海のそばの音楽少年~あの日のキミ

夏目奈緖

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14-1 新しい家族への高速道路

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 11月16日、金曜日。午前5時半。

 コトコト、カタカタ……。

 キッチンへ入り、味噌汁を用意しているところだ。我が家の朝はパン派だが、早瀬が喜んでくれているから自信を持って作っている。仕事で疲れているだろうから、朝はゆっくりしてもらいたくて、今朝は俺一人で朝ご飯の支度をしている。味噌汁づくりの練習という口実を使った。まだ晩ご飯までは手が伸びない。まずは簡単なところからだ。

「いい匂いだなあ。成功したみたいだー」

 そろそろ、早瀬を起こす時間だ。多忙になり、起きる時間が少し遅くなった。それだけ疲れているということだ。

 ガチャ。寝室のドアを開けると、すでに目を覚ましていた。ベッドに腰かけて両腕を伸ばしている。

「ゆうりさーん、おはよう!」
「悠人君、おはよう」
「朝ごはん、もうすぐ出来るよ」
「ありがとう。おいで」
「やだ!」
「こっちにおいで」
「やだってば!シャワーを浴びてきてよ」
「ダーメ、こっちに来い」
「わわわっ」

 手早く捕らえられて、ベッドに倒れ込んだ。首筋に顔を埋められて頬ずりされた挙句の果てに、キスマークまで付けられた。

「裕理さん!起きろって」
「……起きるよ。目を覚ましたい。エプロンっていいね……」
「ああー、夏樹が言っていたよ。黒崎さんが変態だって」
「その気持ちが分かる。いいもんだね……」
「ひいいい……。トリャーー!」

 ニットを脱がされかけて、裾を掴んで阻止した。危機というものを乗り越えて、キッチンへ帰還した。

 早瀬がシャワーを浴びている間に、テーブルへ料理を並べた。こうすれば襲われずに済む。いくら忙しくても、そういうことは変わらずにしている。その分の体力を温存すればいいのにと言うと、頑張ったご褒美だと言い返された。書斎へ珈琲を持っていけば、机の上で抱かれそうになった。

 これでよし。息をついていると、背後から抱きつかれた。さっぱりした匂いが鼻をくすぐり、エプロンの中に手が入ってきた。

「美味しそうな朝ごはんだね」
「そうだろー?チーズトースト、味噌汁、サラダ、昨日の残り物」
「残り物?ああ、君が焼いてくれた厚焼き玉子もどきか」
「へへへ……」
「どんな形でも美味しいよ」
「げえええっ」
「さあ、食べようか」
「うええええっ」

 吸引力がいいキスの後、軽く噛みつかれた。そして、俺からの蹴りをを容易く避けると、早瀬が楽しそうに笑いながら椅子に座った。俺は背後に警戒をしながら、コーヒーメーカーのポットを手に取った。
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