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5話 元婚約者に対して その2
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屋敷に戻った私は、そのままお父様やお母様に婚約破棄の事実を話した。二人ともとても心配してくれて、ノウェム伯爵への怒りを露わにしていたけれど、賠償金などの支払いを請求することは難しいかもしれないとのこと。
「ノウェム・シリング伯爵は、伯爵家の中でも最も古い名家の一つ……私のエンデヴァー家では対抗することは難しい……」
「お父様……」
「ああ……あなた……」
私もお母様も沈んだような雰囲気になる。内心では難しいとは理解しているけれど……まさか、同じ伯爵家なのに、ここまでの差があるなんて……。悔しくて歯軋りをしてしまうわ。
そんな時、メイドの一人が私達の前に現れる。なんだか慌てている様子だった。
「ノウェム・シリング伯爵とアーリス・メルドルト伯爵令嬢が来ております……如何いたしましょうか?」
「なんですって……?」
私の中で戦慄が走った瞬間だった。
------------------------------------------------
「本日のご用件はなんでしょうか?」
「そう邪見にすることはないだろう? ミュリア……元婚約者に対して失礼だぞ?」
「……」
「なんとか言いなさいよ」
ノウェム様とアーリスの二人は悪びれる様子もなく、玄関口に入っていた。私は一人で出迎えている。お父様とお母様に迷惑を掛けたくはなかったから……。
「なんの御用ですか?」
私は相手の挑発には乗らず、再度、同じ質問をしてみた。すると、ノウェム様が話し出す。
「今度、我が屋敷でパーティーを行う予定だ。よければ、お前も出席しないか?」
「私が……ですか?」
「ああ、その通りだ」
何を考えているのかしらこの人は……。普通、婚約破棄をしたばかりの相手を、自らの屋敷で行うパーティーに出席させる? おそらく、伯爵家や侯爵家といった位の高い人々も多いだろうし……。
「あんたのお友達とか、呼んでもいいのよ? 平民の中にも居たりするんでしょう?」
「……」
ああ、そういうことか。アーリスの言葉で狙いが読めた気がするわ。おそらくこの二人は、私に恥をかかせたいんだと思う。ノウェム伯爵に振られた女……惨めにパーティーに出席している、というのが彼らの思い描くシナリオかしら?
「慕ってくれる民衆や、懇意にしている子爵や男爵、使用人もついでに呼ぶと良い。歓迎するよ」
やっぱり……完全に私を見下す意向があるわね。はっきり言って出席する気なんかないけれど……。
「畏まりました、検討させていただきますわ」
「ふふ、楽しみにしているわよ」
「出席しなければ、それはそれで面白いんだがな……はははは」
そう言いながら、二人は玄関口から出て行った。用件はそれだけだったみたいね。多分、私が出席しなかった場合のシナリオも考えているはず……お父様達には迷惑かけたくないし、これは出席するしかないみたいね……。
--------------------------------------------------
「ほう、そんなことがあったのか……」
「は、はい……そういうことがありまして……」
私は後日、イスルギ様とラクロア様に会い、ノウェム様との一件を話していた。元々、イスルギ様の調査で落ち合うことにはなっていたから、そのついでってところかしら。
「好きな民衆や、懇意にしている子爵や男爵、使用人もついでに呼ぶと良い。歓迎するよ……と来たか」
ノウェム様が言った言葉をそのまま反復し、ラクロア様は笑っていた。質実剛健な印象のイスルギ様は笑っていなかったけれど。
「笑いごとではありませんぞ、ラクロア殿……。これはあまりにミュリア嬢を見下している、決して許されることではない」
「確かに……しかし、それを逆手に取ることも出来そうだね」
「逆手に……と、言いますと?」
私はラクロア様のおっしゃったことが理解出来ずに聞き返してみる。
「簡単な話さ、僕がミュリアに呼ばれた体で出席するのさ。なかなか、面白いことになるだろう」
本当に? 私は再度確認をしようとしたけれど、ラクロア様の瞳は明らかに本気だった。
「なるほど……それは、面白そうですな。ミュリア嬢が許してくれるのであれば、ぜひ私も参加したいものだ」
「あ、いえ……ご出席していただくことに、異論はないのですが……」
「では、決定ということで良いかな?」
「は、はい……喜んで……」
