304 / 514
21-30
しおりを挟む
バッグから取り出したトラ顔のTシャツを、テーブルの上に広げた。そして、黒のマジックを使って書き込んだ。布だから引っかかって難しい。自分の字なのに判読不能だ。その代わりに、大きく書いた。
「……TDD、IKU、俺。……俺のことだよ!そのMIDSHIPと、こっちのTシャツ。ここで選べよ。俺のことが嫌いなの?」
「な、なつき……、そんな……」
「どっちを選んでも嫌わないよ。少し泣くけど、慰めてくれたらいい。俺のTシャツが選べないのかよー?」
「もう……。仕方ないねー……」
「うんうん。このデザイン、カッコいいだろ?」
「こっちにするよー!」
悠人が俺のTシャツに両手を伸ばした。選んでくれたのかと、ホッとした。 さっそく、パーテーションの奥へ連れて行こうと促すと、悠人が俺のTシャツの裾を引っ張り、持ち上げてきた。一気に頭から引き抜かれそうになり、慌てて阻止した。
「これは、俺のTシャツだよ~~っ」
「俺のTシャツだろ?これを選んだよ!キミはそっちのTシャツを着ろよー。ひさやー、手伝ってよ」
「いやー、黒崎さんが怖いからやめておく」
「どっちかにしろよ~。転ぶって……」
「ひさやー、邪魔するなよー」
「わあ~~」
悠人から脱がされかけて、久弥から裾を下ろされた。何度も繰り返すから、大きめサイズでも息苦しい。どっちかにしろよと逃げても追いかけて来るから、黒崎の後ろに隠れた。
「黒崎さーん、悠人が脱がすよ~……」
「お前の方が文字入りを着ておけ。今更だ。……こっちは汗をかいているぞ、いいのか?」
「はい、汗臭い方がいいです。慣れているので。ステージで……っ、……っ」
「よーし、俺の分を着ろよ」
勢いよく脱いだ。それを悠人が受け取った後、パーテーションの奥へ走って行った。自分だけ向こうで着替えるのか?もちろん追いかけて行った。
「ゆうとー、こっちで着替えろよーー」
「恥ずかしいからだよ。肩の赤いヤツ、隠せよ。大きめだよ。もうーー」
「あ、あの……。ヒャーー」
ここへ来る車の中で付けられていたのを忘れていた。今さら遅いのは、渇いた笑い声で知った。張本人のくせに。
悠人が向こうで着替えている間に、俺はテーブルの前で着替えた。黒崎が笑わないから見上げると、とても優しい顔をしていた。さっそく文字をイジってきた。
「……個性的な字だ。何を書いているのか分からないから、良かったじゃないか。デザインの一部に見える」
「あんたの笑顔が救いだよ。ああーー、張り紙が飛んでいったよーー」
セロテープの力が弱まっていた。相談コーナーから、漠然とした不安という紙が、理学部棟の向こうへ舞い飛んだ。蝶々さがしをした芝生へと。そこへ、悠人がパーテーションから出てきた。張り紙がなかったから驚いている。その様子に笑いが起きた。
「ゆうとー、漠然とした不安が飛んで行ったよ~」
「見たかったよー。夏樹、うん……」
「はいはい。早瀬さんの方へ行けよ。俺の方は後でいいから……」
急に目頭が熱くなった。黒崎の胸元で拭いていると、悠人に背後から抱きつかれた。まるで、サンドイッチの具材になったかのようだ。
「……TDD、IKU、俺。……俺のことだよ!そのMIDSHIPと、こっちのTシャツ。ここで選べよ。俺のことが嫌いなの?」
「な、なつき……、そんな……」
「どっちを選んでも嫌わないよ。少し泣くけど、慰めてくれたらいい。俺のTシャツが選べないのかよー?」
「もう……。仕方ないねー……」
「うんうん。このデザイン、カッコいいだろ?」
「こっちにするよー!」
悠人が俺のTシャツに両手を伸ばした。選んでくれたのかと、ホッとした。 さっそく、パーテーションの奥へ連れて行こうと促すと、悠人が俺のTシャツの裾を引っ張り、持ち上げてきた。一気に頭から引き抜かれそうになり、慌てて阻止した。
「これは、俺のTシャツだよ~~っ」
「俺のTシャツだろ?これを選んだよ!キミはそっちのTシャツを着ろよー。ひさやー、手伝ってよ」
「いやー、黒崎さんが怖いからやめておく」
「どっちかにしろよ~。転ぶって……」
「ひさやー、邪魔するなよー」
「わあ~~」
悠人から脱がされかけて、久弥から裾を下ろされた。何度も繰り返すから、大きめサイズでも息苦しい。どっちかにしろよと逃げても追いかけて来るから、黒崎の後ろに隠れた。
「黒崎さーん、悠人が脱がすよ~……」
「お前の方が文字入りを着ておけ。今更だ。……こっちは汗をかいているぞ、いいのか?」
「はい、汗臭い方がいいです。慣れているので。ステージで……っ、……っ」
「よーし、俺の分を着ろよ」
勢いよく脱いだ。それを悠人が受け取った後、パーテーションの奥へ走って行った。自分だけ向こうで着替えるのか?もちろん追いかけて行った。
「ゆうとー、こっちで着替えろよーー」
「恥ずかしいからだよ。肩の赤いヤツ、隠せよ。大きめだよ。もうーー」
「あ、あの……。ヒャーー」
ここへ来る車の中で付けられていたのを忘れていた。今さら遅いのは、渇いた笑い声で知った。張本人のくせに。
悠人が向こうで着替えている間に、俺はテーブルの前で着替えた。黒崎が笑わないから見上げると、とても優しい顔をしていた。さっそく文字をイジってきた。
「……個性的な字だ。何を書いているのか分からないから、良かったじゃないか。デザインの一部に見える」
「あんたの笑顔が救いだよ。ああーー、張り紙が飛んでいったよーー」
セロテープの力が弱まっていた。相談コーナーから、漠然とした不安という紙が、理学部棟の向こうへ舞い飛んだ。蝶々さがしをした芝生へと。そこへ、悠人がパーテーションから出てきた。張り紙がなかったから驚いている。その様子に笑いが起きた。
「ゆうとー、漠然とした不安が飛んで行ったよ~」
「見たかったよー。夏樹、うん……」
「はいはい。早瀬さんの方へ行けよ。俺の方は後でいいから……」
急に目頭が熱くなった。黒崎の胸元で拭いていると、悠人に背後から抱きつかれた。まるで、サンドイッチの具材になったかのようだ。
0
あなたにおすすめの小説
伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい
マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。
最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡)
世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。
サラリーマン二人、酔いどれ同伴
風
BL
久しぶりの飲み会!
