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16-10(夏樹視点)
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翌日。2月15日、金曜日。午前6時。
昨夜の美味しい食事を思い出しつつ、オムレツに使う卵を割りほぐした。遠くのスーパーで買って来たトマトケチャップを使い、3種類の温野菜を添える。いつもよりも手をかけている。
「美味しそうなケチャップだな~」
昨夜はイチャついた。しかし、朝起きた時の黒崎には余韻がなくなり、完全にリセットされた様子だった。今日は大事な会議があるのだろうか?するとその時だ。背後から腕が回されてキスをされた。
「……夏樹。おはよう」
「黒崎さん、おはよう。洋食にしたよ」
「寝てろと言っただろう。昨夜は遅かった」
「いいんだよ~。朝ごはんは一緒に食べたいからさ。はい、新聞を読んでかてよ。もうすぐ出来るよ」
「ありがとう」
黒崎がリビングへ行くと、アンが出迎えていた。そして、彼女のことを抱き上げてソファーに座り、電子新聞を読み始めた。するとその時だ。スープ鍋をかき混ぜていると、ラインの着信音が鳴った。ちょうど今は手が離せない。あとで確認する。
ジューー。
フライパンに広がった卵液が音を立てた。手早くかき混ぜていると、また背中と首筋が温かくなった。その原因は黒崎で、さっきの続きをしている。
「朝ごはんが遅くなるよ?」
「今朝は機嫌がいいじゃないか」
「それはそうだよ、ウヘヘ」
「手が込んでいるようだぞ?」
「一品多いよ。俺はまだお腹が張ってるから、スープだけにするよ」
「昼はしっかり食べておけ」
「うん。これを昼ご飯にするから」
「いい子だ……」
昨夜の続きをするわけにはいかない。身をよじって抵抗すると、さらに抱きついてきたから、足を後ろに上げて軽く蹴ってやった。それでも嬉しそうにしている。
「おい。ウサギみたいだな」
「ウサギ年だもん。あんたはイノシシだったね。まっすぐに突き進んでいるからピッタリだよ。早瀬さんもウサギだよね?12歳年上だから。優しいから合っているよ」
「そうか?」
「なんで笑っているんだよ?柔らかいところが合ってるだろ~?」
「……あいつはトラだ」
「ええ?ウサギ年だよ?」
「中身がだ。俺よりも怖い」
「マジで?……今度は電話だ。黒崎さんの方だよ」
「ああ……」
黒崎がリビングへ行き、電話を取った。相手は遠藤さんだった。珍しいなと思いながら料理を皿に盛っていると、こっちへやって来た。
「……遠藤さんからだ。高宮さんから、お前のことを佐久弥のバンドのボーカルに推薦したいと話があったそうだ。来月のオーディションは中止だ。今日の14時に、IKUへ来てくれないかと言っている。悠人君にも声を掛けているそうだ」
「ええ?じゃあ、さっきのラインって……」
慌ててラインを見ると、やっぱり悠人からだった。連絡があったとおりの内容で、今日行かないか?というものだ。
「もちろん行くよ。先に遠藤さんへ返事を……」
「俺の方からしておく。悠人君へ電話をかけろ。待ち合わせ場所の段取りをしておけ」
「うんっ」
黒崎が遠藤さんへ折り返し連絡を初めて、俺は悠人へ電話をかけた。メンバーに決定というわけではなく、佐久弥が都内にいるから、スタジオで音合わせをしたいということだった。いきなりのことで心の準備が出来ていない。しかし、高宮さんが昨日のステージがよかったということで、できるだけ完成度を上げて披露しようと決めた。プロのミュージシャンとのセッションができるなんて、この先はないかもしれない。
お互いに電話を終えた後、顔を見合わせた。普段通りに振舞おうと話し合って、朝ごはんをスタートさせた。そして、黒崎の出勤を見送った後、受け取ったチョコレートを並べて、お返しリストを作成した。黒崎の仕事関係からも、自分宛に貰っている。夏樹君へと書かれたメッセージカードを広げた。田辺さんという専務取締役からだ。インターンシップの時に会った。
「『ステージの動画を観ました。今度は生ステージを観に行きます』か。嬉しいなあ。ライブはいつにするかな?帰ったら聡太郎君に聞いてみようっと……」
