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無事に薬を飲み終えた俺は一息ついて、すぐに背中の痒みが収まるだろうと期待した。もうしばらくの我慢である。咳き込んで顔が赤くなった俺のことを心配した月島さんが、俺に口直しにと、甘いカフェオレを買ってきてくれた。そして、早瀬が先にお礼を言ってくれた。
「すみません。ありがとうございます」
「いいんだよ。薬が苦いだろう。僕も飲んだことがある薬だ」
「頂きます。ふう……。甘くて美味しいそうだなあ。温かいし……」
プシュ。ホットカフェオレのペットボトルの蓋を開けると、ふんわりと甘い匂いが漂った。冬になると飲みたくなる味である。そして、俺はカフェオレを一口飲んだ。すると、口の中の苦みが収まった。
「美味しいです。もう口の中が苦くありません。月島さんも、さっきの俺のように、口の中で薬が溶けかけたことがあるんですか?」
「あるよ。僕は薬を飲む前に必ず食事をするんだ。胃を痛めると思っているんだ。いつも焼き芋を食べることにしている」
「ふむふむ……」
「あるとき、次の会議までに時間が無くて、焼き芋と薬を一緒に飲み込んだら喉に詰まって、息が止まりそうになった。部長室には誰も居なかったから、自分で何とかするしか無い」
「あああ……」
なんということか。芋は喉に詰まりやすい。飲み物と一緒に食べた方がいい。薬を飲むというからには、水を用意していたのだろう。それを飲んで生き返ったのだろうか。
「月島さん。大丈夫だったんですか?」
「ああ。おかげさまで、ここに居られている。あの時はグラスの水を飲んでも芋が取れなくて、自分で胸をトントンと叩いたんだ。孤独だったよ。しんと静まりかえった部屋の中で、苦しんでいる僕は一人きりだった。そこへ、ある社員が入ってきた。根川君という新入社員で、どこでもノックをするのを忘れてドアを開けるという評判の彼だった。その評判通りにノックなしにドアを開けて、苦しんでいる僕に駆け寄ってきた。そして、僕の背中を強く叩いて、芋が胃の中に入った。僕は助かったんだ」
「ほお……。失礼ながら、そういう彼で良かったですね。もしかすると、月島さんが不在だと思って去っていたかも知れません」
「そうなんだよ。なにが幸いするのか分からないということだ。そこで、お礼がしたいと思い、何か食べに行こうと声を掛けると、彼がこう言ったんだ。僕は大したことはしていませんと。謙遜していると思ったんだよ。しかし、頑なに僕と食事をするのを拒んでいるような気がしたから、霊感を使って彼の頭の中を読み取ると、変態で有名な月島部長に何かされるから食事に行きたくないという答えが出てきたんだ。そうなんだ。僕は変態で有名なんだ。しかしながら、社員や取引先には手を出さない。ただ男が好きなだけで変態扱いをされていたんだ。今でもそうだよ」
「なんということですか……。可哀想です……」
「いや、僕も悪いんだよ。男同士の出会いの場に出入りしているからだよ。“あのサウナ施設はそういう集まりの場だ、そういえば、月島部長がよく通っていると言っていたから真実なんだ”などの判断材料にまでされている。いや、僕は良いんだよ。そうして危険を回避することに繋がるならね……。でも、社内で男性社員を見る目が違うときはあると言われるのはショックだった。いや、僕が悪いんだよ。霊感を使って、僕に脈があるかどうか探っていたんだから。ついそうなってしまう。でも、ボディータッチはしていない。目でいやらしいことを考えているわけでも無い。ただ、僕と付き合っても良いかどうかを見ていたんだ」
「ふむふむ。霊視ということをそんなことに使うだなんて……、うひぇーーー?そんなことができるんですか?」
「ああ。僕は人の頭の中を覗けるんだ。覗けない人も居る。名前から性格などを読み取ることも出来るよ。でも、読み取れない人も居る」
「ほお……。それはどういう人なんですか?」
「僕と同じく霊感がある人だ。誰にでも備わっているものなんだけれど、使うようになるかどうかはその人次第になる。それで、霊感のある人は自分の名前に工事現場のバリケードを張るという細工をしている人が居る。頭の中にもだよ」
「ほお……。術使いですね。奥が深そうです」
「ちょっと、月島君!怪しい話はやめて、もう出ましょうよ!」
