公爵様と恋仲になりました！～婚約破棄された身だけれど、なんとか幸せを勝ち取れそうです～

1話 侯爵の身勝手な言い分

「今……なんとおっしゃいましたか……？」


　私は侯爵であり、私の婚約者でもあるアルトファ・セネガリー様に質問を投げかけていた。彼から言われた言葉があまりに予想外だった為だ。場所は貴族街の一区画……木々の生い茂ったところになる。


「私はお前の妹と婚約することにした。だから、お前との婚約は破棄する」

「私の妹……シャルカとですか？」

「その通りだ、セリナ」


　私の名前はセリナ・ウィンドル。年齢は17歳でアストラル王国の伯爵令嬢という立場に立っている。妹はシャルカ・ウィンドル。年齢は15歳だけど、その妹の名前がアルトファ様から出て来たことが驚きだった。



「そうだ……あの者はお前よりも美人な上に、尻軽だという噂も絶えないだろ？　お前よりも楽しめそうだからな」


「あ、アルトファ様……」


　始まりは政略結婚ながら、彼のことを愛そうと努力を積み重ねて来た結果がこれ……？　しかも、シャルカが尻軽だなんて……そんなわけはない。彼女は明るく、人当たりが良い為に誤解されやすいけれど、身持ちも固く、とても良い子なんだから……アルトファ様からそんな言葉が出て来たのが信じられなかった。


　最早、目の前に立っている人物は婚約者などではなく、別の何か……私にはそんな感情すら芽生えていた。同時にとても悲しくなってくる……。


「まあ、細かいことはどうでもいい。お前の妹と婚約することに変わりはないのだからな」

「ま、まってくださいアルトファ様……！　私に至らない点があったのなら直します、ですから……！」

「身持ちの固さ以外ではとくに不満なんてないさ。私はただ、お前の妹が気に入っただけだ」

「そ、そんな……」


　私はその場に座り込んでしまう……妹がこんな卑劣な人と婚約することになるの？　そういった心配も出て来てしまっていた。自然と大粒の涙が頬を伝う。アルトファ様はそんな私などに目もくれず、そのまま馬車に乗って去って行ってしまわれた。

　残されたのは泣き崩れている私だけ……。


「アルトファ様があんな人だったなんて……信じられない……！」


　彼の優しい笑顔が走馬灯のように頭の中を巡ってくる……最初は猫を被っていただけなのだろうか？　おそらくはその通りなのだろう……彼の中では貴族令嬢など、自分の欲望を満たす捌け口でしかないのだ。だから、身持ちの固い私を切り捨て、尻軽だという噂の妹のシャルカに焦点を合わせた……。


「泣いているのか？　一体、どうしたんだ？」


「え……？　あ、あなた様は……！」


　そんな私のところに、一台の馬車が止まり一人の男性が姿を現した。そのお方は……ラーデュイ・ケネス公爵様。アストラル王国内でもかなり地位の高いお方が私の前に立っていたのだ。