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3-1 黒崎の誕生日
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12月10日、土曜日。午前9時
今日は黒崎の34歳の誕生日だ。遊園地に遊びに行くことになった。今、そこへ向かう途中の、高速道路パーキングエリアにいる。たこ焼きやスイーツの店が並び、良い匂いがしてきている。食べるならどれがいいかと悩んだ結果、ソフトクリームをテイクアウトした。
(あれからまだ少ししか経っていないんだなあ。もっと前のような気がする……)
今から向かう遊園地には、4ヶ月前に行った。まだ手探り状態の付き合いをしていたのが、今になって分かる。恋人同士になった後、気持ちのすれ違いが起きていた。悪い意味ではなくて、お互いのことを大切に想い、良かれと思ってしたことが裏目に出ていた。たぶんそういうことだ。
その後で俺たちがたどり着いたのは、度を越した気遣いをしない日々を過ごすことだった。空回りするのは仕方がないと話し合った。
どんなカップルでも起こることだと思う。俺達は、これからどうしていくのかを話し合った。遠慮なく向かい合った結果、今の俺たちが出来上がった。隣を歩く黒崎に声をかけると、彼が微笑んだ。楽しんでくれていることが分かり、嬉しくなった。
「今日はいい天気だね。観覧車からの眺めが良さそうだよ。黒崎さーん。たこ焼きを食べない?」
「向こうに着いてから食事をする。ソフトクリームを食べた後だろう。昼食が入らないからやめておけ」
「遊びに来たんだよ?いいじゃん……」
「例外をつくらない。食べた後のデザートなら構わない。入らないなら諦めろ」
「もうー、この石頭!お母さんから頼まれているからって……。もうすぐ大学生だよ?えい!」
ソフトクリームを指先に取って、黒崎の口につけてやった。本当は甘い物が食べられるのに、あえて食べようとしない。口についたクリームを嫌がっている。
「やめろ」
「仕返しだよ~」
「指がベタベタになっているぞ。車に乗る前に洗って来い。そろそろ出るぞ」
たしかにその通りだと思った。俺がトイレの洗面所に行こうとすると、黒崎が反対方向へ歩き出した。付き添わないつもりだろうか。夏にここに来たときは、何も言わずに一緒に来てくれていたのに。
「トイレはこっちだよ?」
「先に車に戻っている」
「ついて来てよ」
「すぐそこだろう。表示が見えている」
「広いから遠いよ。コンタクトをしても、大して視力は良くないんだ。ここからじゃ表示が見えないよ」
「近くまで行って確かめろ。甘やかすとは言ったが、一人で出歩けない子にさせたくない。これでも努力している」
どんどん黒崎の姿が遠ざかっていく。こっちに来るまでトイレに行かないと主張すると、黒崎が振り返った。
「置いていくぞ。さっさと手を洗って来い」
「……」
「本当に置いていくぞ」
「迎えに来るまで待ってるから」
「夏樹」
「うん……」
叱られる。そう思ってうつむいた。みっともないことは自覚している。こんな些細なことで手を焼かせていることも。顔を上げようとした時、急に肩回りが温かくなり、抱き寄せられたことが分かった。お前には根負けしたと苦笑された。
「く、黒崎さん?」
「さっさと来い」
「うん……」
「俺から離れるな」
「う……っ」
不意を突かれて、胸がキュンとした。急に照れくさくなり、逃げるようにしてトイレへ向かった。そういう俺を見て、一人で行けるじゃないかと言い、黒崎が意地悪そうに笑っていた。
今日は黒崎の34歳の誕生日だ。遊園地に遊びに行くことになった。今、そこへ向かう途中の、高速道路パーキングエリアにいる。たこ焼きやスイーツの店が並び、良い匂いがしてきている。食べるならどれがいいかと悩んだ結果、ソフトクリームをテイクアウトした。
(あれからまだ少ししか経っていないんだなあ。もっと前のような気がする……)
今から向かう遊園地には、4ヶ月前に行った。まだ手探り状態の付き合いをしていたのが、今になって分かる。恋人同士になった後、気持ちのすれ違いが起きていた。悪い意味ではなくて、お互いのことを大切に想い、良かれと思ってしたことが裏目に出ていた。たぶんそういうことだ。
その後で俺たちがたどり着いたのは、度を越した気遣いをしない日々を過ごすことだった。空回りするのは仕方がないと話し合った。
どんなカップルでも起こることだと思う。俺達は、これからどうしていくのかを話し合った。遠慮なく向かい合った結果、今の俺たちが出来上がった。隣を歩く黒崎に声をかけると、彼が微笑んだ。楽しんでくれていることが分かり、嬉しくなった。
「今日はいい天気だね。観覧車からの眺めが良さそうだよ。黒崎さーん。たこ焼きを食べない?」
「向こうに着いてから食事をする。ソフトクリームを食べた後だろう。昼食が入らないからやめておけ」
「遊びに来たんだよ?いいじゃん……」
「例外をつくらない。食べた後のデザートなら構わない。入らないなら諦めろ」
「もうー、この石頭!お母さんから頼まれているからって……。もうすぐ大学生だよ?えい!」
ソフトクリームを指先に取って、黒崎の口につけてやった。本当は甘い物が食べられるのに、あえて食べようとしない。口についたクリームを嫌がっている。
「やめろ」
「仕返しだよ~」
「指がベタベタになっているぞ。車に乗る前に洗って来い。そろそろ出るぞ」
たしかにその通りだと思った。俺がトイレの洗面所に行こうとすると、黒崎が反対方向へ歩き出した。付き添わないつもりだろうか。夏にここに来たときは、何も言わずに一緒に来てくれていたのに。
「トイレはこっちだよ?」
「先に車に戻っている」
「ついて来てよ」
「すぐそこだろう。表示が見えている」
「広いから遠いよ。コンタクトをしても、大して視力は良くないんだ。ここからじゃ表示が見えないよ」
「近くまで行って確かめろ。甘やかすとは言ったが、一人で出歩けない子にさせたくない。これでも努力している」
どんどん黒崎の姿が遠ざかっていく。こっちに来るまでトイレに行かないと主張すると、黒崎が振り返った。
「置いていくぞ。さっさと手を洗って来い」
「……」
「本当に置いていくぞ」
「迎えに来るまで待ってるから」
「夏樹」
「うん……」
叱られる。そう思ってうつむいた。みっともないことは自覚している。こんな些細なことで手を焼かせていることも。顔を上げようとした時、急に肩回りが温かくなり、抱き寄せられたことが分かった。お前には根負けしたと苦笑された。
「く、黒崎さん?」
「さっさと来い」
「うん……」
「俺から離れるな」
「う……っ」
不意を突かれて、胸がキュンとした。急に照れくさくなり、逃げるようにしてトイレへ向かった。そういう俺を見て、一人で行けるじゃないかと言い、黒崎が意地悪そうに笑っていた。
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