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タクシーが住宅街の坂を上がった。まもなく遠藤社長宅へ到着する。書店に立ち寄って、悠人が好きな雑誌を買って来た。ついでに、島川氏のインタビュー記事が載った雑誌も購入した。MIDSHIPを立ち上げた時代のことが語られている。悠人が読みそうだ。
ページを開くと、”いかにも系" の姿が載っていた。イケイケ社長という言い方だ。黒崎とは正反対のタイプだ。あの人が上品なタイプであることに気づいた。
黒崎の兄貴ではあるが、自分とは接点がない。千尋製菓の関係者の息子とはいえ、副社長にと指名されるのには違和感がある。
腕時計に視線を向けた。そろそろ病院から帰宅する頃か?佳代子さんへ連絡を取り、悠人の様子を聞いておいた。点滴を受けたそうだ。
もうすぐ到着すると連絡しよう。悠人へ電話をかけると、やや間をおいて繋がった。嬉しそうな声が聞こえてきた。帰って来てよかったと思った。
「悠人君。点滴を頑張ったのか?」
「……うん。コンビニでオヤツを買ってもらったよ。もう家に入るよー。……え?佳代子さーん、向こうへ行って!大丈夫だから。裕理さん、家の前に記者がいるんだ。囲まれてて……」
悠人の緊張した声が聞こえてきた。ここからすぐの距離だ。フロントガラス越しに視線を向けて、悠人たちの姿を探した。
「悠人、電話を切るな!」
「……佳代子さん、こっちだよ!俺はいいから!なつきーー、ダメだって!」
黒崎家の敷地が見えてきた。電話を続けるよりも、このまま向かって降りる準備をした方が早い。悠人の声からすると、マナーの悪い記者達がいるのだろう。
話題性を持った人物のゴシップなら、大衆の食いつきが良い。雑誌社に写真を売って収入にしている者もいる。これが厄介だ。メディア業界の人間にはマナーを求められるが、このケースは不可能に近い。
取材相手から肩を押されただとか、強く腕を掴まれたと騒ぎ立てる。わざと収拾がつかなくなる方法を取るために。盛り上がる動画に仕上げる者もいる。そして、警察に事情聴取されたことも自分のサイトで報告して、さらに注目を集める。
「……ここで停めてください!」
悠人の姿を見つけた。囲んでいるのは4人だ。そのうちの一人を知っている。EMIRIの元スタッフだ。ディアドロップが解散になり、IKUから退社したと聞いた。問題を起こしたからだ。EMIRIの指示だろうか。ライバルの自宅への嫌がらせ行為を繰り返したとされている。
ガーーー。
タクシーから飛び降りるようにして外に出た。さっと視線を向けると、他の男は記者達だった。ICレコーダーを持っている。身体には触れていないが、悠人を取り囲んでいるのには違いない。悠人が俺のことに気づいた。何度も首を振っている。俺に何か影響が起きるのを怖がっているのか?
「悠人!こっちに来い!」
「裕理さん!そのままにして!」
悠人が庇っている子がいる。抱きしめるようにして顔を隠している。それは夏樹だった。騒ぎに気付いて出てきたのだろう。お互いに守り合っている。このまま見ているわけがないだろう。悠人達の前に入り込み、男たちの前に立った。
「君たち、しつこいぞ!」
「コメントを頂くだけです。森井物産の事件の感想を聞きたいだけです」
「無関係だ。世間話は出来ない」
一つでも答えれば、終わりがなくなる。ストーリーを描いているのは分っている。答える必要はない。彼らを制止すると、EMIRIの元スタッフが詰め寄ってきた。久田悠人さんとはどのようなご関係ですか?と。
ここで声を荒げれば、身体接触を招きかねない。この状況で家の中に逃げれば、別の日も追ってくるだろう。ここで片づけておく。悠人のことを背後に隠した。腕を押さえられたが、後ろに下がらせた。夏樹のことを、佳代子さんに促した。
「この子には無関係です。お引き取りください」
「その方は久田悠人さんですよね?森井物産、森井美夕氏の交際相手とは会ったことがありますか?」
「そういう子はいません。見当違いです」
「ここは社長宅ですよね?ユートさんでしょう?」
「そういう子はいません!」
もう一度、男たちに言い切った。記者達が気色ばんだ隙に、悠人の身体を門の向こうへ押しやった。背後の気配から、玄関へ向かっているのが分かった。これで安心だ。4人へ所属をたずねた。答えるわけもないが。
「見ず知らずの相手に、因縁をつけた意味が分かりますか?ここで帰るなら追求しません」
記者達が怯んだ様子を見せた。そして、一歩引いた時に、遠くの方からタクシーが走ってきた。さらにパトカーのサイレンも。間に合ってよかった。
