聖なる雫の音楽少年~あの日のキミ

夏目奈緖

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 早瀬が黒崎さんとお父さんとの3人で話し合っている。その間、この家の図書室で過ごしている。時計の針の音が聴こえてきた。やっと他のことに気を逸らせることが出来た。頭の中は今回のことでいっぱいだった。島川さんは酷いことをしたが、涙を流している人を責め立てることは出来なかった。

 夏樹の左目が真っ赤なのは、怒りからだった。黒崎さんから電話で、俺たちが向かっていることを聞いたそうだ。島川さんを連れて書斎へ逃げろと指示されたが、そうしなかった。何をやったのか見届けるために。島川さんが逃げるのは自由だと言っていた。 

 お父さんから頭を下げられると、何も言えない。早瀬も同じ意見だ。元から憎くないし、島川さんとは友達に戻りたい。だから、今回は ”許す方向” だと答えた。早瀬は“許す”と言った。

 元々風邪を引いている夏樹が寝込んでしまった。この家の客間で休み、島川さんが付き添っている。差し入れのプリンとゼリーを、二人で食べろと言ってある。仲直りできるといい。子供のような発想だが、効果てきめんだ。

「俺のために動いたことには違いないもん。お母さんに謝って提携を続けるし……、キスをした役員にも謝るし。被害届も出してもらうって……」

 島川さんが本気で悪いところを直すのだと分かった。キスの被害届を出してもらい、謝罪を受け入れた上で取り下げてくれと話がされたそうだ。あとは俺自身の気持ちの整理が必要だ。上手くいかず、モヤモヤしている。すっかり日が暮れて室内の灯りをつけた。すると、ドアが開いた。早瀬が迎えに来てくれた。
 
「悠人。気持ちは落ち着いたか?」
「少しだけ。もう帰ることになった?」
「ああ。詳しいことは帰った後だ。その前に病院へ行こう」

 唇を噛んだことで出血した。今も噛んでいたから治っていない。遠藤さんから病院に連れて行くと言われたが、ここで待ちたいと答えた。養子の話は今度にする。

 この部屋の本を5冊借りる。また遊びに来るからだ。お父さんから借りたウサギの柄のトートバッグに入れて、部屋を出た。
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