黒崎宛のカードの山を分けて、新作のうちわを作る準備をスタートさせた。嫌がる顔を思い浮かべながら。
昨夜の美味しい食事を思い出しつつ、オムレツに使う卵を割りほぐした。遠くのスーパーで買って来たトマトケチャップを使い、3種類の温野菜を添える。いつもよりも手をかけている。
「美味しそうなケチャップだな~」
昨夜はイチャついた。しかし、朝起きた時の黒崎には余韻がなくなり、完全にリセットされた様子だった。今日は大事な会議があるのだろうか?するとその時だ。背後から腕が回されてキスをされた。
「……夏樹。おはよう」
「黒崎さん、おはよう。洋食にしたよ」
「寝てろと言っただろう。昨夜は遅かった」
「いいんだよ~。朝ごはんは一緒に食べたいからさ。はい、新聞を読んでかてよ。もうすぐ出来るよ」
「ありがとう」
黒崎がリビングへ行くと、アンが出迎えていた。そして、彼女のことを抱き上げてソファーに座り、電子新聞を読み始めた。するとその時だ。スープ鍋をかき混ぜていると、ラインの着信音が鳴った。ちょうど今は手が離せない。あとで確認する。
ジューー。
フライパンに広がった卵液が音を立てた。手早くかき混ぜていると、また背中と首筋が温かくなった。その原因は黒崎で、さっきの続きをしている。
「朝ごはんが遅くなるよ?」
「今朝は機嫌がいいじゃないか」
「それはそうだよ、ウヘヘ」
「手が込んでいるようだぞ?」
「一品多いよ。俺はまだお腹が張ってるから、スープだけにするよ」
「昼はしっかり食べておけ」
「うん。これを昼ご飯にするから」
「いい子だ……」
昨夜の続きをするわけにはいかない。身をよじって抵抗すると、さらに抱きついてきたから、足を後ろに上げて軽く蹴ってやった。それでも嬉しそうにしている。
「おい。ウサギみたいだな」
「ウサギ年だもん。あんたはイノシシだったね。まっすぐに突き進んでいるからピッタリだよ。早瀬さんもウサギだよね?12歳年上だから。優しいから合っているよ」
「そうか?」
「なんで笑っているんだよ?柔らかいところが合ってるだろ~?」
「……あいつはトラだ」
「ええ?ウサギ年だよ?」
「中身がだ。俺よりも怖い」
「マジで?……今度は電話だ。黒崎さんの方だよ」
「ああ……」
黒崎がリビングへ行き、電話を取った。相手は遠藤さんだった。珍しいなと思いながら料理を皿に盛っていると、こっちへやって来た。
「……遠藤さんからだ。高宮さんから、お前のことを佐久弥のバンドのボーカルに推薦したいと話があったそうだ。来月のオーディションは中止だ。今日の14時に、IKUへ来てくれないかと言っている。悠人君にも声を掛けているそうだ」
「ええ?じゃあ、さっきのラインって……」
慌ててラインを見ると、やっぱり悠人からだった。連絡があったとおりの内容で、今日行かないか?というものだ。
「もちろん行くよ。先に遠藤さんへ返事を……」
「俺の方からしておく。悠人君へ電話をかけろ。待ち合わせ場所の段取りをしておけ」
「うんっ」
黒崎が遠藤さんへ折り返し連絡を初めて、俺は悠人へ電話をかけた。メンバーに決定というわけではなく、佐久弥が都内にいるから、スタジオで音合わせをしたいということだった。いきなりのことで心の準備が出来ていない。しかし、高宮さんが昨日のステージがよかったということで、できるだけ完成度を上げて披露しようと決めた。プロのミュージシャンとのセッションができるなんて、この先はないかもしれない。
お互いに電話を終えた後、顔を見合わせた。普段通りに振舞おうと話し合って、朝ごはんをスタートさせた。そして、黒崎の出勤を見送った後、受け取ったチョコレートを並べて、お返しリストを作成した。黒崎の仕事関係からも、自分宛に貰っている。夏樹君へと書かれたメッセージカードを広げた。田辺さんという専務取締役からだ。インターンシップの時に会った。
「『ステージの動画を観ました。今度は生ステージを観に行きます』か。嬉しいなあ。ライブはいつにするかな?帰ったら聡太郎君に聞いてみようっと……」
黒崎宛のカードの山を分けて、新作のうちわを作る準備をスタートさせた。嫌がる顔を思い浮かべながら。
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