婚約破棄されたけど、妹と幼馴染が優しすぎる件

安奈

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19話 婚約発表 その5

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 ルークは普段の温和な態度からは信じられないくらいの形相で、座り込んでいるセドルとシャズナを見ていた。


「僕の個人的な怨みがこの際、排除したとしても……僕の婚約者への不敬罪の成立、王太子殿下とその婚約者への不敬な発言の成立……それから、婚約破棄そのものをしたことによる、貴族品位の失墜」

「ひ、ひぃぃぃぃぃ……! しゃ、謝罪は致します、賠償金も支払いますので、どうか穏便に済ませてください……!」


「僕が直接決めることは出来ないのでね。元老院でたっぷりと罰を聞いてから反省するといい。それから、賠償金を支払うのは当たり前だろう? お前たちの親が支払うことになるわけだが……」


「あ、あああ……!」

「セドルのせいで、こんなことに……!」

「シャズナ、この期に及んでまだ言うか……!」


 醜い争いは涙目になりながらも続いていた。いい加減、邪魔だからパーティ会場から消えてほしいわ……。周囲の男爵や子爵の皆さんは、この光景を酒の肴にしているようで、ある種楽しんでいるようだった。けっこうみんな肝が据わっているわね……案外、下の階級の貴族は虐げられることが多いから鍛えられるのかも。


「平気かい? ウェルナ」

「あのね……このタイミングでその言葉はないと思うんだけれど……ルーク……」

「ははは、ごめんよ。僕はどうも空気を読むのが下手みたいだ」

 格好良く手を差し伸べてくれるのはいいんだけれど、もうちょっとタイミングを考えて欲しかったかな。でも嬉しいので、私は彼の手を取った。


「よろしければ、一緒に踊っていただけますか?」


 な、なによ急に……こういう時は格好良いのよね……もう……。


「はい……よろこんで、ルーク様」

「様って……君に言われるとむず痒いな……」

「いいから。ほら、エスコートしてよね」

「はいはい、喜んで、お姫様」


 私とルークはお互いの心が通じ合ったことを理解したように、笑い出した。パーティ会場の中央辺りへと移動し、私達は簡単な踊りを披露することにした。他にも何組か踊っているけれど、みんな私達のことを見ているわね……まあ、あんな大捕り物の後だから仕方ないけれど。ルークはそれでなくても目立つんだし。



-------------------------------------



「可愛いな、でもあの格好で踊ると色々と不味くないか?」

「あ……姉さん、自分のスカートの丈のこと忘れてますね……ルークさんもきっと忘れてる」

「いいや、わからんで? ルークの奴はあれでも男やからな。気付かん振りしてるだけかも……」

「姉さん! あんまり激しく踊るのは禁止よっ! スカート!!」


 あっ……ラーナが大声を出して教えてくれたけれど、私は踊り出す直前まで、自分のスカートが短いことをすっかりと忘れていた。もしかして、周囲が見ていたのはそういうわけ……? でも、気付いた時には色々と遅かったり……。
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