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王都、煌びやかな王宮の奥深く。
そこにある「国家財政局」では、一人の年老いた会計官が、胃を抑えながら絶叫していた。
「な、ない……! ないぞ! 来月の道路補修費も、騎士団の食費も、すべてが泡のように消えている!」
彼の目の前には、不自然なほど膨れ上がった「王室生活費」の請求書が積み上がっていた。
そこへ、ふわふわとしたピンクのドレスを揺らしながら、ルルナが部屋に入ってくる。
「あらぁ、会計官さん。そんなに怖い顔をして、シワが増えちゃいますわよ? はい、これ。新しく注文した『星屑のダイヤモンド・ティアラ』の領収書ですわ。クロード様が『君の輝きにはこれくらい必要だ』って仰ってくださったの」
会計官の手が、プルプルと震える。
領収書に書かれた金額は、地方の村が一つ買えるほどの大金だった。
「ル、ルルナ様……! 先週も同じような宝石を三つも購入されたばかりではありませんか! もう宝物庫の底が見え始めているのですぞ!」
「えぇー? でも、ウリエル様がいた頃は、もっとたくさん宝石がありましたわよ? あの方がいなくなった分、私が使ってあげないと、宝石たちが可哀想じゃありませんかぁ」
「あの、お言葉ですが……! ウリエル様がいらした頃は、あの方が私有財産を運用して、王宮の赤字を埋めてくださっていたのです! 今は入る金がなく、出る金ばかりなのですよ!」
ルルナは小首を傾げ、可愛らしく唇を尖らせた。
「難しいことは分かりませぇん。お金がなくなったら、またどこかから集めればいいじゃないですかぁ。クロード様も『愛は無限だ』って仰っていますわ」
そこへ、我らが第一王子、クロードが颯爽と現れた。
「どうした、ルルナ。そんな悲しそうな顔をして。この会計官が何か無礼を働いたのか?」
「クロード様ぁ! 会計官さんが、私のティアラが高いって怒るんですぅ」
クロードは眉を吊り上げ、机を叩いた。
「何だと!? ルルナの美しさは国の宝だ! 宝に投資して何が悪い! 金など、後から増税でもすればいくらでも集まるだろう!」
「で、殿下! これ以上の増税は暴動を招きます! すでに民の間では、殿下の浪費への不満が爆発寸前なのですぞ!」
「黙れ! 真実の愛を理解できぬ無能は去れ! 我々の結婚式は、歴史上もっとも豪華でなければならないのだ!」
クロードはルルナの腰を引き寄せ、二人はうっとりと見つめ合った。
その足元には、国家の崩壊を告げる「赤字」の山が築かれていることも知らずに。
一方その頃、辺境のグロスタ領。
私は、王都のギルドから届いた「王室御用達業者の倒産ラッシュ」の報告書を読み、優雅にハーブティーを啜っていた。
「……ふふ。思ったより早かったわね。セバス、王都の高級宝石商たちが、在庫の投げ売りを始めているわよ」
「左様でございますね、お嬢様。王宮が支払いを滞納しているせいで、どこもかしこもキャッシュフローが止まっているようです」
「素晴らしいわ。今が買い時ね。カシアン様、余っている予備費で、これらの宝石を『素材』として買い叩きましょう。将来、精密機器の部品として再加工すれば、価値は十倍になりますわ」
隣で訓練の合間に休憩していたカシアン様が、苦笑しながら私を見た。
「……ウリエル。王宮が沈みかけているというのに、貴様はそれを『仕入れのチャンス』としか見ていないのだな」
「当然ですわ。あの方たちが『愛』という名の無形資産を浪費している間に、私は『実物資産』を格安で手に入れる。これこそが正しい経済の循環ですもの」
「……。ルルナとかいう女が宝物庫を空にしたおかげで、皮肉にも私の領地がさらに潤うわけか」
「はい。あの方は最高に効率的な『王都解体業者』ですわね。カシアン様、今のうちに王都から流出してくる優秀な文官や職人たちをスカウトする準備を。彼らには、我が領地の『黒字』という名の楽園で、思う存分働いてもらいましょう」
「……。貴様と一緒にいると、世界中の金がこの辺境に集まってくる気がしてくるよ」
「あら。気がするのではなく、集めてみせますわ。……カシアン様、そのために、まずはスカウト用の宿舎の建設費用を、さらに一割カットする案を考えましたの。聞いてくださる?」
「……。ああ、喜んで聞こう。軍師殿」
カシアン様は、今や私の提案を聞くのが楽しみで仕方ないといった様子で、身を乗り出した。
王都が虚飾の愛に溺れ、音を立てて崩れていく中で。