楽しむ佐万里(さまり)は後輩の迅蛇(じんだ)と翌朝ベッドの上で出会う。
「……え、やった?」
「やりましたね」
「あれ、俺は受け?攻め?」
「受けでしたね」
絶望する佐万里!
しかし今週末も仕事終わりには飲み会だ!
こうして佐万里は同じ過ちを繰り返すのだった……。
鬼上司と秘密の同居
なの
BL
恋人に裏切られ弱っていた会社員の小沢 海斗(おざわ かいと)25歳
幼馴染の悠人に助けられ馴染みのBARへ…
そのまま酔い潰れて目が覚めたら鬼上司と呼ばれている浅井 透(あさい とおる)32歳の部屋にいた…
いったい?…どうして?…こうなった?
「お前は俺のそばに居ろ。黙って愛されてればいい」
スパダリ、イケメン鬼上司×裏切られた傷心海斗は幸せを掴むことができるのか…
性描写には※を付けております。
鎖に繋がれた騎士は、敵国で皇帝の愛に囚われる
結衣可
BL
戦場で捕らえられた若き騎士エリアスは、牢に繋がれながらも誇りを折らず、帝国の皇帝オルフェンの瞳を惹きつける。
冷酷と畏怖で人を遠ざけてきた皇帝は、彼を望み、夜ごと逢瀬を重ねていく。
憎しみと抗いのはずが、いつしか芽生える心の揺らぎ。
誇り高き騎士が囚われたのは、冷徹な皇帝の愛。
鎖に繋がれた誇りと、独占欲に満ちた溺愛の行方は――。
【完結】抱っこからはじまる恋
* ゆるゆ
BL
満員電車で、立ったまま寄りかかるように寝てしまった高校生の愛希を抱っこしてくれたのは、かっこいい社会人の真紀でした。接点なんて、まるでないふたりの、抱っこからはじまる、しあわせな恋のお話です。
ふたりの動画をつくりました!
インスタ @yuruyu0 絵もあがります。
YouTube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます。
プロフのwebサイトから飛べるので、もしよかったら!
完結しました!
おまけのお話を時々更新しています。
BLoveさまのコンテストに応募しているお話を倍以上の字数増量でお送りする、アルファポリスさま限定版です!
名前が * ゆるゆ になりましたー!
中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!
【完結・BL】胃袋と掴まれただけでなく、心も身体も掴まれそうなんだが!?【弁当屋×サラリーマン】
彩華
BL
俺の名前は水野圭。年は25。
自慢じゃないが、年齢=彼女いない歴。まだ魔法使いになるまでには、余裕がある年。人並の人生を歩んでいるが、これといった楽しみが無い。ただ食べることは好きなので、せめて夕食くらいは……と美味しい弁当を買ったりしているつもりだが!(結局弁当なのかというのは、お愛嬌ということで)
だがそんなある日。いつものスーパーで弁当を買えなかった俺はワンチャンいつもと違う店に寄ってみたが……────。
凄い! 美味そうな弁当が並んでいる!
凄い! 店員もイケメン!
と、実は穴場? な店を見つけたわけで。
(今度からこの店で弁当を買おう)
浮かれていた俺は、夕飯は美味い弁当を食べれてハッピ~! な日々。店員さんにも顔を覚えられ、名前を聞かれ……?
「胃袋掴みたいなぁ」
その一言が、どんな意味があったなんて、俺は知る由もなかった。
******
そんな感じの健全なBLを緩く、短く出来ればいいなと思っています
お気軽にコメント頂けると嬉しいです
■表紙お借りしました
好きです、今も。
めある
BL
高校の卒業式に、部活の後輩・安達快(あだち かい)に告白した桐越新(きりごえ あらた)。しかし、新は快に振られてしまう。それから新は大学へ進学し、月日が流れても新は快への気持ちを忘れることが出来ないでいた。そんな最中、二人は大学で再会を果たすこととなる。
ちょっと切なめな甘々ラブストーリーです。ハッピーエンドです。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる