
「ユーリー!100メートル走の記録が出たよーーー」
「そうか!はあ、はあ……」
「ユリウスさんって、すごいなあ。足も速いんだね」
今、ユーリーが畑の周りを走っていた。それがけっこう早くて、記録が出たと思った。南波さんが目を輝かせている。ユーリーとしては少しでもいいところを見せたいのだろう。優しくて強くて足も速いというところだ。僕はお買い得物件だと、南波さんに言っていた。
好きな子に認められたい。選んでもらいたい。それがユーリーの今の原動力だ。夜中はいいところを見せられたからチャンスだと思っているのだろう。俺もそう思う。南波さんのユーリーを見る目が少し変化したからだ。面白い友達という立ち位置になりそうだったのに、かっこいいナイトになったのだから。たぶんそういうことだと思う。
俺も黒崎に対しては同じ事を思っていた。はっきり言って、怪しい男だと思っていた。ユーリーのような優しい雰囲気はレストランでの出会いの時だけで、後は恐怖心を煽られていた。優しいなんて思えず、なんて失礼な人だろうと思っていた。しかし、それがだんだんと情がわいてきて、いいところを見せようとする黒崎の姿に気がついて、胸がキュンとした。今のユーリーに似ていると思う。
「南波さん。ユーリーはどうかな?すごくお買い得物件だと思うよ」
「ははは。何をしてもかっこいいっていう感じだよね。僕、ユリウスさんに比べるとかっこ悪いよ。恥ずかしいぐらいだよ」
「そんなことはないよ。南波さんもかっこいいよ。あ、またユーリーが走り始めた。体力があるんだぞって見せているんだよ」
「可愛いなあ。あ、ヤバイ!」
「え?」
「なんでもないよ。あはは」
南波さんがポロッとこぼした言葉を聞き逃さなかった。たしかに、可愛いなあと言った。それは愛しさが込められている言葉だと思う。ユーリーも走りがいがあるというものだ。俺達のそばから離れないのはさすがだ。守ってくれている。
すると、アンがあくびをして、地面に座り込んだ。眠いということか。アンドリューはお義父さんの家のリビングのキャットタワーでまったりしている頃だ。この中で元気いっぱいなのはユーリーだけだ。いや、俺達も元気なのだが、これから警察が来ると思うと、緊張感で静かになっている。
今から30分前に長谷部さんが到着した。今、お義父さんの家でお茶を飲んでもらっている。もしかしたら、ここに泥棒が入ったことで取材を受けるかも知れないからと、お義父さんと打ち合わせをしているところだ。晴海さんも同席している。当主代理のユーリーも同席すると言ったが、俺の日課に付き合ってくれと言われて、俺達を連れて畑に来たわけだ。一貴さんは部屋でオンライン会議中だ。モデルの選定に入っている。
「はあはあ……」
「ユーリー。今のタイムも新記録だったよ。あれ?腕立て伏せをするのかよ?」
「ああ。僕は体力が有り余っている」
「休んでおきなよ~。そんなに汗を掻いてさ~」
「はあ、はあ……」
「たしかに体力があるなあ……」
ユーリーが走り終えた後、その場で腕立て伏せを始めた。僕の体力を見てくれと言いたいようで、たしかに可愛いと思った。南波さんが、“どうしたらいいだよ、僕”と言い、ユーリーが目を輝かせた。それは決まっている。自分の物になってくれということだ。
「南波君。僕のことを考えてくれ」
「もう……」
「損はさせない」
「それは……、あ、警察だ」
南波さんが何かを言いかけてやめて、警察が来たことを教えてくれた。一台のパトカーが停まった後で、二台停まった。さあ、これから応対しないといけない。昔、万理の事件が起きた後で話をした警察官との思い出が蘇った。その人達はとても優しくて、落ち着いて話すことが出来た。今回もそうだろう。
「お義父さん、警察が来たよ」
「分かった。そっちに行く」
電話を掛けて、お義父さんに警察が来たことを伝えた。すると、インターフォンが鳴り、門が開いた。警察車両に庭に入ってもらうためだ。そして、夜中の時と同じように車が入ってきて、停まった。俺はドキドキして、少しだけ歯が痛くなり、痛み止めを飲んでおけば良かったと思った。
畑で水やりをしているところだ。そばにある我が家は外から見ると普段通りであり、何も起こらなかったといえるが、家の中はそうではない。そこそこ荒らされている。警察の捜査があるからそのままにしてある。黒崎が帰ってくるまでは片付けられない。彼が見て、何かなくなっている物はないか確認するためだ。ついさっき電話で話した時は俺のことを心配していた。すぐに帰りたいのに帰れない場所に居るのはもどかしいだろう。
