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母はホッとした顔をしていた。俺が口答えをしなかったからだろう。父は眉を寄せて俺のことを見ていた。睨みつけるのではなく、後悔というものが顔に書いてあった。本当に2人は真逆だ。すると、母が言った。
「お母さん達は安心していたの。あなたがしっかりしているからよ。負けず嫌いで、頑張る子だし……」
「うん……」
母からの感想を頷いて聞いた。そして、両親とひと通りの話を終えて、お互いに納得した流れになった。この後、IKUの関係者に会う約束をしているから、そろそろ会場に戻る必要がある。それを俺が言うと、次に会う約束をしないまま、母が帰ろうとした。父は立ち止まったままだ。
「お母さん、じゃあね」
「また連絡をするから、お食事しましょう」
「うん……」
「待って下さい」
「え?」
このまま別れようとすると、早瀬が間に入ってきた。その横顔は怒っていた。俺のことを叱る時よりも険しいものだ。そして、早瀬が母に言った。
「それだけですか?」
「それだけって?」
「悠人君のことを、しっかりしている、負けず嫌いだと仰いましたが、現実は違いますよ。批判され続けて来たことで、よく出来た自分を認められません。負けず嫌いなのは、期待に応えないと生きていけないという危機感からです。食べ物を与えられないと思い込むからですよ。そうやって育って来たから、人の顔色を窺がう子になったんです。悠人を支配するのをやめてください。心の底から彼に会いたいと思った時に、ご連絡ください」
「裕理さん……」
ここまで俺に向かい合ってくれたのか。こんな人に出会えたなら、なおさら両親には有難うと言える。早瀬が険しい顔で母のことを見続けているが、母は何も言わなかった。そして、ここで気になることが出来た。母が早瀬から責められている状況なのに、それを見ているだけの父に腹が立った。
「お父さん、何か言わないの?」
「何をだ?」
父から問い返された。早瀨の怒りがもっともだと思ったのだろうか。しかし、母は父の妻だ。自分の妻が男から睨み付けられている。助けようとは思わないのか。だからこそ、母との関係が歪んでいったのだろう。無関心なのか臆病なのかは関係ない。俺は父の胸ぐらを掴んで睨みつけた。
「お父さん!どうして黙っているんだよ?お母さんが責められているんだよ?何か言えよ!」
「悠人……」
「だから壊れたんだろ!?……子供をおろせ、無事に生まれてから結婚するなんて言っても、心を入れ替えたら良かったんだよ!このままなら、新しい人とも壊れるからね……。同じことの繰り返しだよ!さっきから聞いていて、まともなことを言っているけど、信用できないんだよ。顔を洗って出直して来い!」
ドン!
父の体を押して、噴水へ突き落とそうとした。それを何度も繰り返そうとすると、母の手が横から伸びて来て、俺の両腕を押さえ込んだ。
「悠人!やめなさい!」
「お母さん、何で庇うんだよ!?」
「どっちが悪いということはないからよ。ごめんなさい……」
母が必死になって謝ってきた。両目には涙が滲み、真っ赤になっていた。これ以上は乱暴なことが出来ないと思っていると、早瀬から抱きしめられた。
「よくやったね。これで呪いが解けたよ。おめでとう」
「裕理さん……」
「いい子だ。さあ、向こうへ行こう」
早瀬がそう言って手を握ってくれた。さっきまでの険しさのある表情が消えて、優しい笑顔を浮かべていた。俺はどういうことが分からず、立ちすくんだ。早瀬はこう言った。お母さんは今までお父さんから庇われることがなかった強い女性なのだろうと。そういうお母さんのことをかばった君は男らしいと褒めてくれた。お母さんがやっと泣いて、お父さんのことを庇った。息子の君にしかできないことだ。大人になったね。そう言ってくれた。
「お母さん達は安心していたの。あなたがしっかりしているからよ。負けず嫌いで、頑張る子だし……」
「うん……」
母からの感想を頷いて聞いた。そして、両親とひと通りの話を終えて、お互いに納得した流れになった。この後、IKUの関係者に会う約束をしているから、そろそろ会場に戻る必要がある。それを俺が言うと、次に会う約束をしないまま、母が帰ろうとした。父は立ち止まったままだ。
「お母さん、じゃあね」
「また連絡をするから、お食事しましょう」
「うん……」
「待って下さい」
「え?」
このまま別れようとすると、早瀬が間に入ってきた。その横顔は怒っていた。俺のことを叱る時よりも険しいものだ。そして、早瀬が母に言った。
「それだけですか?」
「それだけって?」
「悠人君のことを、しっかりしている、負けず嫌いだと仰いましたが、現実は違いますよ。批判され続けて来たことで、よく出来た自分を認められません。負けず嫌いなのは、期待に応えないと生きていけないという危機感からです。食べ物を与えられないと思い込むからですよ。そうやって育って来たから、人の顔色を窺がう子になったんです。悠人を支配するのをやめてください。心の底から彼に会いたいと思った時に、ご連絡ください」
「裕理さん……」
ここまで俺に向かい合ってくれたのか。こんな人に出会えたなら、なおさら両親には有難うと言える。早瀬が険しい顔で母のことを見続けているが、母は何も言わなかった。そして、ここで気になることが出来た。母が早瀬から責められている状況なのに、それを見ているだけの父に腹が立った。
「お父さん、何か言わないの?」
「何をだ?」
父から問い返された。早瀨の怒りがもっともだと思ったのだろうか。しかし、母は父の妻だ。自分の妻が男から睨み付けられている。助けようとは思わないのか。だからこそ、母との関係が歪んでいったのだろう。無関心なのか臆病なのかは関係ない。俺は父の胸ぐらを掴んで睨みつけた。
「お父さん!どうして黙っているんだよ?お母さんが責められているんだよ?何か言えよ!」
「悠人……」
「だから壊れたんだろ!?……子供をおろせ、無事に生まれてから結婚するなんて言っても、心を入れ替えたら良かったんだよ!このままなら、新しい人とも壊れるからね……。同じことの繰り返しだよ!さっきから聞いていて、まともなことを言っているけど、信用できないんだよ。顔を洗って出直して来い!」
ドン!
父の体を押して、噴水へ突き落とそうとした。それを何度も繰り返そうとすると、母の手が横から伸びて来て、俺の両腕を押さえ込んだ。
「悠人!やめなさい!」
「お母さん、何で庇うんだよ!?」
「どっちが悪いということはないからよ。ごめんなさい……」
母が必死になって謝ってきた。両目には涙が滲み、真っ赤になっていた。これ以上は乱暴なことが出来ないと思っていると、早瀬から抱きしめられた。
「よくやったね。これで呪いが解けたよ。おめでとう」
「裕理さん……」
「いい子だ。さあ、向こうへ行こう」
早瀬がそう言って手を握ってくれた。さっきまでの険しさのある表情が消えて、優しい笑顔を浮かべていた。俺はどういうことが分からず、立ちすくんだ。早瀬はこう言った。お母さんは今までお父さんから庇われることがなかった強い女性なのだろうと。そういうお母さんのことをかばった君は男らしいと褒めてくれた。お母さんがやっと泣いて、お父さんのことを庇った。息子の君にしかできないことだ。大人になったね。そう言ってくれた。
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