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第二章 華甲二年の再会(後半)
内視鏡検査
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当然比良野は普通の医者と患者の関係でなければならないと思っていた。
いつもの剛直な自分ならば完璧にできる、経験深い比良野は十分準備していた。
まさかこれからフニャフニャになるとは思っていなかった。
弓美子はなんと髪の毛を真っ黒に染めて来た。
一見恋する乙女の時期かと思われるほど若返っていた。
初診時の白髪和服の鋭い威厳も殺気も全くなかった。
弓美子は自分でも照れ臭かったように噴き出しながら挨拶をした。
「昔みたいに私きれい? それとも昔みたいにバカに見える? あの頃あなたは、私がいくらおめかししても興味無さそうだったわねえ」
「いえとんでもない。あの頃よりもはるかに素晴らしいですよ」
こんなことを言う弓美子は既に普通の患者ではなく、比良野もどこか上すべりしていた。
この異様さに比良野は気づいていなかった。
今彼の前に横たわっているのは昔会社にいて彼のすぐ横で仕事をしていた女である。
若い時初めて見て天女のような癒しに満ちた美しさに衝撃を受けた。
だが今は医者と患者だ。
あのころ紺色の制服のミニスカートとブラウンのパンストで引き締まった尻と脚を覆っていた彼女だが、今は後ろに穴の開いた検査用の紙パンツで尻を覆い目の前に横たわっている。
もちろん肌は見えていない。
ところがいつのまにか比良野には目の前に寝ているのが昔の弓美子に見えてきた。
医療に個人的感情が入ってはならないのは当然である。
ときどき気づく比良野は繰り返し心を引き締めようとした。
いつも通り始まったら忘れているはずだ。
大丈夫だと思っていた。若く美しい女性患者だろうと今まで何の問題もなく検査していた。
ところがこの若い時に痺れるほど衝撃を受け密かに恋焦がれた天女は全く違った。
魔が差したように次々と雑念が押し寄せてくる。
いかん、今日のオレは医者を忘れている。
いや、オレは天下の堅物だったはずだ。
大丈夫だ。
老女は横に寝て顔のしわがなくなり黒髪で若返り、かつての西洋人的雰囲気も甦っていた。
若きOL百合矢弓美子にしか見えなくなった。
彼女は眼を合わせてにっこり挨拶した。
すると一瞬で比良野という堅物は粉砕され、女神に仕える神官、すなわち覡になってしまった。
それから当時の事務室の情景と情緒がどっと甦り、懐かしさに溺れそうだった。
あのころは彼女の近くに行っただけで鼓動が高まり喉が渇き膝が震えた……それが再現し、自分の机の上に彼女が横たわっている幻影までちらちら見え始めた。
これはいかん、少し間をとって我に返り気を引き締めなおした。
点滴ラインから腸の動きを止める鎮痙剤を投与したあといつも患者に言う言葉なのに舌がもつれた。
「弓美子さん、肛門にゼリーの麻酔剤を塗りまふ。いいれふか?」
彼女は頷いた。
肛門にキシロカインゼリーを塗るときまたしても雑念が噴出した。
あのころ弓美子の体を想像することさえとんでもないことだった。
あろうことかそれを今、自分が指で触っているのだ。
そのあたりの皮膚は高齢になってもあまり老化しないので、ほぼあの頃と同じ。
何十年間も無意識にあこがれた皮膚はこの日を待ってくれていた、ああっ! 内視鏡医になってよかった……
そのとき
「あう~」
眼を閉じた弓美子が気持ちよく悶えているような声を出して尻を動かした。
その拍子に比良野の指が急にあったかくなった。
中に指がすっぽり入っていた。
ゼリーの麻酔が効き始めている彼女にこのことは分らない。
おっ、内側に何かある……そうか、ここから出た血が混入して便中ヒトヘモグロビン濃度に影響したのか……何で出来たのか。
それにしても柔らかい。
疣をいじることは、彼女そのものをいじるという……我に返って指を引っ込めた。
比良野は出放題の雑念に苦慮していた。
手順を間違えていないだろうな?スコープ先端部を挿入、というときいつもと違って手が震えている。
弓美子の肛門が唇に見え始めた。
助手を務める検査室ナースはこの雑念だらけの内心に気づいているだろうか。
しかしアイガード越しに見えるナースの顔はじっとよそ見していた。
深呼吸して雑念を払い、気を入れ直したつもりだった。
そして、スコープ挿入、アングルノブ回し、炭酸ガス送気、となるはずだったが、比良野の意識はそこから幻影か夢に繋がっていった。