私たちの領地は、一円の無駄もなく、着実に「黄金の帝国」へと姿を変えようとしていた。
そこにある「国家財政局」では、一人の年老いた会計官が、胃を抑えながら絶叫していた。
「な、ない……! ないぞ! 来月の道路補修費も、騎士団の食費も、すべてが泡のように消えている!」
彼の目の前には、不自然なほど膨れ上がった「王室生活費」の請求書が積み上がっていた。
そこへ、ふわふわとしたピンクのドレスを揺らしながら、ルルナが部屋に入ってくる。
「あらぁ、会計官さん。そんなに怖い顔をして、シワが増えちゃいますわよ? はい、これ。新しく注文した『星屑のダイヤモンド・ティアラ』の領収書ですわ。クロード様が『君の輝きにはこれくらい必要だ』って仰ってくださったの」
会計官の手が、プルプルと震える。
領収書に書かれた金額は、地方の村が一つ買えるほどの大金だった。
「ル、ルルナ様……! 先週も同じような宝石を三つも購入されたばかりではありませんか! もう宝物庫の底が見え始めているのですぞ!」
「えぇー? でも、ウリエル様がいた頃は、もっとたくさん宝石がありましたわよ? あの方がいなくなった分、私が使ってあげないと、宝石たちが可哀想じゃありませんかぁ」
「あの、お言葉ですが……! ウリエル様がいらした頃は、あの方が私有財産を運用して、王宮の赤字を埋めてくださっていたのです! 今は入る金がなく、出る金ばかりなのですよ!」
ルルナは小首を傾げ、可愛らしく唇を尖らせた。
「難しいことは分かりませぇん。お金がなくなったら、またどこかから集めればいいじゃないですかぁ。クロード様も『愛は無限だ』って仰っていますわ」
そこへ、我らが第一王子、クロードが颯爽と現れた。
「どうした、ルルナ。そんな悲しそうな顔をして。この会計官が何か無礼を働いたのか?」
「クロード様ぁ! 会計官さんが、私のティアラが高いって怒るんですぅ」
クロードは眉を吊り上げ、机を叩いた。
「何だと!? ルルナの美しさは国の宝だ! 宝に投資して何が悪い! 金など、後から増税でもすればいくらでも集まるだろう!」
「で、殿下! これ以上の増税は暴動を招きます! すでに民の間では、殿下の浪費への不満が爆発寸前なのですぞ!」
「黙れ! 真実の愛を理解できぬ無能は去れ! 我々の結婚式は、歴史上もっとも豪華でなければならないのだ!」
クロードはルルナの腰を引き寄せ、二人はうっとりと見つめ合った。
その足元には、国家の崩壊を告げる「赤字」の山が築かれていることも知らずに。
一方その頃、辺境のグロスタ領。
私は、王都のギルドから届いた「王室御用達業者の倒産ラッシュ」の報告書を読み、優雅にハーブティーを啜っていた。
「……ふふ。思ったより早かったわね。セバス、王都の高級宝石商たちが、在庫の投げ売りを始めているわよ」
「左様でございますね、お嬢様。王宮が支払いを滞納しているせいで、どこもかしこもキャッシュフローが止まっているようです」
「素晴らしいわ。今が買い時ね。カシアン様、余っている予備費で、これらの宝石を『素材』として買い叩きましょう。将来、精密機器の部品として再加工すれば、価値は十倍になりますわ」
隣で訓練の合間に休憩していたカシアン様が、苦笑しながら私を見た。
「……ウリエル。王宮が沈みかけているというのに、貴様はそれを『仕入れのチャンス』としか見ていないのだな」
「当然ですわ。あの方たちが『愛』という名の無形資産を浪費している間に、私は『実物資産』を格安で手に入れる。これこそが正しい経済の循環ですもの」
「……。ルルナとかいう女が宝物庫を空にしたおかげで、皮肉にも私の領地がさらに潤うわけか」
「はい。あの方は最高に効率的な『王都解体業者』ですわね。カシアン様、今のうちに王都から流出してくる優秀な文官や職人たちをスカウトする準備を。彼らには、我が領地の『黒字』という名の楽園で、思う存分働いてもらいましょう」
「……。貴様と一緒にいると、世界中の金がこの辺境に集まってくる気がしてくるよ」
「あら。気がするのではなく、集めてみせますわ。……カシアン様、そのために、まずはスカウト用の宿舎の建設費用を、さらに一割カットする案を考えましたの。聞いてくださる?」
「……。ああ、喜んで聞こう。軍師殿」
カシアン様は、今や私の提案を聞くのが楽しみで仕方ないといった様子で、身を乗り出した。
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