奥が深そうな話を聞きたくなって前のめりになると、アキラママが俺達のことを止めた。たしかにそうかと思った。こういう話は怪談話として、夏の夜に聞いてみたい。そういうことで、俺達は店を出ることにした。
「すみません。ありがとうございます」
「いいんだよ。薬が苦いだろう。僕も飲んだことがある薬だ」
「頂きます。ふう……。甘くて美味しいそうだなあ。温かいし……」
プシュ。ホットカフェオレのペットボトルの蓋を開けると、ふんわりと甘い匂いが漂った。冬になると飲みたくなる味である。そして、俺はカフェオレを一口飲んだ。すると、口の中の苦みが収まった。
「美味しいです。もう口の中が苦くありません。月島さんも、さっきの俺のように、口の中で薬が溶けかけたことがあるんですか?」
「あるよ。僕は薬を飲む前に必ず食事をするんだ。胃を痛めると思っているんだ。いつも焼き芋を食べることにしている」
「ふむふむ……」
「あるとき、次の会議までに時間が無くて、焼き芋と薬を一緒に飲み込んだら喉に詰まって、息が止まりそうになった。部長室には誰も居なかったから、自分で何とかするしか無い」
「あああ……」
なんということか。芋は喉に詰まりやすい。飲み物と一緒に食べた方がいい。薬を飲むというからには、水を用意していたのだろう。それを飲んで生き返ったのだろうか。
「月島さん。大丈夫だったんですか?」
「ああ。おかげさまで、ここに居られている。あの時はグラスの水を飲んでも芋が取れなくて、自分で胸をトントンと叩いたんだ。孤独だったよ。しんと静まりかえった部屋の中で、苦しんでいる僕は一人きりだった。そこへ、ある社員が入ってきた。根川君という新入社員で、どこでもノックをするのを忘れてドアを開けるという評判の彼だった。その評判通りにノックなしにドアを開けて、苦しんでいる僕に駆け寄ってきた。そして、僕の背中を強く叩いて、芋が胃の中に入った。僕は助かったんだ」
「ほお……。失礼ながら、そういう彼で良かったですね。もしかすると、月島さんが不在だと思って去っていたかも知れません」
「そうなんだよ。なにが幸いするのか分からないということだ。そこで、お礼がしたいと思い、何か食べに行こうと声を掛けると、彼がこう言ったんだ。僕は大したことはしていませんと。謙遜していると思ったんだよ。しかし、頑なに僕と食事をするのを拒んでいるような気がしたから、霊感を使って彼の頭の中を読み取ると、変態で有名な月島部長に何かされるから食事に行きたくないという答えが出てきたんだ。そうなんだ。僕は変態で有名なんだ。しかしながら、社員や取引先には手を出さない。ただ男が好きなだけで変態扱いをされていたんだ。今でもそうだよ」
「なんということですか……。可哀想です……」
「いや、僕も悪いんだよ。男同士の出会いの場に出入りしているからだよ。“あのサウナ施設はそういう集まりの場だ、そういえば、月島部長がよく通っていると言っていたから真実なんだ”などの判断材料にまでされている。いや、僕は良いんだよ。そうして危険を回避することに繋がるならね……。でも、社内で男性社員を見る目が違うときはあると言われるのはショックだった。いや、僕が悪いんだよ。霊感を使って、僕に脈があるかどうか探っていたんだから。ついそうなってしまう。でも、ボディータッチはしていない。目でいやらしいことを考えているわけでも無い。ただ、僕と付き合っても良いかどうかを見ていたんだ」
「ふむふむ。霊視ということをそんなことに使うだなんて……、うひぇーーー?そんなことができるんですか?」
「ああ。僕は人の頭の中を覗けるんだ。覗けない人も居る。名前から性格などを読み取ることも出来るよ。でも、読み取れない人も居る」
「ほお……。それはどういう人なんですか?」
「僕と同じく霊感がある人だ。誰にでも備わっているものなんだけれど、使うようになるかどうかはその人次第になる。それで、霊感のある人は自分の名前に工事現場のバリケードを張るという細工をしている人が居る。頭の中にもだよ」
「ほお……。術使いですね。奥が深そうです」
「ちょっと、月島君!怪しい話はやめて、もう出ましょうよ!」
奥が深そうな話を聞きたくなって前のめりになると、アキラママが俺達のことを止めた。たしかにそうかと思った。こういう話は怪談話として、夏の夜に聞いてみたい。そういうことで、俺達は店を出ることにした。
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