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9話 舞踏会 その3
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「セドル……」
「やあ、ウェルナじゃないか。久しぶりかな?」
セドルは私の顔を見るなり、とても意気揚々としていた。普段の話し方よりも気さくに振舞っている感じすら受ける。
「セドル様、私のことはお気になさらないでください。余計な気遣いなどは不要です」
私は婚約破棄をされた怒りを、出来るだけ表に出さないように振舞った。子爵令嬢だから、基本的には敬語を使わないといけないんだけれど、セドル相手に使うのは腹立たしいわ……。セドルは気付いているかは不明だけれど、隣に立っている女性は気付いたみたい。
確か、伯爵令嬢のシャズナ・ドールよね……。
「この子、表向きは愛想よくしているけれど、本音の方では別のことを考えているわよ、きっと」
「本当か? いつまでも婚約破棄を引っ張るとか……流石は子爵令嬢ってところだな」
「……」
いきなり本性を見せて来たわね……もう少し、表面的なところを取り繕うつもりはないのかしら?
「本日はどうされたんですか? セドル様ほどのお方がこの舞踏会に出席だなんて……」
「はは、俺だってこんな小規模な舞踏会、本来ならパスしているんだが……」
そう言いながら、セドルは私の隣に立っているラーナにも視線を合わせた。
「確か、妹のラーナの婚約者を発表するとか聞いたんでな。面白そうだから見に来たんだ」
やっぱりそういうことか……。と、いうことは私の婚約者についても見に来たんでしょうね。
「で? お前も新しい婚約者が出来たとか情報を得たんだが? どこに居るんだ?」
「えっ?」
あれ? さっきまで居たはずのルークの姿がない……どこに行ったのかしら?
「セドル様、姉の婚約者についても、後程、発表する予定です。ですので、本日は存分にお楽しみくださいませっ」
「いいぜ、じゃあ後の楽しみにしておいてやるよ。ははは、どこの男爵か見物だな、本当に」
「うふふふふ、そうね。ここのところ、退屈な毎日だったけれど、久しぶりに楽しめそうだわ」
セドルとシャズナの二人は大笑いしながら、私達の元から離れて行った。ラーナの切り返しはナイスだったけれど、腹立たしい気持ちは変わらないわ。
「姉さん、とりあえず今は堪えましょう? ルークさんが姿を消したのも、多分そういうことよ。後でよりインパクトを与える為に……」
「なるほど……」
後ほどの婚約者発表で、驚きに満ちた演出をする。それがルークの作戦でもあるのかしら? そう考えれば、今はまだセドルと顔を合わせない方がいいわね。
とりあえずは舞踏会の場よ。私は腹立たしい気持ちを抑えながら、まずは目の前の食事に目を光らせることにした。
「やあ、ウェルナじゃないか。久しぶりかな?」
セドルは私の顔を見るなり、とても意気揚々としていた。普段の話し方よりも気さくに振舞っている感じすら受ける。
「セドル様、私のことはお気になさらないでください。余計な気遣いなどは不要です」
私は婚約破棄をされた怒りを、出来るだけ表に出さないように振舞った。子爵令嬢だから、基本的には敬語を使わないといけないんだけれど、セドル相手に使うのは腹立たしいわ……。セドルは気付いているかは不明だけれど、隣に立っている女性は気付いたみたい。
確か、伯爵令嬢のシャズナ・ドールよね……。
「この子、表向きは愛想よくしているけれど、本音の方では別のことを考えているわよ、きっと」
「本当か? いつまでも婚約破棄を引っ張るとか……流石は子爵令嬢ってところだな」
「……」
いきなり本性を見せて来たわね……もう少し、表面的なところを取り繕うつもりはないのかしら?
「本日はどうされたんですか? セドル様ほどのお方がこの舞踏会に出席だなんて……」
「はは、俺だってこんな小規模な舞踏会、本来ならパスしているんだが……」
そう言いながら、セドルは私の隣に立っているラーナにも視線を合わせた。
「確か、妹のラーナの婚約者を発表するとか聞いたんでな。面白そうだから見に来たんだ」
やっぱりそういうことか……。と、いうことは私の婚約者についても見に来たんでしょうね。
「で? お前も新しい婚約者が出来たとか情報を得たんだが? どこに居るんだ?」
「えっ?」
あれ? さっきまで居たはずのルークの姿がない……どこに行ったのかしら?
「セドル様、姉の婚約者についても、後程、発表する予定です。ですので、本日は存分にお楽しみくださいませっ」
「いいぜ、じゃあ後の楽しみにしておいてやるよ。ははは、どこの男爵か見物だな、本当に」
「うふふふふ、そうね。ここのところ、退屈な毎日だったけれど、久しぶりに楽しめそうだわ」
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「なるほど……」
後ほどの婚約者発表で、驚きに満ちた演出をする。それがルークの作戦でもあるのかしら? そう考えれば、今はまだセドルと顔を合わせない方がいいわね。
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