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8話 舞踏会 その2

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「う~~~ん、やっぱり緊張するわね……」


 それなりの丈の短さを誇るドレスに身を包んだ私は、舞踏会の会場内で緊張していた。隣には幼馴染の彼、侯爵令息のルークが居る。


「綺麗だよ、ウェルナ。自信持って大丈夫だと思うけどな」

「そ、そういうことじゃなくて……」


 綺麗と言われることは嬉しいけれど、緊張の原因はそれじゃない。まず、周囲からの視線が気になる……たかだか、子爵令嬢程度が短めのドレスを身に付けたりして、身の程を知れ……みたいなことを言われていないか、とか心配だし。


「さすがに、そんな性格の悪い貴族はめずらしいと思うわよ?」

「ちょっと、ラーナ。私の心の中読まないでよね」

「心の中……? 姉さん今、一人でしゃべってたじゃない」


 え、本当に……? 私ってもしかしたら、無意識の内に心の声を話してしまう癖があるのかも……。気を付けるようにしないと……。


「まあいいわ……。周囲の貴族の視線がこちらに向いているのは、気のせいではないわよね?」


 そう……明らかに私達は注目を集めている、それは事実だ。でも、ラーナは溜息をつきながら首を横に振っていた。

「違うわよ、姉さん。今の姉さんが綺麗なことは同意だけど、周囲が見ているのは、どっちかと言うとルークさんの方よ」

「えっ……?」


 そう言えば、確かに……。視線の多くは、微妙に私を掠めている気がする。でもなんで……?


「ルークさんは公爵令息だからよ。こんな小さな舞踏会に出ているから、驚かれているわけ」

「あ、なるほど……」

「やめてくれよ、二人共……僕なんて……」


 ルークは頭をかきながら照れているようだった。なんだか可愛らしい。そういえば、周囲の貴族たちは男爵~伯爵くらいまでの家系で埋め尽くされている。だから、余計にルークが目立つわけね。


「ちょっと待ってよ……もしも、王太子殿下とラーナが婚約発表なんてしたら……」

「そう、ものすごいインパクトってわけ」

「そういうこと……」


 小さな会場でする方が、よりインパクトを与えられるってわけね……極めつけに私とルークの婚約発表もするわけだし、そんなことになったらセドルは……。う~ん、すごいことになりそうね。


「見てよ、姉さん。噂をすれば……」

「あ、セドル……!」


 見たくない顔と出会ってしまったわ。運の悪いことに私のことに気付いているみたい。セドルは隣に女性を引き連れた状態で、意気揚々と私に近付いて来ていた……。
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