不意に尻全体が弓美子の笑顔になり、肛門がなまめかしい唇になった。
比良野は弓美子の肛門の中に吸い込まれていった。
いつもの剛直な自分ならば完璧にできる、経験深い比良野は十分準備していた。
まさかこれからフニャフニャになるとは思っていなかった。
弓美子はなんと髪の毛を真っ黒に染めて来た。
一見恋する乙女の時期かと思われるほど若返っていた。
初診時の白髪和服の鋭い威厳も殺気も全くなかった。
弓美子は自分でも照れ臭かったように噴き出しながら挨拶をした。
「昔みたいに私きれい? それとも昔みたいにバカに見える? あの頃あなたは、私がいくらおめかししても興味無さそうだったわねえ」
「いえとんでもない。あの頃よりもはるかに素晴らしいですよ」
こんなことを言う弓美子は既に普通の患者ではなく、比良野もどこか上すべりしていた。
この異様さに比良野は気づいていなかった。
今彼の前に横たわっているのは昔会社にいて彼のすぐ横で仕事をしていた女である。
若い時初めて見て天女のような癒しに満ちた美しさに衝撃を受けた。
だが今は医者と患者だ。
あのころ紺色の制服のミニスカートとブラウンのパンストで引き締まった尻と脚を覆っていた彼女だが、今は後ろに穴の開いた検査用の紙パンツで尻を覆い目の前に横たわっている。
もちろん肌は見えていない。
ところがいつのまにか比良野には目の前に寝ているのが昔の弓美子に見えてきた。
医療に個人的感情が入ってはならないのは当然である。
ときどき気づく比良野は繰り返し心を引き締めようとした。
いつも通り始まったら忘れているはずだ。
大丈夫だと思っていた。若く美しい女性患者だろうと今まで何の問題もなく検査していた。
ところがこの若い時に痺れるほど衝撃を受け密かに恋焦がれた天女は全く違った。
魔が差したように次々と雑念が押し寄せてくる。
いかん、今日のオレは医者を忘れている。
いや、オレは天下の堅物だったはずだ。
大丈夫だ。
老女は横に寝て顔のしわがなくなり黒髪で若返り、かつての西洋人的雰囲気も甦っていた。
若きOL百合矢弓美子にしか見えなくなった。
彼女は眼を合わせてにっこり挨拶した。
すると一瞬で比良野という堅物は粉砕され、女神に仕える神官、すなわち覡になってしまった。
それから当時の事務室の情景と情緒がどっと甦り、懐かしさに溺れそうだった。
あのころは彼女の近くに行っただけで鼓動が高まり喉が渇き膝が震えた……それが再現し、自分の机の上に彼女が横たわっている幻影までちらちら見え始めた。
これはいかん、少し間をとって我に返り気を引き締めなおした。
点滴ラインから腸の動きを止める鎮痙剤を投与したあといつも患者に言う言葉なのに舌がもつれた。
「弓美子さん、肛門にゼリーの麻酔剤を塗りまふ。いいれふか?」
彼女は頷いた。
肛門にキシロカインゼリーを塗るときまたしても雑念が噴出した。
あのころ弓美子の体を想像することさえとんでもないことだった。
あろうことかそれを今、自分が指で触っているのだ。
そのあたりの皮膚は高齢になってもあまり老化しないので、ほぼあの頃と同じ。
何十年間も無意識にあこがれた皮膚はこの日を待ってくれていた、ああっ! 内視鏡医になってよかった……
そのとき
「あう~」
眼を閉じた弓美子が気持ちよく悶えているような声を出して尻を動かした。
その拍子に比良野の指が急にあったかくなった。
中に指がすっぽり入っていた。
ゼリーの麻酔が効き始めている彼女にこのことは分らない。
おっ、内側に何かある……そうか、ここから出た血が混入して便中ヒトヘモグロビン濃度に影響したのか……何で出来たのか。
それにしても柔らかい。
疣をいじることは、彼女そのものをいじるという……我に返って指を引っ込めた。
比良野は出放題の雑念に苦慮していた。
手順を間違えていないだろうな?スコープ先端部を挿入、というときいつもと違って手が震えている。
弓美子の肛門が唇に見え始めた。
助手を務める検査室ナースはこの雑念だらけの内心に気づいているだろうか。
しかしアイガード越しに見えるナースの顔はじっとよそ見していた。
深呼吸して雑念を払い、気を入れ直したつもりだった。
そして、スコープ挿入、アングルノブ回し、炭酸ガス送気、となるはずだったが、比良野の意識はそこから幻影か夢に繋がっていった。
不意に尻全体が弓美子の笑顔になり、肛門がなまめかしい唇になった。
比良野は弓美子の肛門の中に吸い込まれていった。
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