没落寸前貴族令嬢は聖女として成り上がる~侯爵様からの求婚もあり嬉し恥ずかしです~

安奈

文字の大きさ
2 / 8

2話 婚約破棄とお祈り その2

しおりを挟む
「アンネリー様……お気を確かに……!」

「いえ、大丈夫ですよ、ニーニャ。ありがとう……」


「さ、左様でございますか? それならばよろしいのですが……」


 婚約破棄の現場に同行してくれたメイドのニーニャ。私のことを気遣ってくれ、何度も声を掛けてくれています。私は自分の屋敷に着くまで、出来る限り、彼女に心配をかけないでおこうと思いました。自分の問題でメイドに迷惑を掛けてしまうのは本意ではなかったからです。

 私は婚約破棄の事実に押しつぶされそうになりながらも、懸命に足を動かしました。と、その途中で、貴族街の教会が目に止まったのです。

「教会ですね」

「そうね……本日のお祈りは終了しているけれど、せっかくだからもう一度、お祈りしていこうかしら?」


「左様でございますか、それではお供いたします」


 メディナ王国では治癒の女神サーフェイス様が信仰されています。私も毎日の教会でのお祈りは欠かしたことはありませんでした。本日のお祈りは終了していましたが、婚約破棄などという不名誉なことがあったのです。もう一度、お祈りをしてもいいかもしれません。


 私は教会に向かうことにしました。



-----------------------------------------



 貴族街に存在しているレイドン教会。本日もお祈りに来ている方はいらっしゃるようです。貴族の方々はもちろんですが、この場所は一般の人々にも解放されています。レイドン教会の中央部に位置しているのは治癒の女神、サーフェイス様の像が立てられています。


 祈りを捧げると、怪我や病気が治癒すると信じられている為に、本日も祈っている人達は多いようですね。

「私も心の傷が癒えればいいのだけれど……」

「お察しいたします……」


 私は冗談混じりにそう言うと、像の前で跪いて祈りを開始しました。あら? 隣で祈っている女性は、子供を連れているようです。平民の方でしょうか……子供が怪我をしているようですね。それでは、合わせてお祈りを致しましょうか。


 ……数分程度、時間が経ったでしょうか? 私は目を開けてサーフェイス様の像を見上げます。心なしか、婚約破棄の傷は和らいだ気がいたしました。こういうのは気持ちの問題ですからね、本当に治ったわけではないでしょうが。

「さて、帰りましょうか、ニーニャ」

「はい、アンネリー様」


 私は再びニーニャを連れて、教会から出ようとしました。すると……


「ママ~~、僕の腕動くよ~~~」

「えっ? そんなはずは……まあ、信じられない……!」

「えっ……なにかしら……?」


 腕が治った……私の耳には確かにそのような言葉が聞こえて来ました。私はその子供の方向に目をやると、先ほど隣に居た親子です。子供の腕の怪我が完治していたのでした……。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

完結 辺境伯様に嫁いで半年、完全に忘れられているようです   

ヴァンドール
恋愛
実家でも忘れられた存在で 嫁いだ辺境伯様にも離れに追いやられ、それすら 忘れ去られて早、半年が過ぎました。

存在感のない聖女が姿を消した後 [完]

風龍佳乃
恋愛
聖女であるディアターナは 永く仕えた国を捨てた。 何故って? それは新たに現れた聖女が ヒロインだったから。 ディアターナは いつの日からか新聖女と比べられ 人々の心が離れていった事を悟った。 もう私の役目は終わったわ… 神託を受けたディアターナは 手紙を残して消えた。 残された国は天災に見舞われ てしまった。 しかし聖女は戻る事はなかった。 ディアターナは西帝国にて 初代聖女のコリーアンナに出会い 運命を切り開いて 自分自身の幸せをみつけるのだった。

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

ギルドの受付嬢はうごかない ~定時に帰りたいので、一歩も動かず事件を解きます~

ぱすた屋さん
ファンタジー
ギルドの受付嬢アイラは、冒険者たちから「鉄の女」と呼ばれ、畏怖されている。 絶世の美貌を持ちながら、常に無表情。そして何より、彼女は窓口から一歩も動かない。 彼女の前世は、某大手企業のコールセンター勤務。 営業成績トップを走り抜け、最後には「地獄のクレーム処理専門部署」で数多の暴言を鎮めてきた、対話術の怪物。 「次の方、どうぞ。……ご相談ですか?(クローズド・クエスチョン)」 転生した彼女に備わったのは、声の「真偽」が色で見える地味な能力。 だが、彼女の真の武器は能力ではなく、前世で培った「声のトーン操作」と「心理誘導」だった。 ある日、窓口に現れたのは「相棒が死んだ」と弔慰金をせしめようとする嘘つきな冒険者。 周囲が同情し、ギルドマスターさえ騙されかける中、アイラは座ったまま、静かにペンを走らせる。 「……五秒だけ、沈黙を差し上げます。その間に、嘘を塗り直すおつもりですか?」 戦略的沈黙、オウム返し、そして逃げ場を塞ぐイエス・セット。 現代のコールセンター術を叩きつけられた犯人は、自らその罪を吐き散らし、崩れ落ちる。 「あー、疲れた。一五分も残業しちゃった。……マスター、残業代三倍でお願いしますね」 これは、一歩も動きたくない受付嬢が、口先だけで悪を断罪し、定時退勤を目指す物語。

腹に彼の子が宿っている? そうですか、ではお幸せに。

四季
恋愛
「わたくしの腹には彼の子が宿っていますの! 貴女はさっさと消えてくださる?」 突然やって来た金髪ロングヘアの女性は私にそんなことを告げた。

さようなら、私の初恋

しょくぱん
恋愛
「さよなら、私の初恋。……もう、全部お返しします」 物心ついた時から、彼だけが世界のすべてだった。 幼馴染の騎士団長・レオンに捧げた、十数年の純粋な初恋。 彼が「無敵」でいられたのは、アリアが無自覚に与え続けた『治癒の加護』があったから。 だが婚約直前、アリアは知ってしまう。 彼にとって自分は、仲間内で競い合う「賭けの対象」でしかなかったことを。 「あんな女、落とすまでのゲームだよ」

私と子供より、夫は幼馴染とその子供のほうが大切でした。

小野 まい
恋愛
結婚記念日のディナーに夫のオスカーは現れない。 「マリアが熱を出したらしい」 駆けつけた先で、オスカーがマリアと息子カイルと楽しげに食事をする姿を妻のエリザが目撃する。 「また裏切られた……」 いつも幼馴染を優先するオスカーに、エリザの不満は限界に達していた。 「あなたは家族よりも幼馴染のほうが大事なのね」 離婚する気持ちが固まっていく。

【完結】婚約破棄、その後の話を誰も知らない

あめとおと
恋愛
奇跡によって病を癒す存在――聖女。 王国は長年、その力にすべてを委ねてきた。 だがある日、 誰の目にも明らかな「失敗」が起きる。 奇跡は、止まった。 城は動揺し、事実を隠し、 責任を聖女ひとりに押しつけようとする。 民は疑い、祈りは静かに現実へと向かっていった。 一方、かつて「悪役」として追放された令嬢は、 奇跡が失われる“その日”に備え、 治癒に頼らない世界を着々と整えていた。 聖女は象徴となり、城は主導権を失う。 奇跡に縋った者たちは、 何も奪われず、ただ立場を失った。 選ばれなかった者が、世界を救っただけの話。 ――これは、 聖女でも、英雄でもない 「悪役令嬢」が勝ち残る物語。

処理中です...