「ユーリー!100メートル走の記録が出たよーーー」
「そうか!はあ、はあ……」
「ユリウスさんって、すごいなあ。足も速いんだね」
今、ユーリーが畑の周りを走っていた。それがけっこう早くて、記録が出たと思った。南波さんが目を輝かせている。ユーリーとしては少しでもいいところを見せたいのだろう。優しくて強くて足も速いというところだ。僕はお買い得物件だと、南波さんに言っていた。
好きな子に認められたい。選んでもらいたい。それがユーリーの今の原動力だ。夜中はいいところを見せられたからチャンスだと思っているのだろう。俺もそう思う。南波さんのユーリーを見る目が少し変化したからだ。面白い友達という立ち位置になりそうだったのに、かっこいいナイトになったのだから。たぶんそういうことだと思う。
俺も黒崎に対しては同じ事を思っていた。はっきり言って、怪しい男だと思っていた。ユーリーのような優しい雰囲気はレストランでの出会いの時だけで、後は恐怖心を煽られていた。優しいなんて思えず、なんて失礼な人だろうと思っていた。しかし、それがだんだんと情がわいてきて、いいところを見せようとする黒崎の姿に気がついて、胸がキュンとした。今のユーリーに似ていると思う。
「南波さん。ユーリーはどうかな?すごくお買い得物件だと思うよ」
「ははは。何をしてもかっこいいっていう感じだよね。僕、ユリウスさんに比べるとかっこ悪いよ。恥ずかしいぐらいだよ」
「そんなことはないよ。南波さんもかっこいいよ。あ、またユーリーが走り始めた。体力があるんだぞって見せているんだよ」
「可愛いなあ。あ、ヤバイ!」
「え?」
「なんでもないよ。あはは」
南波さんがポロッとこぼした言葉を聞き逃さなかった。たしかに、可愛いなあと言った。それは愛しさが込められている言葉だと思う。ユーリーも走りがいがあるというものだ。俺達のそばから離れないのはさすがだ。守ってくれている。
すると、アンがあくびをして、地面に座り込んだ。眠いということか。アンドリューはお義父さんの家のリビングのキャットタワーでまったりしている頃だ。この中で元気いっぱいなのはユーリーだけだ。いや、俺達も元気なのだが、これから警察が来ると思うと、緊張感で静かになっている。
今から30分前に長谷部さんが到着した。今、お義父さんの家でお茶を飲んでもらっている。もしかしたら、ここに泥棒が入ったことで取材を受けるかも知れないからと、お義父さんと打ち合わせをしているところだ。晴海さんも同席している。当主代理のユーリーも同席すると言ったが、俺の日課に付き合ってくれと言われて、俺達を連れて畑に来たわけだ。一貴さんは部屋でオンライン会議中だ。モデルの選定に入っている。
「はあはあ……」
「ユーリー。今のタイムも新記録だったよ。あれ?腕立て伏せをするのかよ?」
「ああ。僕は体力が有り余っている」
「休んでおきなよ~。そんなに汗を掻いてさ~」
「はあ、はあ……」
「たしかに体力があるなあ……」
ユーリーが走り終えた後、その場で腕立て伏せを始めた。僕の体力を見てくれと言いたいようで、たしかに可愛いと思った。南波さんが、“どうしたらいいだよ、僕”と言い、ユーリーが目を輝かせた。それは決まっている。自分の物になってくれということだ。
「南波君。僕のことを考えてくれ」
「もう……」
「損はさせない」
「それは……、あ、警察だ」
南波さんが何かを言いかけてやめて、警察が来たことを教えてくれた。一台のパトカーが停まった後で、二台停まった。さあ、これから応対しないといけない。昔、万理の事件が起きた後で話をした警察官との思い出が蘇った。その人達はとても優しくて、落ち着いて話すことが出来た。今回もそうだろう。
「お義父さん、警察が来たよ」
「分かった。そっちに行く」
電話を掛けて、お義父さんに警察が来たことを伝えた。すると、インターフォンが鳴り、門が開いた。警察車両に庭に入ってもらうためだ。そして、夜中の時と同じように車が入ってきて、停まった。俺はドキドキして、少しだけ歯が痛くなり、痛み止めを飲んでおけば良かったと思った。
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