婚約破棄令嬢ですが、公爵様が溺愛してくださいます!

安奈

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25話 ザイル様再び…… その2

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「一体、何の御用ですか……?」

「そう邪見にするなよ」


 ザイル・マクレガー伯爵令息様……なぜ、今頃になって私の前に現れたのか……全く意味が分からなかった。私にとっては怨みの対象でしかない人物。髪を下ろしていた外見を否定され続け、いきなりの婚約破棄……その後、ライジング公爵たちとの食事会では、私を所有物のように扱っていたし……。


「本日はライジング公爵と予定がるのです。もう、よろしいでしょうか?」

「ライジング公爵と……?」

「はい、ライジング公爵とです」


 私は、ザイル様との会話を無駄に感じながらも、最低限の礼儀はかかさないようにしていた。これでも、私の婚約者だった人なのだし……。そして、ライジング公爵とのデートについて、それとなく伝える。ザイル様は意外そうな表情をしていた。


「ライジング公爵とのデート、か……。なるほど……」


 ザイル様は元気がないのか、公爵の名前を何度か口にした後は、無口になってしまった。私を蔑むような瞳をしていないのも不気味かしら? いえ、そういうのを不気味と感じるだけで、以前のザイル様が異常だったと分かるのだけれど……。


「本日のご用件はなんでしょうか?」


 私は再び、ザイル様に質問をした。


「ああ……用件は、祝福しに来たんだ。ファリーナとライジング公爵との関係を、な」

「ザイル様……?」

 それはとても意外な言葉と言えるのかしら? まさか、以前の食事会であそこまでの醜態を晒していたザイル様から、祝福するなんて言葉が出て来るなんて……。


「どういう風の吹き回しでしょうか……?」

「信用はされていない、か……」


 ザイル様は残念そうな表情になっていた。本気で信用していないわけではないけれど、ザイル様の過去の行いから、すぐに信用できないのは事実だ。私は無意識の内に、顔をしかめていた。


「ザイル様、いままで……本当につい最近にはなりますが、ご自分が行われたことを、もう一度よく考えてください」

「それもそうだな……お前に反省していると言いに来るには、少し早かったようだ……」

「ええ、そうですね」


 自分は反省をしているって言いたいがために、屋敷を訪れたのね……。まあ、そのこと自体は悪いことではないけれど。


「ただ、ファリーナやライジング公爵……あとは、例の二人の言葉で、目を覚ましたのは事実だ。地に落ちてしまった私の信頼だが……少しでも回復できるように、精進していきたいと思っている」

「そうでしたか。頑張ってください、影ながら応援をしておりますので……」

「ああ、ありがとう、ファリーナ。せっかくのデート前に邪魔をして済まなかったな。私はもう行くよ」

「畏まりました、ザイル様。それでは……」


 ザイル様は私に軽く頭を下げて、玄関から出て行った。なにかをやり遂げた男性の雰囲気を醸し出しながら……。少しだけ見直してあげてもいいのかな? 今後の彼の態度によってはね。
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