没落寸前貴族令嬢は聖女として成り上がる~侯爵様からの求婚もあり嬉し恥ずかしです~

安奈

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1話 婚約破棄とお祈り その1

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 その日、私はメディナ王国、伯爵令息のタイクーン・バリー様に呼ばれ、彼のお屋敷へとやってきました。私の名前はアンネリー・フィーゼと申します。メディナ王国の子爵令嬢であり、貴族街の隅にある古い屋敷が私の家です。

 タイクーン様は私の婚約者になります。本日はどのような用件なのでしょうか……?



「来たか、アンネリー」

「タイクーン様……?」


 私はお供のメイドを連れて、同じ貴族街にあるタイクーン様の住まいに向かっていたのですが……その入り口付近に彼は立っていました。特に護衛などは連れていないようです。


「ええと、タイクーン様、本日は如何なさいましたか? 急な用件と聞いておりましたが」

「ああ、そうだな」


 なんだか、タイクーン様の顔色が暗いように感じます。私は少し嫌な予感がしました。


「早速だが、アンネリー。私と別れてもらおうか」

「……えっ!?」


 いきなり過ぎる言葉……私はおもわず、大きな声を上げてしまいました。隣に立っている私のお供のメイド、ニーニャも同じ顔になっています。

「ど、どうしてでしょうか……!?」

「決まっている……お前の家系、フィーゼ家はもうじき没落すると言われているだろう。借金も多いと聞く」

「それは……」


 確かにそれは事実です。フィーゼ家の没落……それを避ける為に、タイクーン様のバリー家との交流を持つようにと組まれたのが私達の婚約なのですから。

「そんな死に絶えそうな家系の娘との婚約は破棄しておいた方が良いと思ってな……」

「そ、そんな……!」


 それにしても一方的過ぎるかと思います。一度は婚約をしたのですから……いくら伯爵令息様とはいえ……。

「まあ、お前が考えを改めるなら……考え直しても良いがな」

「考えを改める……?」


 タイクーン様は何をおっしゃってるのでしょうか? ニヤニヤと不気味な笑いを見せているのが気にかかります……彼は、私に黙って夜のお店にも行っていると聞いていますし……。


「お前の身体を今日にでも捧げるなら、考え直してもいいぞ? お前を自由に出来るのも楽しみだったんだ」

「タイクーン様……!? 婚前交渉はメディナ王国でも禁止されている行為なのですよ? それを……」


 信じられない言葉がタイクーン様から出て来ました……婚前交渉? それを聞くだけで、眉をひそめる貴族の方もいると聞きますのに……タイクーン様はさも当然のようにおっしゃったのです。


「お前は堅物過ぎるな……まあいい。それなら婚約破棄は成立だ。私の前から消えるがよい」

「た、タイクーン様……ど、どうか、お考え直しを……」

「なら、婚前交渉に乗るんだな?」

「そ、それは……できません……」


 目の前のタイクーン様の本性を知った瞬間でした。私の中で愛するという言葉を消えた瞬間です……そんな人に抱かれるなど、とてもできませんでした……。私とメイドのニーニャはその後、彼の屋敷の前から力なく去って行くのを余儀なくされました……婚約破棄が成立したのです。
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