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喫茶店を出て、これから星を観に行くところだ。タクシーで移動して降りた場所は、広い駐車場だった。天体望遠鏡を覗いているグループが何組もいた。わいわいガヤガヤと、話し声が聞こえている。みんな厚着をして、夜空を仰ぎ見たり、隣のいる人と話したりしている。
「大晦日の天体観測ツアーだそうだ。この辺りで一番、星が観えやすい」
「ホントによく見えるよー」
この下には峠が広がっていて、何も光がないから、夜空がよく見える。大きくのけぞるようにして見上げた。真っ暗な巨大スクリーンには、宝石が散りばめられている。それを黒崎と一緒に眺めた。
「わああ~、空に吸い込まれそうだよ」
「ここは人が多すぎる。向こうへ行くぞ」
「うん。端っこなら静かだね」
連れられて歩いて行くと、大きな木が見えてきた。近くまで行くと、何本も生い茂っているから、枝葉で空が見えないと思った。
「ここだと見えづらくない?」
「……目的はこれだ」
「ええ?」
肩を抱かれて歩き始めると、木で出来た建物のそばまで行った。そして、さらに手を引かれて外に付いている木の階段を登って行くと、バルコニーのような場所に出た。ここなら星が見えそうだ。
「黒崎さーん、ここは何?」
「年明けからオープンする展望台だ」
「ええ?入ったらマズイじゃん……」
「今日から解放している。向こうを見てみろ。先客がいるだろう?」
「ああ、ホントだ。人が少ないね。あんまり知られていないのかな?」
「さっきの駐車場が観測に良いからだろう。カップルならイベントのほうへ行っている。ここに来ているのは、別の目的のカップルだ」
どこでもエロ発言をやめない人だと知った。見直したり見下したくなったりして、俺の心の中が忙しい。
「俺たちの目的は星空だよっ」
「分かっている。早く見ておけ。15分後にはタクシーが来る」
「えー?そんなに早く?」
「あのまま帰れば落ち込むだろうが。これでも譲っている」
「分かったよ~……」
空を見上げた。今の時間は南の方角にオリオン座が見えるはずだ。その方へ向くと、3つの星が輝いていた。
「黒崎さん。あの明るい星は分かるよね?赤いのがベテルギウス、青白いのがリゲルだよ」
「超新星爆発を引き起こすかもしれない星か」
「うん。オリオン座のベテルギウス、こいぬ座のプロキオン、おおいぬ座のシリウス、この3つの星を結んで出来る三角形を『冬の大三角』っていうんだ。シリウスって、輝きが強いだろ?『焼き焦がすもの』っていう意味があるんだよ……」
「夏樹……」
「うん?」
「たしかに、お前には焼き焦がされた」
「ええー?そんなにあっさり認めるなよ……」
マスクの下の顔が熱くなった。自分の息で蒸れてしまい、下にズラして顔を冷気に当てて冷やした。黒崎が笑ったから、胸がドキッとした。
「この間のブリの塩焼きは丸焦げだった。歌って踊っているからだ」
「なんだよ~っ」
「サンマもそうだった。ハムエッグも同じだ」
「せっかくいいムードだったのに~っ」
「ふんっ」
「機嫌を直せ。照れ隠しだ」
持っていた観光パンフレットで叩いてやった。コート越しだから痛くないと笑っている。そして、後ろから抱きしめられた。体が温かくなり、耳元では彼の息遣いを感じた。
空を見上げると、自分たちの真上にオリオン座があった。いつも一緒に見ている星座だ。そのまま無言で眺めているうちに、タクシーの時間が来てしまった。
「そろそろ時間だ」
「うん。また来ようね」
「ああ……」
さっきの階段を降りて行った。先に降りた黒崎から手を差し伸べられた。自然とその手を取ると、引き寄せられた。
「黒崎さん?」
「好きだ」
「ん……」
不意をつかれて腕の中に閉じ込められた。近づいてくる唇が重なり、ギリギリの時間までキスをしていた。満天の星空の下で。
「大晦日の天体観測ツアーだそうだ。この辺りで一番、星が観えやすい」
「ホントによく見えるよー」
この下には峠が広がっていて、何も光がないから、夜空がよく見える。大きくのけぞるようにして見上げた。真っ暗な巨大スクリーンには、宝石が散りばめられている。それを黒崎と一緒に眺めた。
「わああ~、空に吸い込まれそうだよ」
「ここは人が多すぎる。向こうへ行くぞ」
「うん。端っこなら静かだね」
連れられて歩いて行くと、大きな木が見えてきた。近くまで行くと、何本も生い茂っているから、枝葉で空が見えないと思った。
「ここだと見えづらくない?」
「……目的はこれだ」
「ええ?」
肩を抱かれて歩き始めると、木で出来た建物のそばまで行った。そして、さらに手を引かれて外に付いている木の階段を登って行くと、バルコニーのような場所に出た。ここなら星が見えそうだ。
「黒崎さーん、ここは何?」
「年明けからオープンする展望台だ」
「ええ?入ったらマズイじゃん……」
「今日から解放している。向こうを見てみろ。先客がいるだろう?」
「ああ、ホントだ。人が少ないね。あんまり知られていないのかな?」
「さっきの駐車場が観測に良いからだろう。カップルならイベントのほうへ行っている。ここに来ているのは、別の目的のカップルだ」
どこでもエロ発言をやめない人だと知った。見直したり見下したくなったりして、俺の心の中が忙しい。
「俺たちの目的は星空だよっ」
「分かっている。早く見ておけ。15分後にはタクシーが来る」
「えー?そんなに早く?」
「あのまま帰れば落ち込むだろうが。これでも譲っている」
「分かったよ~……」
空を見上げた。今の時間は南の方角にオリオン座が見えるはずだ。その方へ向くと、3つの星が輝いていた。
「黒崎さん。あの明るい星は分かるよね?赤いのがベテルギウス、青白いのがリゲルだよ」
「超新星爆発を引き起こすかもしれない星か」
「うん。オリオン座のベテルギウス、こいぬ座のプロキオン、おおいぬ座のシリウス、この3つの星を結んで出来る三角形を『冬の大三角』っていうんだ。シリウスって、輝きが強いだろ?『焼き焦がすもの』っていう意味があるんだよ……」
「夏樹……」
「うん?」
「たしかに、お前には焼き焦がされた」
「ええー?そんなにあっさり認めるなよ……」
マスクの下の顔が熱くなった。自分の息で蒸れてしまい、下にズラして顔を冷気に当てて冷やした。黒崎が笑ったから、胸がドキッとした。
「この間のブリの塩焼きは丸焦げだった。歌って踊っているからだ」
「なんだよ~っ」
「サンマもそうだった。ハムエッグも同じだ」
「せっかくいいムードだったのに~っ」
「ふんっ」
「機嫌を直せ。照れ隠しだ」
持っていた観光パンフレットで叩いてやった。コート越しだから痛くないと笑っている。そして、後ろから抱きしめられた。体が温かくなり、耳元では彼の息遣いを感じた。
空を見上げると、自分たちの真上にオリオン座があった。いつも一緒に見ている星座だ。そのまま無言で眺めているうちに、タクシーの時間が来てしまった。
「そろそろ時間だ」
「うん。また来ようね」
「ああ……」
さっきの階段を降りて行った。先に降りた黒崎から手を差し伸べられた。自然とその手を取ると、引き寄せられた。
「黒崎さん?」
「好きだ」
「ん……」
不意をつかれて腕の中に閉じ込められた。近づいてくる唇が重なり、ギリギリの時間までキスをしていた。満天の星空の下で。
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