夏椿の天使~あの日に出会った旋律

夏目奈緖

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6-1 黒崎製菓のインターンシップ

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 12月18日、火曜日。午前0時半。

 リビングのソファーへ寝転がった。毛布を掛けた足元では、アンも寝ている。今夜は黒崎が仕事の飲み会で遅くなる。先に寝ておけと言われているけれど、なるべく起きて迎えたい。だらだらとリモコンを押してテレビをつけると、夜のニュースが流れた。

「『黒崎製菓とワタベ電機の提携、来年4月の編成……、2.1%……』」
「ふぁ~~。今日からだ……」

 いよいよ、黒崎製菓のインターンシップに参加する。スーツ類と持っていく物は準備してある。朝ごはんの段取りも済んだ。後は黒崎の帰りを待って、夜食を食べさせるだけだ。

「黒崎さん、お湯も沸かさないもんね~」

 毛布に頬ずりをしているうちに、体全体が温かくなった。ふわっ。急に体が軽くなる感覚が起きた。そして、鼻先に黒崎の匂いを感じた。これは、スーツの生地の感触だろう。背中へ腕が回されている。黒崎が帰ってきたのだろう。いつの間にか眠っていたようだ。いつも抱き上げられているから、目を閉じても分かる。帰ってきたのに気づかなかった。

「うん……?」
「ベッドに運んでやる」
「おかえりーー……」
「寝ておけ」
「お茶漬けだし……、お湯が……」

 モゾモゾと動いて首周りに腕を絡めた。うっすら目を開けると、やっぱり黒崎がいた。会いたかった。

「黒崎さん、会いたかった」
「お前の方が酔っ払いか」
「お酒くさいよ~」
「我慢しろ、ほら」

 黒崎から頬ずりをされてしまった。いつもなら嬉しいのに、今はそうではない。右の頬にチクチクした感触が起きて身じろいだ。

「ヒゲが伸びてるよ~」
「それはそうだ。朝から剃っていない」
「くさいってば~」
「お前はいい匂いがするぞ」
「マフィンを温めていたからだよ~」
「食べてみようか。どんな味だ?」
「頬っぺたに噛みつくなよ~」
「美味そうだ」
「早くお風呂に入って来いよ~」
「先にベッドで寝かせる。寝ておけ」
「だって、お湯が……」
「……心配するな。ベッドに運んでやる」

 本格的に眠くなった。目を開けたいのに。揺れを感じながら階段を上がる音を聞きながら、また眠気が起きた。寝室のベッドに寝かされたようだ。肩まで掛けられた毛布が気持ちいい。

 パタン……。

 静かにドアが閉まる音がした。
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