華甲二年の再会

有嶺哲史

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第二章  華甲二年の再会(後半)

当日の朝

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 深呼吸をした。十一月のはじめ、よく晴れた朝の冷気に心技体が充実する。
主役でもないのにまるで運命の日のように心がざわざわしている。
おれ(有嶺)は今日何十年ぶりかにかつての絶世の美女弓美子を見る。
老いているはずなのに期待してしまう。
彼女にとっては全く無意味な人間のおれにまで今日、肛門から大腸奥深く内膜を見られてしまう。
しかしおれの業務だからあらゆる邪心を排して平静であるべきと思っていた。
早朝病院の検査室の隣室へ行くと、なんと前日テーブルに置いていたはずのスコープが無い。
泥棒か掃除婦の仕業か。
平静さはすぐ失われたが何とか状況を理解しようと理性を働かせた。
幸いモニターと録画機などはそのままあった。
こういう事態だから仕方がない、医療用のスコープをかっぱらってきた。
モニターに映像が映ったときはほっとした。
縮んだ命が延びた想いだった。

 病院を廻っていると美矢子が気づいてそっと声を掛けてきた。
来るとは聞いてなかったので驚いた。
また少しやせた彼女の笑顔には愛嬌が復活していた。
そのあとしばらく姿を消した美矢子がまた帰ってきたので少し早かったが一緒に検査室の隣室に潜り込んだ。

 弓美子の番は午前中最後なので準備が終わると検査室には患者と医師とナース以外だれも居なくなった。
助手を務めるのは昨日おれと出くわしたナースだった。
検査はたった一人の医師がやることもあるが普通は三人でやる。
麻酔も使わず技師も不要だったので今回は二人でやる。
おれは検査中の様子をモニターで見守るため美矢子と並んで隣室のベッドに座った。
これからは見守る以外、特にすることがない。



 弓美子の順番になって準備が整った。
その少し前にナースの入れた飲み物を貰って飲んだころから比良野はふらついたりして見ているおれは様子が変ったと思った。
しかし比良野には自覚がなくて、そのまま弓美子のコロノスコピー(CSまたはCF)は始まってしまった。
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