19 / 30
19話 婚約発表 その5
しおりを挟む
ルークは普段の温和な態度からは信じられないくらいの形相で、座り込んでいるセドルとシャズナを見ていた。
「僕の個人的な怨みがこの際、排除したとしても……僕の婚約者への不敬罪の成立、王太子殿下とその婚約者への不敬な発言の成立……それから、婚約破棄そのものをしたことによる、貴族品位の失墜」
「ひ、ひぃぃぃぃぃ……! しゃ、謝罪は致します、賠償金も支払いますので、どうか穏便に済ませてください……!」
「僕が直接決めることは出来ないのでね。元老院でたっぷりと罰を聞いてから反省するといい。それから、賠償金を支払うのは当たり前だろう? お前たちの親が支払うことになるわけだが……」
「あ、あああ……!」
「セドルのせいで、こんなことに……!」
「シャズナ、この期に及んでまだ言うか……!」
醜い争いは涙目になりながらも続いていた。いい加減、邪魔だからパーティ会場から消えてほしいわ……。周囲の男爵や子爵の皆さんは、この光景を酒の肴にしているようで、ある種楽しんでいるようだった。けっこうみんな肝が据わっているわね……案外、下の階級の貴族は虐げられることが多いから鍛えられるのかも。
「平気かい? ウェルナ」
「あのね……このタイミングでその言葉はないと思うんだけれど……ルーク……」
「ははは、ごめんよ。僕はどうも空気を読むのが下手みたいだ」
格好良く手を差し伸べてくれるのはいいんだけれど、もうちょっとタイミングを考えて欲しかったかな。でも嬉しいので、私は彼の手を取った。
「よろしければ、一緒に踊っていただけますか?」
な、なによ急に……こういう時は格好良いのよね……もう……。
「はい……よろこんで、ルーク様」
「様って……君に言われるとむず痒いな……」
「いいから。ほら、エスコートしてよね」
「はいはい、喜んで、お姫様」
私とルークはお互いの心が通じ合ったことを理解したように、笑い出した。パーティ会場の中央辺りへと移動し、私達は簡単な踊りを披露することにした。他にも何組か踊っているけれど、みんな私達のことを見ているわね……まあ、あんな大捕り物の後だから仕方ないけれど。ルークはそれでなくても目立つんだし。
-------------------------------------
「可愛いな、でもあの格好で踊ると色々と不味くないか?」
「あ……姉さん、自分のスカートの丈のこと忘れてますね……ルークさんもきっと忘れてる」
「いいや、わからんで? ルークの奴はあれでも男やからな。気付かん振りしてるだけかも……」
「姉さん! あんまり激しく踊るのは禁止よっ! スカート!!」
あっ……ラーナが大声を出して教えてくれたけれど、私は踊り出す直前まで、自分のスカートが短いことをすっかりと忘れていた。もしかして、周囲が見ていたのはそういうわけ……? でも、気付いた時には色々と遅かったり……。
「僕の個人的な怨みがこの際、排除したとしても……僕の婚約者への不敬罪の成立、王太子殿下とその婚約者への不敬な発言の成立……それから、婚約破棄そのものをしたことによる、貴族品位の失墜」
「ひ、ひぃぃぃぃぃ……! しゃ、謝罪は致します、賠償金も支払いますので、どうか穏便に済ませてください……!」
「僕が直接決めることは出来ないのでね。元老院でたっぷりと罰を聞いてから反省するといい。それから、賠償金を支払うのは当たり前だろう? お前たちの親が支払うことになるわけだが……」
「あ、あああ……!」
「セドルのせいで、こんなことに……!」
「シャズナ、この期に及んでまだ言うか……!」
醜い争いは涙目になりながらも続いていた。いい加減、邪魔だからパーティ会場から消えてほしいわ……。周囲の男爵や子爵の皆さんは、この光景を酒の肴にしているようで、ある種楽しんでいるようだった。けっこうみんな肝が据わっているわね……案外、下の階級の貴族は虐げられることが多いから鍛えられるのかも。
「平気かい? ウェルナ」
「あのね……このタイミングでその言葉はないと思うんだけれど……ルーク……」
「ははは、ごめんよ。僕はどうも空気を読むのが下手みたいだ」
格好良く手を差し伸べてくれるのはいいんだけれど、もうちょっとタイミングを考えて欲しかったかな。でも嬉しいので、私は彼の手を取った。
「よろしければ、一緒に踊っていただけますか?」
な、なによ急に……こういう時は格好良いのよね……もう……。
「はい……よろこんで、ルーク様」
「様って……君に言われるとむず痒いな……」
「いいから。ほら、エスコートしてよね」
「はいはい、喜んで、お姫様」
私とルークはお互いの心が通じ合ったことを理解したように、笑い出した。パーティ会場の中央辺りへと移動し、私達は簡単な踊りを披露することにした。他にも何組か踊っているけれど、みんな私達のことを見ているわね……まあ、あんな大捕り物の後だから仕方ないけれど。ルークはそれでなくても目立つんだし。
-------------------------------------
「可愛いな、でもあの格好で踊ると色々と不味くないか?」
「あ……姉さん、自分のスカートの丈のこと忘れてますね……ルークさんもきっと忘れてる」
「いいや、わからんで? ルークの奴はあれでも男やからな。気付かん振りしてるだけかも……」
「姉さん! あんまり激しく踊るのは禁止よっ! スカート!!」
