婚約破棄令嬢ですが、公爵様が溺愛してくださいます!

安奈

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1話 婚約破棄と救済 その1

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「ザイル様……ご用件はなんでございますか?」


 私はルーインズ王国の首都テレルの王宮近くにザイル・マクレガー様に呼び出された。伯爵令息であり、私の婚約者にあたるお方。私は二人の護衛と御者を引き連れやって来たのだけれど……なんだかザイル様の顔が真面目だわ。


「あの……ザイル様?」

「ファリーナ……今日はお前に言いたいことがある」

「はい、なんでございましょうか?」

 本当に真面目なお顔になっているわ。こんなザイル様を見たのはいつ以来かしら。もしかしたら初めてかも……それだけに、不安が募ってしまう。


「私との婚約はなかったことにしてもらおうか」

「えっ……?」


 今、なんて言ったのかしら……? 婚約を……えっ?


「言った通りだ。婚約破棄をしたいと言ったのだ」

「な、なぜですか……? 私に至らない点がありましたでしょうか……?」


 なぜザイル様がそのようなことを言ったのかわからなかった。でも、それよりもまずは謝ることが先決だと判断する。ザイル様のお気持ちを変えなければ……。しかし、それは無意味というものだった。

「無駄だ、ファリーナ。私の意志は変わらない」

「り、理由はなんなのですか……?」

 私は考え付く限りのことを頭の中から絞り出してみたが、それらしい理由が出て来ない。それならば、本人から聞く以外にはないと思えた。

「お前は長髪で顔……主に目の辺りを隠す癖がある。それが私には不気味でならないのだ。そんな不気味な女とは生涯を共にしたいとは思わない」

「え……? そ、それだけ……?」

 確かに私は目の辺りを前髪で隠す癖があった。それは人見知りな面があるからだけど……でも、前髪で顔を隠しているだけで婚約破棄だなんて……そんな……。

「ま、待ってください、ザイル様……! それだけの理由で婚約破棄だなんて……!」

「もう決めたことだ。私はお前と違って、他にも婚約者の伝手がたくさんあるからな。こうしてもおれんのだ、それでは失礼する」

「ざ、ザイル様……!! ひ、酷い……!」


 私は膝から崩れ落ち、王宮の隅で泣き崩れてしまった。護衛達はこの場には居ないけれど、その者たちを呼ぶ気にもなれない。まさか、こんなに早く婚約が解消されてしまうなんて……こんなことがあっていいの?


「……随分と大変な場面に出くわしてしまったようだな」

「だ、誰ですか……?」

「済まない。覗くつもりなど毛頭なかったのだが……私はハンニバルという者だ」

「えっ……?」


 ハンニバル……? ハンニバルってまさか……ハンニバル・ライジング公爵様? 私はとてつもない大貴族の登場に驚きを隠せずに涙で濡らした顔で見上げていた。そこには……紛れもない公爵様の姿がある。

 しかも、大きな手は私に差し伸べられていたのだった……。
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