警察が駆け寄って来た。今後の抑止になる。タクシーから降りてきたのは中山弁護士だ。さっそく警察への対応を始めて、自分もその中に入った。
ページを開くと、”いかにも系" の姿が載っていた。イケイケ社長という言い方だ。黒崎とは正反対のタイプだ。あの人が上品なタイプであることに気づいた。
黒崎の兄貴ではあるが、自分とは接点がない。千尋製菓の関係者の息子とはいえ、副社長にと指名されるのには違和感がある。
腕時計に視線を向けた。そろそろ病院から帰宅する頃か?佳代子さんへ連絡を取り、悠人の様子を聞いておいた。点滴を受けたそうだ。
もうすぐ到着すると連絡しよう。悠人へ電話をかけると、やや間をおいて繋がった。嬉しそうな声が聞こえてきた。帰って来てよかったと思った。
「悠人君。点滴を頑張ったのか?」
「……うん。コンビニでオヤツを買ってもらったよ。もう家に入るよー。……え?佳代子さーん、向こうへ行って!大丈夫だから。裕理さん、家の前に記者がいるんだ。囲まれてて……」
悠人の緊張した声が聞こえてきた。ここからすぐの距離だ。フロントガラス越しに視線を向けて、悠人たちの姿を探した。
「悠人、電話を切るな!」
「……佳代子さん、こっちだよ!俺はいいから!なつきーー、ダメだって!」
黒崎家の敷地が見えてきた。電話を続けるよりも、このまま向かって降りる準備をした方が早い。悠人の声からすると、マナーの悪い記者達がいるのだろう。
話題性を持った人物のゴシップなら、大衆の食いつきが良い。雑誌社に写真を売って収入にしている者もいる。これが厄介だ。メディア業界の人間にはマナーを求められるが、このケースは不可能に近い。
取材相手から肩を押されただとか、強く腕を掴まれたと騒ぎ立てる。わざと収拾がつかなくなる方法を取るために。盛り上がる動画に仕上げる者もいる。そして、警察に事情聴取されたことも自分のサイトで報告して、さらに注目を集める。
「……ここで停めてください!」
悠人の姿を見つけた。囲んでいるのは4人だ。そのうちの一人を知っている。EMIRIの元スタッフだ。ディアドロップが解散になり、IKUから退社したと聞いた。問題を起こしたからだ。EMIRIの指示だろうか。ライバルの自宅への嫌がらせ行為を繰り返したとされている。
ガーーー。
タクシーから飛び降りるようにして外に出た。さっと視線を向けると、他の男は記者達だった。ICレコーダーを持っている。身体には触れていないが、悠人を取り囲んでいるのには違いない。悠人が俺のことに気づいた。何度も首を振っている。俺に何か影響が起きるのを怖がっているのか?
「悠人!こっちに来い!」
「裕理さん!そのままにして!」
悠人が庇っている子がいる。抱きしめるようにして顔を隠している。それは夏樹だった。騒ぎに気付いて出てきたのだろう。お互いに守り合っている。このまま見ているわけがないだろう。悠人達の前に入り込み、男たちの前に立った。
「君たち、しつこいぞ!」
「コメントを頂くだけです。森井物産の事件の感想を聞きたいだけです」
「無関係だ。世間話は出来ない」
一つでも答えれば、終わりがなくなる。ストーリーを描いているのは分っている。答える必要はない。彼らを制止すると、EMIRIの元スタッフが詰め寄ってきた。久田悠人さんとはどのようなご関係ですか?と。
ここで声を荒げれば、身体接触を招きかねない。この状況で家の中に逃げれば、別の日も追ってくるだろう。ここで片づけておく。悠人のことを背後に隠した。腕を押さえられたが、後ろに下がらせた。夏樹のことを、佳代子さんに促した。
「この子には無関係です。お引き取りください」
「その方は久田悠人さんですよね?森井物産、森井美夕氏の交際相手とは会ったことがありますか?」
「そういう子はいません。見当違いです」
「ここは社長宅ですよね?ユートさんでしょう?」
「そういう子はいません!」
もう一度、男たちに言い切った。記者達が気色ばんだ隙に、悠人の身体を門の向こうへ押しやった。背後の気配から、玄関へ向かっているのが分かった。これで安心だ。4人へ所属をたずねた。答えるわけもないが。
「見ず知らずの相手に、因縁をつけた意味が分かりますか?ここで帰るなら追求しません」
記者達が怯んだ様子を見せた。そして、一歩引いた時に、遠くの方からタクシーが走ってきた。さらにパトカーのサイレンも。間に合ってよかった。
警察が駆け寄って来た。今後の抑止になる。タクシーから降りてきたのは中山弁護士だ。さっそく警察への対応を始めて、自分もその中に入った。
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