婚約破棄されたけど、妹と幼馴染が優しすぎる件

安奈

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10話 舞踏会 その4

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「あ、これおいしい。このお肉も最高……!」


 私はテーブルに並べられている豪華な食事を手当たり次第に食べて回っていた。流石は腐っても貴族の催し物よね、おそらく平民ではなかなか食べられない物まで混ざっているわ。


「姉さん……」


 妹のラーナが私の食べっぷりに少し引いている印象だった。なによ、そんなに頭抱えて見なくてもいいじゃない。別に私は大食いってわけではないわよ? 体型の維持だってちゃんとしてるし……2キロくらいしか増えてないし……。


「まあ、私達くらいの年齢なら、それくらい食べる方がいいのかもね」

「ちょっと、ラーナ。私を大食いみたいに扱わないでよね!」

「大食いかどうかはともかくとして、この中では少なくとも食べている方ね……」


 確かに……他の貴族に注目されるほど食べているわけじゃないけれど、確かに私くらい食べている人は居ないわね。それよりも、みんな会話とか踊りに夢中みたい。

「おやおや、これは……バーク子爵の令嬢ではないですか! 久しぶりですね!」

「これはミヅロ子爵。お久しぶりでございますっ」


 私とラーナが居なくなったルークを探しながら、辺りを見渡していると、ミヅロ子爵と遭遇した。お父様と仲の良い、私達からすればおじさんみたいなお方。

「いやいや、とても元気に育ったようで。そういえば聞きましたよ? 本日はお二人の婚約者の発表をされるとか?」


 さすがミヅロ子爵だわ……貴族の情報にはとても耳が早いという噂は本当なのね。耳が早いって言葉が正しいかはともかくとして。


「ええ、そのとおりですわ。私と……姉のウェルナも新しい婚約者が出来ましたので」

「なるほど、それはとても楽しみですな。どのようなお方なのか……お二人共美人ですから、相手の方もさぞや色男なのでしょう!」


 まるで平民同士の会話をしている私とミヅロ子爵。まあ、実際にこの国では、男爵や子爵は平民感情が強いこともめずらしくはない。あんまり貴族として認められていないことが挙げられるけどね。


 セドルの態度がそれを如実に物語っていたわね、そういえば。この会場の雰囲気もどこか庶民的なのはその為かもしれないわね。


「ぜひ、幸せになってくださいね!」

「ありがとうございます、ミヅロ子爵」


 私は子爵に挨拶をしてその場を後にした。子爵級の人たちって良い人が多いのよね、伯爵級と比べて。その辺りも庶民的な雰囲気と関係しているのかもしれないわ。


「あ、姉さん……! あれ……」

「えっ?」


 そんな時、ラーナが慌てたような表情で私に話しかけた。私は彼女が見ている方向に視線を合わせる。そこには……。


「おい……! 誰の膝にスープを零してるんだ?」


 セドルの大きな声がこだましていた。彼の膝には熱いスープが零れており、メイドの一人が座り込んでいる。


「も、申し訳ありません……! セドル様……!」

「申し訳ないだと? お前は伯爵令息の俺にこんな阻喪をしておいて、それだけで済むと思ってるのか?」

「な、何卒、ご容赦を……!」


 メイドはセドルの態度にすっかり腰を抜かしているのか、上手く言葉が出て来てないみたい。セドルはそんなメイドの態度を見ながら、ニヤニヤと笑っている。なんだか、とてもいやらしい気分になっているわ……。


「許してほしいか?」

「は、はい……許していただけるのでしたら……!」

「ならば、そのテーブルに腕を付いて、尻をこちらに向けろ」

「えっ……!?」

「聞こえなかったのか? さっさとしろよ」


 なんだか、最低なお仕置きをする気ね……。男って生き物はああいうプレイが好きなの? 家系に傷を入れそうな最低な行為な気がするけれど……私はセドルが元婚約者だということを思い出して、穴に入りたい気持ちになっていた……。

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