あっ……ラーナが大声を出して教えてくれたけれど、私は踊り出す直前まで、自分のスカートが短いことをすっかりと忘れていた。もしかして、周囲が見ていたのはそういうわけ……? でも、気付いた時には色々と遅かったり……。
0
あなたにおすすめの小説
お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます
菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。
嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。
「居なくていいなら、出ていこう」
この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし
そんなに妹が好きなら死んであげます。
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」に同時投稿しています。
『思い詰めて毒を飲んだら周りが動き出しました』
フィアル公爵家の長女オードリーは、父や母、弟や妹に苛め抜かれていた。
それどころか婚約者であるはずのジェイムズ第一王子や国王王妃にも邪魔者扱いにされていた。
そもそもオードリーはフィアル公爵家の娘ではない。
イルフランド王国を救った大恩人、大賢者ルーパスの娘だ。
異世界に逃げた大魔王を追って勇者と共にこの世界を去った大賢者ルーパス。
何の音沙汰もない勇者達が死んだと思った王達は……
悪役令嬢は永眠しました
詩海猫(8/29書籍発売)
ファンタジー
「お前のような女との婚約は破棄だっ、ロザリンダ・ラクシエル!だがお前のような女でも使い道はある、ジルデ公との縁談を調えてやった!感謝して公との間に沢山の子を産むがいい!」
長年の婚約者であった王太子のこの言葉に気を失った公爵令嬢・ロザリンダ。
だが、次に目覚めた時のロザリンダの魂は別人だった。
ロザリンダとして目覚めた木の葉サツキは、ロザリンダの意識がショックのあまり永遠の眠りについてしまったことを知り、「なぜロザリンダはこんなに努力してるのに周りはクズばっかりなの?まかせてロザリンダ!きっちりお返ししてあげるからね!」
*思いつきでプロットなしで書き始めましたが結末は決めています。暗い展開の話を書いているとメンタルにもろに影響して生活に支障が出ることに気付きました。定期的に強気主人公を暴れさせないと(?)書き続けるのは不可能なようなのでメンタル状態に合わせて書けるものから書いていくことにします、ご了承下さいm(_ _)m
自称聖女の従姉に誑かされた婚約者に婚約破棄追放されました、国が亡ぶ、知った事ではありません。
克全
恋愛
「アルファポリス」「カクヨム」「小説家になろう」「ノベルバ」に同時投稿しています。
『偽者を信じて本物を婚約破棄追放するような国は滅びればいいのです。』
ブートル伯爵家の令嬢セシリアは不意に婚約者のルドルフ第三王子に張り飛ばされた。華奢なセシリアが筋肉バカのルドルフの殴られたら死の可能性すらあった。全ては聖女を自称する虚栄心の強い従姉コリンヌの仕業だった。公爵令嬢の自分がまだ婚約が決まらないのに、伯爵令嬢でしかない従妹のセシリアが第三王子と婚約しているのに元々腹を立てていたのだ。そこに叔父のブートル伯爵家ウィリアムに男の子が生まれたのだ。このままでは姉妹しかいないウィルブラハム公爵家は叔父の息子が継ぐことになる。それを恐れたコリンヌは筋肉バカのルドルフを騙してセシリアだけでなくブートル伯爵家を追放させようとしたのだった。
追放された私の代わりに入った女、三日で国を滅ぼしたらしいですよ?
タマ マコト
ファンタジー
王国直属の宮廷魔導師・セレス・アルトレイン。
白銀の髪に琥珀の瞳を持つ、稀代の天才。
しかし、その才能はあまりに“美しすぎた”。
王妃リディアの嫉妬。
王太子レオンの盲信。
そして、セレスを庇うはずだった上官の沈黙。
「あなたの魔法は冷たい。心がこもっていないわ」
そう言われ、セレスは**『無能』の烙印**を押され、王国から追放される。
彼女はただ一言だけ残した。
「――この国の炎は、三日で尽きるでしょう。」
誰もそれを脅しとは受け取らなかった。
だがそれは、彼女が未来を見通す“預言魔法”の言葉だったのだ。
夫に愛想が尽きたので離婚します
しゃーりん
恋愛
次期侯爵のエステルは、3年前に結婚した夫マークとの離婚を決意した。
マークは優しいがお人好しで、度々エステルを困らせたが我慢の限界となった。
このままマークがそばに居れば侯爵家が馬鹿にされる。
夫を捨ててスッキリしたお話です。
ちゃんと忠告をしましたよ?
柚木ゆず
ファンタジー
ある日の、放課後のことでした。王立リザエンドワール学院に籍を置く私フィーナは、生徒会長を務められているジュリアルス侯爵令嬢アゼット様に呼び出されました。
「生徒会の仲間である貴方様に、婚約祝いをお渡したくてこうしておりますの」
アゼット様はそのように仰られていますが、そちらは嘘ですよね? 私は最愛の方に護っていただいているので、貴方様に悪意があると気付けるのですよ。
アゼット様。まだ間に合います。
今なら、引き返せますよ?
※現在体調の影響により、感想欄を一時的に閉じさせていただいております。
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる