妹に婚約者を奪われましたが、公爵令息から求婚されました!

安奈

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38話 エトワール家のその後 その3

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「さて……まさか、こんなに早く戻って来ることになるとはな……」

「そうですね……」

「シンディ様……ディエス様……」


 私とディエス様にライラは、馬車でエトワール家を目指していた。マローネ家を訪れた翌日になるので、とても早い帰還ということになるかしら?

「ディエス様……お父様たちの態度次第では、即座に戻って来ましょう」


 エトワール家の存続を望む気持ちは事実だけれど、それでディエス様が不名誉な中傷を負う必要なんかない。私はそう考え、お父様や妹の態度によっては、エトワール家の没落も仕方がないと思うようになっていた。

 ディエス様の婿養子の件は、ものすごく寛大な処置と言えるんだし。


「ふふ、しかし、シンディ殿が心配している事態にはならないかもしれないぞ?」

「えっ……?」


 私はディエス様の言った言葉の意味が理解できなかった。そうかしら……? あれだけ啖呵を切って出て来たわけなんだし、罵詈雑言くらいの復讐が待っていても不思議ではないと思うんだけれど。

「シンディ様、おそらくはディエス様の読み通りになるかと思われます」

「ライラもそう思うの?」

「はい……なにせ、ディエス様との繋がりを保てる、絶好の機会が戻って来たのですから……」


 私はライラの言葉を聞いて、なるほど、と思えた。そう言えばそうよね……そもそも、向こうに選択権自体がない状態なんだし。



----------------------------------------



「そ、それは、本当でございますか……!?」

「ああ、エトワール伯爵。我が父、母からも承諾は得ている」

「な、なんと……!! マローネ公爵たちからのお許しまで出ているとは……!」


 エトワール家に到着した私たちを出迎えたのは、相変わらずの態度のお父様だった。もみ手のし過ぎで、指紋なくなってないか不安になるわね……。ディエス様が婿養子として、エトワール家に入る旨を説明すると、お父様は信じられないといった表情を見せながら、涙を流していた。


「ディエス様が我がエトワール家を継いでいただけるのであれば、エトワールの歴史に非常に大きな功績を残すことになりましょう!! ありがたい……本当にありがたいことでありますっ!」


 びっくりするくらいの勢いで、お父様は喜んでいる。最早、無条件で私とディエス様の結婚も承諾するでしょうね。……それだけ、エトワール家の今後について考えていたのかもしれないけれど。なら、もう少し私に対して優しくしてほしかったわ。


「では、こちらの条件も言わせていただきますと……」

「……はい?」

 ただほど怖いものはない。ディエス様はエトワール家を継ぐ条件を淡々と話し出すのだった……。次第に笑顔が消えていくお父様を見据えながら。
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