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あの日の仕返しなのか。嬉しい仕返しだ。黒崎製菓のロビーで遊んでしまった日だ。さすがに暑くなり、早瀬さんに助けを求めた。悠人が離れようとしないのを優しく促して、引き離してくれた。
「なつきー、前後ろが逆だよーー」
「ああー。着替え直しだ。あれ、黒崎さん?」
「久弥さんからだ。このストールを羽織っておけ」
「暑いって……」
「……もう外で脱ぐな」
頭からストールを羽織らされた。紺と白が混ざった物で、久弥が使うのは珍しい。赤やワイン色が多いのに。半泣きの悠人が注目されないように、ストールをはためかせて遊んだ。
神仙教授はどこだろう?きょろきょろ見回した後、声をあげた。教授が一貴さんのことを押しのけている。藤沢が身じろいでいるから、また何かやっているのか。止めるのをやめておこう。
反対方向を見ていると、聡太郎が電話をかけながら歩いて来るのが見えた。そして、早瀬さんへ電話が入った。すぐ近くの位置なのに。
聡太郎の答えはどうだろう?出たのかな?胸の鼓動が跳ねて来て、どうも落ち着かない。こういう素振りを見せるとプレッシャーになりかねない。ショールを頭からかぶって誤魔化した。
「久弥、紺色と白は珍しいね?いつもは赤系だからさ。初めて見た気がするよ~」
「赤い色味は戦いの意味だった。自分を奮い立たせなくてもいいって思えたからだ。……裕理、何かあったのか?……黒崎さんが来る。こっちにいろ」
「……そいつなのか?どちらか分からない。夏樹、こっちへ来い」
「う、うん。どうしたの?」
いきなり黒崎から肩を抱かれて、教授の方へ連れて行かれた。肩へ羽織っているショールを頭から被せられて、視界が遮られた。それでも強引に歩き進んで行く。教授のシャツが動き、芝生の方へ向かったのが分かった。どうしたんだろう?その声が出て来なかった。
「あ……、転ぶ」
「振り返るな、こっちへ来い」
「うん……っ」
バランスを崩しかけて身体を支えられた時、ショールの隙間から聡太郎の姿が見えた。すぐ近くまで来ていた。見たことがない程、怒りが滲んでいた。そして、その手前を歩いている男性のことに気づいた。
正面を向くと、久弥から芝生の方へ促されていた。その先には悠人がいて、さっきまでの泣きそうな顔が消え去っていた。仁王立ちになり、俺のことだけを見つめていた。おいでと言っているようだ。
早瀬さんが男性へ声をかけている。それを、スローモーションのような光景として眺めた。芝生の方に連れて行かれているのに、なぜか彼のことが見えた。振り返るなと言われているのに、身体が勝手に振り返ってしまう。
「行かない……っ」
「夏樹、俺だぞ。……黒崎さん、戻ってください」
3つの指輪をしている手が見えた。そして、俺が着ていたシャツが見えて、右手を握って引かれた。久弥と悠人だ。黒崎から力強く背中に手を添えられて、急に離れた。向こうへ戻ったのが分かった。
どう動いても押し戻されているし、視界まで覆われて不安がある。男性は、俺に用件があるのだろう。何を言いに来たのかを知りたい。置いて行かないで欲しい。
「なつきー、前後ろが逆だよーー」
「ああー。着替え直しだ。あれ、黒崎さん?」
「久弥さんからだ。このストールを羽織っておけ」
「暑いって……」
「……もう外で脱ぐな」
頭からストールを羽織らされた。紺と白が混ざった物で、久弥が使うのは珍しい。赤やワイン色が多いのに。半泣きの悠人が注目されないように、ストールをはためかせて遊んだ。
神仙教授はどこだろう?きょろきょろ見回した後、声をあげた。教授が一貴さんのことを押しのけている。藤沢が身じろいでいるから、また何かやっているのか。止めるのをやめておこう。
反対方向を見ていると、聡太郎が電話をかけながら歩いて来るのが見えた。そして、早瀬さんへ電話が入った。すぐ近くの位置なのに。
聡太郎の答えはどうだろう?出たのかな?胸の鼓動が跳ねて来て、どうも落ち着かない。こういう素振りを見せるとプレッシャーになりかねない。ショールを頭からかぶって誤魔化した。
「久弥、紺色と白は珍しいね?いつもは赤系だからさ。初めて見た気がするよ~」
「赤い色味は戦いの意味だった。自分を奮い立たせなくてもいいって思えたからだ。……裕理、何かあったのか?……黒崎さんが来る。こっちにいろ」
「……そいつなのか?どちらか分からない。夏樹、こっちへ来い」
「う、うん。どうしたの?」
いきなり黒崎から肩を抱かれて、教授の方へ連れて行かれた。肩へ羽織っているショールを頭から被せられて、視界が遮られた。それでも強引に歩き進んで行く。教授のシャツが動き、芝生の方へ向かったのが分かった。どうしたんだろう?その声が出て来なかった。
「あ……、転ぶ」
「振り返るな、こっちへ来い」
「うん……っ」
バランスを崩しかけて身体を支えられた時、ショールの隙間から聡太郎の姿が見えた。すぐ近くまで来ていた。見たことがない程、怒りが滲んでいた。そして、その手前を歩いている男性のことに気づいた。
正面を向くと、久弥から芝生の方へ促されていた。その先には悠人がいて、さっきまでの泣きそうな顔が消え去っていた。仁王立ちになり、俺のことだけを見つめていた。おいでと言っているようだ。
早瀬さんが男性へ声をかけている。それを、スローモーションのような光景として眺めた。芝生の方に連れて行かれているのに、なぜか彼のことが見えた。振り返るなと言われているのに、身体が勝手に振り返ってしまう。
「行かない……っ」
「夏樹、俺だぞ。……黒崎さん、戻ってください」
3つの指輪をしている手が見えた。そして、俺が着ていたシャツが見えて、右手を握って引かれた。久弥と悠人だ。黒崎から力強く背中に手を添えられて、急に離れた。向こうへ戻ったのが分かった。
どう動いても押し戻されているし、視界まで覆われて不安がある。男性は、俺に用件があるのだろう。何を言いに来たのかを知りたい。置いて行かないで欲しい。
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