森林の星空少年~あの日のメエメエ

夏目奈緖

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 さて、俺はどうしようか。さっきはこの後で自分で電話を掛けて鑑定を頼む気でいたが、久弥が聞きたいことを聞いてくれた。俺と早瀬は離れられないカップルということで満足できた。他に何かないだろうか。
 
「ふむふむ。ジュエル先生にはまたお店に行きますって言ってあるし、そうしようっと……」
「悠人。占い師の写真を見てくれ。人によって様々だ」
「うん。ジュエル先生はお店で撮った写真だよ。普通のお姉さんって感じでいいよね。ふむふむ。久弥が最初に占って貰おうとしていたラグドール先生は、この人だね。ほお……」
「派手さで選んだ」
「ふむふむ。本人がデザインして撮っているのかな?」

 どうしよう?ラグドール先生のプロフィール写真に惹かれてしまった。黒いベールを頭からかぶり、顔を出している。手には黒い扇子を持っている。そして、オホホホと笑っているような仕草をしている。背景は合成で、淡いブルーを基調としたものになっている。

 こういう写真はプロのカメラマンが撮るのだろう。占い師専属カメラマンというものである。小物であるとか、イメージを沸き立たせるようにしてアイデアを出しているのだろう。それとも、スタイリストがついているのか、本人が考えたものなのか。とにかく特徴的なのは、目が惹かれるという点である。

「ひさやーー。俺、仕事運を占って貰おうかな?」
「そうだなーーー。興味があるんだよなーー。お前には悪いから、俺が占って貰うことにする」
「俺は占って貰いたいよーーーー」

 そう言って、俺は久弥の手を止めた。俺だって占いに興味がある。やっぱりジュエル先生にお願いしようか。そんなことを考えていると、久弥がラグドール先生の予約を取り始めた。今すぐに鑑定できるというものだ。ちょうど待機中とのことで、すぐに受けられる。

「よーーし、仕事運を占って貰う」
「分かったよーーー。俺はお店に行って、ジュエル先生に占って貰うよ」
「お前は人見知りなところがある。まずは俺から占って貰う。そこで良さそうなら、お前も占って貰え」
「うん。ドキドキ……」
「さあ、電話が繋がったぞ。もしもしーーー」
「ラグドールでございます」

 電話の向こうからラグドール先生の声がした。写真より落ち着いた感じがする。もっと煌びやかかと思っていた。それと、テンションの高い人という印象だ。そして、それとは真逆で、低音ボイスの先生かと思っていた。

「俺の仕事運を占って貰いたいです。職業は音楽業です。プロデューサーもしています」
「かしこまりました。久弥さんですね。あの……、アカウントの氏名欄に佐伯久弥さんとありますが、本名ですよね?」
「はい。本名です」
「TDDというバンドをされていますよね?やだ、本物?失礼しました。テンションが高くなりました」
「名前を知って貰えていて嬉しいです」
「ほお……」

 どうしよう?まさか久弥のことを知っている人だとは思わなかった。それだけテレビに出ているということか。音楽でも有名だということなら嬉しい。しかし、今は占いの時間である。ラグドール先生が鑑定しますと言った。

「私の占術は霊感・霊視です。久弥さんのオーラから見ていきます。分かりました。今、どこか身体の不調がありませんか?声帯の調子が悪いと出ています」
「そうです。声帯を痛めています」
「1年ぐらいは悩みます。あら、もしかして、引退を考えていませんか?音楽業界には残りたいけど、できないみたいなことが見えてきました」
「はい。その通りです」
「うひぇーーー」

 どうしよう?その通りである。久弥はソロ活動で歌いまくって声帯を痛めており、日常生活でも困っているほどだ。そこで、バンドをやめて、プロデューサー業1本に仕事を絞ろうとしている。完全に裏方にもなりたいと言っている。TDDというバンドが始まったばかりだが、今回のバンドも短期間で終わりだ。それまでは楽曲を出して、ミニコンサートもやって、ステージをやりたいと話している。もちろん、久弥のソロも引退だ。

「ラグドール先生、俺は音楽業界には残ることを望んでいましたが、何もしない人生も良いかと思っています」
「それはいけません。あなたは音楽業界に残る人です。来年まで忙しくされるはずですし、声帯も良くなりますよ。身体の不調が整う感じです」
「そうですか。続けた方が良いですか」
「はい。私が久弥さんのファンだから言っているのでは無く、占い師として鑑定して、そう導き出しました。歌っている姿も見えます。大丈夫ですよ。今までは大きな波がありましたが、これからは昔よりもなだらかになります。敵と言いますか、大変仲の悪い人が居るでしょう」
「たくさんいます」
「その中で打ち解ける存在が出てきます。でも、仲良くなるのは要注意です。あなた方をもう一度喧嘩させようと企んでいる人が居ます」
「EMIRIのことかな。彼はずっと前のバンドで一緒でした」
「その人とはちょっとねーーー。もう仲が良くなることはありません。でも、争いも起きません。ただし、これから10年間の間だけです。その後は久弥さんの運気が変わりますので、今ここで断言できません」
「そうですかーーー。あいつの名前を出すなんてなーーー。はあ。俺、仲良くなりたいと思っていました」
「ダメなんですよ。かくかくしかじかです」
「そうですか。かくかくしかじかですか」
「ふむふむ。丁寧な感じの先生だなーーーー」

 写真は派手だったが、丁寧な語り口の先生だと思った。久弥の声帯のことを当てるなんてすごいと思った。そして、他にも言い当てられて30分が過ぎ、これで大丈夫ですと言い、久弥が電話を置いた。俺は数々の的中に驚き、自分もイシスのサイトに会員登録した。
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