びっくりするくらい順調に、イスルギ様とラクロア様の出席が決定した……。こんな身分の高い方々が出席するなんて……一体、どういうことになるのかしら? それも楽しみなんだけれど、それ以外の人たちも見繕わないとね……なかなか、忙しくなりそうだわ。
「ノウェム・シリング伯爵は、伯爵家の中でも最も古い名家の一つ……私のエンデヴァー家では対抗することは難しい……」
「お父様……」
「ああ……あなた……」
私もお母様も沈んだような雰囲気になる。内心では難しいとは理解しているけれど……まさか、同じ伯爵家なのに、ここまでの差があるなんて……。悔しくて歯軋りをしてしまうわ。
そんな時、メイドの一人が私達の前に現れる。なんだか慌てている様子だった。
「ノウェム・シリング伯爵とアーリス・メルドルト伯爵令嬢が来ております……如何いたしましょうか?」
「なんですって……?」
私の中で戦慄が走った瞬間だった。
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「本日のご用件はなんでしょうか?」
「そう邪見にすることはないだろう? ミュリア……元婚約者に対して失礼だぞ?」
「……」
「なんとか言いなさいよ」
ノウェム様とアーリスの二人は悪びれる様子もなく、玄関口に入っていた。私は一人で出迎えている。お父様とお母様に迷惑を掛けたくはなかったから……。
「なんの御用ですか?」
私は相手の挑発には乗らず、再度、同じ質問をしてみた。すると、ノウェム様が話し出す。
「今度、我が屋敷でパーティーを行う予定だ。よければ、お前も出席しないか?」
「私が……ですか?」
「ああ、その通りだ」
何を考えているのかしらこの人は……。普通、婚約破棄をしたばかりの相手を、自らの屋敷で行うパーティーに出席させる? おそらく、伯爵家や侯爵家といった位の高い人々も多いだろうし……。
「あんたのお友達とか、呼んでもいいのよ? 平民の中にも居たりするんでしょう?」
「……」
ああ、そういうことか。アーリスの言葉で狙いが読めた気がするわ。おそらくこの二人は、私に恥をかかせたいんだと思う。ノウェム伯爵に振られた女……惨めにパーティーに出席している、というのが彼らの思い描くシナリオかしら?
「慕ってくれる民衆や、懇意にしている子爵や男爵、使用人もついでに呼ぶと良い。歓迎するよ」
やっぱり……完全に私を見下す意向があるわね。はっきり言って出席する気なんかないけれど……。
「畏まりました、検討させていただきますわ」
「ふふ、楽しみにしているわよ」
「出席しなければ、それはそれで面白いんだがな……はははは」
そう言いながら、二人は玄関口から出て行った。用件はそれだけだったみたいね。多分、私が出席しなかった場合のシナリオも考えているはず……お父様達には迷惑かけたくないし、これは出席するしかないみたいね……。
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「ほう、そんなことがあったのか……」
「は、はい……そういうことがありまして……」
私は後日、イスルギ様とラクロア様に会い、ノウェム様との一件を話していた。元々、イスルギ様の調査で落ち合うことにはなっていたから、そのついでってところかしら。
「好きな民衆や、懇意にしている子爵や男爵、使用人もついでに呼ぶと良い。歓迎するよ……と来たか」
ノウェム様が言った言葉をそのまま反復し、ラクロア様は笑っていた。質実剛健な印象のイスルギ様は笑っていなかったけれど。
「笑いごとではありませんぞ、ラクロア殿……。これはあまりにミュリア嬢を見下している、決して許されることではない」
「確かに……しかし、それを逆手に取ることも出来そうだね」
「逆手に……と、言いますと?」
私はラクロア様のおっしゃったことが理解出来ずに聞き返してみる。
「簡単な話さ、僕がミュリアに呼ばれた体で出席するのさ。なかなか、面白いことになるだろう」
本当に? 私は再度確認をしようとしたけれど、ラクロア様の瞳は明らかに本気だった。
「なるほど……それは、面白そうですな。ミュリア嬢が許してくれるのであれば、ぜひ私も参加したいものだ」
「あ、いえ……ご出席していただくことに、異論はないのですが……」
「では、決定ということで良いかな?」
「は、はい……喜んで……」
びっくりするくらい順調に、イスルギ様とラクロア様の出席が決定した……。こんな身分の高い方々が出席するなんて……一体、どういうことになるのかしら? それも楽しみなんだけれど、それ以外の人たちも見繕わないとね……なかなか、忙しくなりそうだわ。
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